【EC編】売上損失だけじゃない!チャージバックが起きた時に事業者に発生する負担5選
新型コロナウイルスが流行した2020年以降、EC市場は急速に拡大しました。ECサイト・ネットショップではクレジットカードが現在最も多く利用されている決済手段です。しかしながら、近年は不正利用されるケースが急増。
当記事では、主にECサイト事業者向けに「チャージバックが起きた際の事業者の負担」をご紹介します。
そもそもチャージバックとは?
クレジットカード会員を悪用・不正利用から守るために、クレジットカード会社が定めたルールです。不正利用や第三者による悪用と判断されチャージバックが確定すると、売上が取り消されます。
売上が取り消された場合、クレジットカード会社(または決済代行会社)から該当取引の入金がありません。すでに精算が終了している場合は、加盟店が該当金額を返金する必要があります。
よって加盟店は、商品を発送(サービスを提供)したにも関わらず、その代金を回収できないという状況に陥ります。
※本例は本人認証サービスを利用していない場合の事例です。
カード保有者(カードホルダー)にとっては安心できる仕組みですが、ECサイトを含む事業者にとっては、経営圧迫につながりかねないリスクを伴う仕組みになっています。
本記事では、あまり知られていないチャージバックが起きた時に事業者に発生する負担をご紹介します。
■負担1 売上損失
事業者にとって一番の負担は売上損失です。クレジットカード会社(または決済代行会社)から該当取引の入金がありません。すでに精算が終了している場合は、加盟店が該当金額を返金する必要があります。
また商品を出荷済みの場合は、商品が戻ってくる可能性は極めて低く、商品損失と売上損失。EC事業者は2重の被害を被ることになります。
クレジットカード決済で高額な商品が売れた!売上立って嬉しいなぁ・・と思っていた矢先、不正利用疑いでチャージバックが確定してしまった。商品は発送済みだし代金未回収・・高額商品だったから今月の売上に響くよ・・
■負担2 クレジットカード会社(決済代行会社)への対応
チャージバックはいきなり確定するわけではありません。確定前にリトリーバルという、クレジットカード会社(または決済代行会社)から該当決済に関する調査依頼の連絡が来ます。調査依頼があった際は、当然、該当取引の精査・見直しが必要に。配送先住所の確認、注文者へメール・電話による確認や説明など、多くの作業が人の手によって行われます。
精査・見直し後は「反証」と呼ばれる、チャージバック申請元(クレジットカード会社や決済代行会社)に対して、「異議申立」を進めることが可能です。
反証の際に必要な資料例
・クレジットカード保有者による注文である証明
・上記注文者が商品を受け取った証拠(追跡番号が記載された伝票)ほか
※追跡番号が付与されない配送方法や簡易配送の場合、反証資料と認められないケースがあります。
反証資料を集めるには多くの手間と時間がかかります。たとえ十分と思われる反証資料を提示した場合でも、チャージバック理由やカード会社の判断により反証不可・異議申し立てが認められないケースが多数報告されています。
また時間切れとなり反証に至らないケースも。クレジットカード会社(または決済代行会社)から調査依頼の連絡が来た際は、必ず期日が設けられます。「●月●日までに調査をお願いします」と依頼されますが、上記のような反証資料を十分に集めきれなかったり、注文者に連絡が取れなかったりと、期日を過ぎてしまい、チャージバック受け入れとなるケースも多く存在します。
そしてEC事業者にとって、チャージバックに関する負担はまだ続きます。上記のように、手を尽くしてもチャージバックが確定してしまった場合は、クレジットカード会社(決済代行会社)に返金手続きが必要です。(精算が完了していない場合は売上取り消し手続き)こちらも人の手によって行われる、イレギュラーな事務手続きとなります。
■負担3 オペレーションや仕組みの見直し
チャージバック被害に遭うと、多くのECサイト事業者ではオペレーションの見直しが行われます。
オペレーション変更例
・初回注文者は必ず目視確認をしよう
・発送前に属性確認をしよう
・3万円以上の注文はダブルチェックしよう
一般的には目視確認作業が増えていくことが多く、続けてセキュリティシステム・不正対策ツールの導入が検討されます。各サービスの比較や見積もり、システム的な接続可否など、こちらもまた人の手によって行われるイレギュラーな業務が発生します。
また上記の検討を重ねた結果、ECサイトの構造上の兼ね合いで不正対策ツールの導入が難しい場合、ECサイトのリニューアル、プラットフォームの切り替えが必要になるケースもあります。すでにあるECサイト情報を引き継ぐ場合は、リニューアルに500万円以上を要すケースもあり、サイト切り替え時時期や金銭面の調整など、各所でさらなるイレギュラー業務に発展することも珍しくありません。
■負担4 業務の属人化・担当者の退職のリスク
夢のアパレル本社勤務だったのに属性確認や不正対応ばかり・・・思っていた仕事と違う・・・
ECサイトの運営業務は多岐にわたります。中でも負担3でご紹介した目視確認による不正チェックは、属人化しやすい傾向にあります。職人芸のように複数台のモニターを用いてチェックするツワモノや、長年の嗅覚によって怪しい取引を見極めているケースがあります。このような場合、担当者の不在時に不正注文によるチャージバックが発生する確率が高まってしまいます。
また目視確認による不正チェックや、負担2のようなチャージバックに関する事務的な手続きが続く場合。「思っていた働き方と違う」「後ろ向きな業務ばかり」といった不満につながるケースも珍しくなく、退職リスクを高める要因のひとつとして考えられます。
さらに管理者やマネージャーポジションになると、チャージバックによる売上損失の報告や、オペレーション見直し等によるECサイトのリニューアルに関する事業資金の準備など、過度なプレッシャーから担当者の心理的負荷は非常に大きくなります。これにより中堅的な存在である人材も、退職してしまうことも多く、引き継ぎや新たな人員確保・求人費用など、さらなる時間的コスト・人件費がかさむケースも珍しくありません。
■負担5 人件費がかかる
負担1~4で述べたように、チャージバックに関する様々なイレギュラー業務を人の手で行う場合、人件費がかさみます。また上記で述べたように、退職に伴い新たな人材を探すとなると、求人コストも追加で発生します。せっかく確保した貴重な人材。新商品の開発や効果的な宣伝など、売上拡大につながる業務についてほしいと願うはずです。
クレジットカード不正利用による、チャージバックを防ぐ方法とは
3Dセキュア2.0 による本人認証サービスの導入が効果的です。
万が一チャージバックが確定してクレジットカード会社が売上を取り消した場合、クレジットカード保有者の本人確認を行っていれば、クレジットカード会社が取り消された売上を負担してくれます。
(※上記は原則となり、売上負担は状況によって異なる場合があります。)
つまり本人確認を行えば、加盟店(事業者)は売上負担をしなくて良いのです。カード会社が負担してくれます。ECサイトでの本人確認は、3Dセキュアが(本人認証サービス)があたります。
従来は運営上の様々な事情から3Dセキュアを導入していないECサイトが多く、結果としてECサイト側が売上を負担していました。しかし、2021年日本でも「3Dセキュア ver2」が発表され、AppleやBooking.com(ブッキングドットコム)といった大手ECサイトで導入が始まりました。チャージバック被害件数が減った、という弊社クライアント様からの報告も受けており、対策として一定の効果が得られると実感しています。※2021年6月現在。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は珍しい「チャージバックが起きた際の売上損失以外の事業者の負担」をご紹介しました。ECサイトは、24時間365日狙われます。不正者はあえてEC担当者が不在になる時間帯を狙うことが多いです。よって、事業者は人的対策だけではなく、システム的な不正対策が必要になります。
不正を未然に防ぐために毎月コストをかけるのはちょっと・・
と不正対策導入には悩まれるかと思います。しかし、上記で紹介したように、不正利用・チャージバックは発生後の事業者側の負担が非常に大きいです。未然に防ぐことで、売上を守り安全な会社経営を後押しします。
イーディフェンダーズでは、決済前にチャージバックを未然に防ぐ「AI不正検知」や「3Dセキュア ver2」の提供を行っています。
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