「トランスジェンダー」と「GID」


※私のTwitterを見ていない人へ※
 このnoteは、「GID中核群」の概念とアイデンティティを次世代の当事者へ伝えたい、が目的のわたし「えだまめ」が日々Twitterに書いていることをある程度まとまった文章で伝えるためのものです。本体はTwitterですので、noteから入った方も、ぜひTwitter(https://x.com/edamameRK)をご覧ください。

※補足注意書き※
このnoteは、「GID中核群」の当事者に向けて書いています。それ以外の人の理解や賛同や共感は求めておらず、このnoteの内容に反対意見を持つ人のことを説得する目的もありません。予めご承知おきの上、お読みください。


はじめに

 さて、記念すべき1本目の記事でございます。
もともと、最初の記事は「中核群2.0宣言-新時代のGID-」にするつもりだったんだけど、アンケートの結果「GIDとトランスジェンダー」がトップだったので順番を入れ替えました。
それだけ、その両者の違いがわからず混乱している人がいて需要があるということだと思われるので、まずはそこからいこう。

 この記事では、意図的、あるいは無意識に混同されがちな「GID」と「トランスジェンダー」の違いを明確に定義する。よりはっきりいうと、「トランスジェンダー」に巻き込まれがちな「GID」を明確に定義するのが目的である。
が、言うまでもなく、これは別にどちらがより優れているとか、そういう話ではない
 単に、根本的に異質なものをごっちゃにして議論しても、誰にとっても生産的ではなく不幸を生むだけだから、違いを明確にする、それだけである。
この記事の内容をもって、「GID」と「トランスジェンダー」のどちらかを貶めようなどということは絶対にやめてほしい。それを前提に読んでくださいね。

 また、「中核群GID(以下、単に「GID」とする)」と「トランスジェンダー」の違いを語るにあたって、まず知っておいてもらわないと困るのは、ここで言う「GID」とは「性同一性障害(GID)の診断を受けた人」のことではない、ということです。
性同一性障害(GID)の診断基準は操作的診断基準というもので、要するに一定の症状を満たせば機械的に性同一性障害(GID)だと診断されるというもの。
それに対して、ここで言う「GID」は、当事者のアイデンティティとしての概念であって、性同一性障害(GID)の診断を受けていても、ここで言う「GID」に当てはまらない人というのはいます。それを念頭に、読み進めてくださいね。

1章 まず「トランスジェンダー」とは?

 本来ならまず「GID」とは何か説明すべきなんだけど、これは非常に難しい。
なので、ここでは逆に「トランスジェンダー」とは何なのかを確認することによって、「『トランスジェンダー』ではない人」としての「GID」のありようを明らかにしていきたい。
 さて、一般的に「トランスジェンダー」とは、「出生時に割り当てられた性別と、現在自身で認識している性別(ジェンダーアイデンティティ)が異なる人」と定義される。実は、この定義を文字通りに解釈するなら「GID」もここに含まれる。
しかし、そもそもこの定義はあまりにもざっくりしていて、ちょっと正確ではないので、正確に定義するならもう少し補足が必要である。
正確に定義するなら、「トランスジェンダー」とは「出生時に割り当てられた性別に一致した性自認を一度は形成したが、異なる性自認への移行(トランス)が生じた人」のことである。どういうことか?
典型的な「トランスジェンダー女性(以下トランス女性)」の発達プロセスは下記の通り。

「トランス女性」の発達過程

  1. 生まれる

  2. ちんちんの有無で性別を割り当てられる
    (ここではちんちんがあったとする)

  3. ちんちんがあったので「男性」として扱われる

  4. 成長に伴い自我が芽生え、性自認が生まれる(3歳くらい)
    (ここでは、としての性自認が形成される)

  5. 人生でいろいろある

  6. あるとき「自分は男ではない」ことに気づいて、
    としての性自認」が形成され、「女性」へと「移行(トランス)」する

  7. としての性自認があるが、周囲は男性として扱うため
    様々なトラブル・問題が生じる(程度は様々)

  8. なんやかんや生きていく(生きていけない場合もある)

 ここで重要なのは、4.の時点で一度は男性としての性自認が「正常に」形成されているということ。ここが「GID」と「トランスジェンダー」を分ける、根本的な違いなのだ。何が違うのか?は、次の章で。

2章 じゃあ「GID」はどうなのよ?

 先ほど「トランスジェンダー」の一般的な定義として「出生時に割り当てられた性別と、現在自身で認識している性別(ジェンダーアイデンティティ)が異なる人」と書いたが、これ自体はGIDにも当てはまる。じゃあ何が違うのか?
 ポイントは、この定義では現在の性自認しか見ていないこと。つまり、「GID」と「トランスジェンダー」の際はその現在に至るまでの過程にある。
ここで、典型的な「MtF GID当事者」の発達プロセスを説明する。

「GID」当事者の発達過程

  1. 生まれる

  2. ちんちんの有無で性別を割り当てられる
    (ここではちんちんがあったとする)

  3. ちんちんがあったので「男性」として扱われる

  4. 成長に伴い自我が芽生え、性自認が生まれる(3歳くらい)
    (ここで、としての性自認が形成される)

  5. としての性自認があるが、周囲は男性として扱うため
    様々なトラブル・問題が生じる(程度は様々)

  6. 遅くても思春期あたりで、自分が男性として扱われ、
    また自分の身体が明らかに異質なものへ変化していくことへ
    違和が爆発する

  7. 人生でいろいろある

  8. なんやかんや生きていく(生きていけない場合もある)

 全体としてはよく似ているし、「出生時に男を割り当てられた」ことと「現在女としての性自認がある」というのも同じだ。だがその過程、プロセスは全く違う。
 パット見て分かる通り、最大の違いは「女としての性自認」の形成のタイミングにある。「GID」は、自我と性自認が芽生えた当初から、性自認はである。脳は女、といっても良い。
端的に言うと、「GID」には「としての性自認」を獲得した時期がない
これが「トランスジェンダー」と「GID」の決定的な違いである。

 また、注目すべきは「トランス女性」の7.と「GID」の4.では、同じ状況が生じているということ。つまり、
 >としての性自認があるが、周囲は男性として扱うため
 >様々なトラブル・問題が生じる(程度は様々)
という状況は、「トランス女性」が「移行」を開始したあとに生じる諸問題としてよく知られていることだが、これと同じ状況は「GID」においては、幼少期〜思春期にすでに発生している。(ただし、子どもがちょっと社会規範からはずれた行動をとっていても、それは単に「子どもだから」という理由で理解されるので、周囲の大人の記憶には残らない)
 これはつまりどういうことか?は第4章で説明するが、その前に、そもそも自我と性自認はどう形成されるのかの説明が必要なので、次の章へ。

3章 性自認の形成とは?

 第2章を読んで「なんでGIDの場合は男なのに突然の性自認が形成されんの?」と疑問を感じた人がいるでしょう。なので、先に進む前に、自我と性自認の形成過程について説明しておこうと思う。
 そのために、人間は生まれてからどのように成長し、自我を獲得するのか、流れを見てみよう。ちょっと長いが、これを理解しないと先へ進めないので、頑張って読んでください。

人はどのように自我を形成するか

 生まれたばかりの赤ん坊には、自我がない。自我がないということは「自分」と「他人」の区別がない世界を生きているということだ。
 赤ん坊にも、欲求はある。意思も、もしかしたらあるかもしれない。
例えば、お腹が空いたのでミルクが飲みたいという欲求なり意思がある。
そこで赤ん坊は「泣く」と、どこからかミルクが現れお腹がいっぱいになる。
このとき、「泣く」は自分の行動で、「ミルクが現れた」というのは自分の行動によって世界に起こった変化だ。行動によって、欲求を満たすことができた。
 このように、自分の行動によって「世界の変化」が起こせるということは赤ん坊にもわかる。ただし、それを「誰が」起こしたのか、という概念はない。

 だが、成長に伴って自分の手足が自由に動かせるようになってくると、赤ん坊にも「どうやらこの世界には思い通りに動くものと、そうではないものがあるっぽい」ということがわかってくる。つまり「自分」と「他人」である。
 例えば、ボールを掴んで投げると、ボールが飛ぶという「世界の変化」が起きる。自分には変化を起こす能力があるということがわかる。
 しかし、掴んで投げることができるのは、「自分」の前にあるボールだけだ。いつもミルクを持ってくる見慣れた腕の前にあるボールを掴もうとしても、その腕は動かない。なぜだ?どうも腕には「思い通りに動く腕」と「思い通りに動かない腕」があるっぽい。
 こうして人は世界には「自分」と「他人」が存在することを理解する。

言語の獲得と属性の理解

 さて、このようにして、人は「自分」と「他人」からなる世界を認識するが、さらに成長して言語を獲得すると、どうも人間というのは「自分」「他人」意外にももっと様々に分類されるということがわかってくる。つまり「属性」の理解だ。
 人はおよそ3歳くらいまでに「属性」が理解できるようになる。そこから、人は成長の過程で様々な「属性」を理解していくが、「男の子」「女の子」もそういった「属性」のひとつであることは、言うまでもない。

 そもそも、人はどうやって「属性」を理解していくのだろうかか?
 例えば「子ども」と「大人」を考えてみよう。「子ども」はみんな自分と同じくらいの大きさで、「大人」はすごく大きい。だから、自分は「子ども」に分類される中のひとりで、「大人」とは違うものなんだとわかる。
 そう、「属性」とは、人を「自分と同じもの」と「そうではないもの」に分けることで理解される。これは、すべての属性について言えることだ。

「性自認」の形成過程

 「性自認」とは、要するに「男の子」「女の子」という「属性」のうち、「自分と同じもの」「そうではないもの」はどれなのか、についての理解のことである。
では、それはどのように理解されるのだろうか?
 ここで話しているのはせいぜい3歳とか4歳の人間の話なので、TwitterことXで繰り広げられる性別の定義論争のような、難しい概念は理解できるはずがない。だが、それでも「男の子」「女の子」のどちらが「自分と同じではないもの」なのかは、「なんとなく」しかし「はっきりと」わかるものである。
そして、「自分と同じではないもの」がわかれば、それと逆の属性がおのずと「自分とおなじもの」となるのだ。
「『男の子』と呼ばれるやつらと、私は、明らかに違うものだ」
「私は『男の子』じゃない。だから、『女の子』なんだ。なんか周りの大人も、私のこと女の子って言ってるし、そうなんだな。」
これが、多くの人が経験する「性自認」の形成である。
これはもう、大体の人が自然とこうなる。人間には「性自認」を形成する能力が先天的に備わっているからだ。
※なぜそのような能力があるのかは、文字数が多くなるのでそのうち別で書く。

 ここで重要な点として、この「性自認」の形成にあたって、「周りの大人が言ってる」は、形成された「性自認」を補強するものではあっても、形成の原因とはなりえない。
というのは、周りの大人が自分のことを「男の子」と言ってきたとしても、「わたしは『男の子』と呼ばれるやつらと、同じじゃない」と感じることは、先天的な能力によって、周りの大人の言ってることと関係なく、そうなるものだからだ。
 ここでこのようなズレが発生すると、その人の「性自認」の形成は暗礁に乗り上げた状態となる。
「性自認」は自分の中では形成されているが、それを周りの大人、つまり「社会」は承認しない。かといって、「社会」が言うように「男の子」が「自分と同じもの」であるとは、全くもって感じられない。
これが「GID」ですよ。

 ところで、だよ。「形成された性自認と、社会から割り当てられた性別がズレてる状態」って、どっかで聞いたよね?
そう、それって「トランスジェンダー」なんですよ。ということで次の章へ。 


4章 結論:「GID」とは「生まれつきトランスジェンダー」だ

 いきなり意味不明なタイトル、と思った人もいるかもしれないが、第2章・第3章で書いたように、「トランスジェンダー」の「移行」に伴って生じる状況と、「GID」の幼少期に生じる状況というのは、実はほぼ同じである。
 つまり、「GID」に生まれるということは、物心ついた瞬間、性自認を得た瞬間から性別が移行済みの状態でスタートするということなのである。
私はなのに、私の身体はなぜかバンバン男性ホルモンがでるようになっており、周囲も私を異性として扱ってくれる(ありがた迷惑!)という、フルスペック移行済みで人生をスタートするのが「GID」ということなのである。(マジで災難!)
 これは、当事者でも結構気づいていない人が多い本質情報である。
GID中核群ってじつは、生まれたときから何故か「トランスジェンダー」だったんですよ。

 さて、性別の「移行」という言葉は、「トランスジェンダー」を表現する言葉ではあるが、慣習的に「GID」にも一般的に用いられる。
「GID」当事者が「出生時に(間違って)割り当てられた性別」から、本来の性別へと生活を変えていくことを「移行」と表現するのは一般的な用法である。
 だがしかし、「GID」当事者に実際に起きていることを正しく表現するならば、これを「移行」というのはかなり語弊がある。
そもそも生まれた時点で「移行済み」なのが「GID」なのだから、「GID」にとって本来の性別に生活を変えていくことは「移行からの復帰」つまり「トランス」である。
 「トランス」は何歳から初めたって構わないが、「トランス」は「トランス」期間が長いほど困難になる。だから「GID」にとってはできるだけ早期の治療開始が大事なのである。
「トランスジェンダー」の当事者に対してあまりに早期の「トランス」を開始することは、トランスの困難さの面からよく批判されている。
だが、「GID」の場合は、生まれた瞬間から「トランス」が開始されてしまっているので、トランスをいかに早く始めるかが非常に重要になる。
これが、多くの「GID」当事者が「早期治療」の必要性を声高に叫ばざるを得ない、切実な事情なんですよ。
 我々は、「トランス」なんて望んでないのに、生まれた瞬間から強制的に「トランス」が開始しているんですよ、マジで災難、一刻も早くなんとかしてほしい。
そう思うのは当然でしょ?

あとがき

 あとがきは、特にないです。これを読めばわかる!!くらいの気合で書いた。
ご意見、ご感想、ご質問はTwitterでも、ここのコメント欄でもご自由に。
匿名じゃないとヤな人は、マシュマロもあるよ!


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