萌え絵をめぐり争う脳内思念体
「萌え絵が、女性そのものではなく脳内女性的思念体であり、見られる主体として理想化された、女性とはまったく違う存在なのだから、女性が自分自身の身体と同一視するのは筋違いである」
「いやいやその脳内女性的思念体とやらのモデルは一体なんだ? 女性自身だろう? 理想化だ? それは女性にこうあれという男性の欲望を肯定するものだ」
「こうあれなど言ってはいない。あくまで脳内女性的思念体として愛でている。そもそも萌え絵を需要するのは、男だけではない。女もいる。求めない男もいる。それを男の欲望とするのは問題を矮小化している」
「需要する女もいる? いやいやだからそれが何だというのだ。脳内女性的思念体の男に媚びるような描かれ方や、現在の性規範を強化するような描かれ方が問題だと言っているのだ。男性優位社会の帰結としてこの萌え絵がある」
「脳内思念体たちがなんか言ってやらぁ……」
「誰だこの女」
「クソリプだ無視しろ」
「おまえたちは、ある人物の脳内思念体に過ぎないという事実に気づいていない情報弱者のようだ」
「……南斗水鳥拳(なんとすいちょうけん)※」
「きさま女性に暴力か…」
「いや違う『なんと』との後で、ちょっとお口が寂しかっただけだ。暴力など振るっていない。にも関わらず、わたしを加害者扱いした。加害をするのは男であるという思い込みに囚われているという証左」
「そうやって思い込みに囚われやすいのは女性の特徴と言いたげな口ぶりだな」
「そうだぞ、そういうとこだぞ、作者。まったく脳内思念体の言う通りだ。この男性差別主義者かつ女性差別主義者め」
……南斗水鳥拳。
※南斗水鳥拳(なんとすいちょうけん)
漫画『北斗の拳』に登場する架空の拳法である。
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