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モーニングと全肯定マダムのこと

そういえば
このnoteは
わたしが出会った周りの面白いひとたちを書き残しておく場だと始めたのに


ただのブログみたいになっていました。
ひゃ。

きっとこんな感じでこれからも適当な散らかしたことを書いてゆくと思いますけど

今日は初心を取り戻しまして。

コロナ禍に
しばらくとある勉強をしていたことがあって
毎週、レッスンのある日は朝1時間ほど早く来て近くのパン屋さんでモーニングしながら待機していました。
モーニングっていうと優雅な感じがしますけどね、とにかく毎回ど緊張する現場でしたので
心を整えるために。

その日も早く来て、朝ごはんを食べていました。

グレイヘアに赤いマフラーした小さなマダムが店内に入ってきて、わたしの方にまっすぐ歩いてきました。

わたしが座っていたのは店内のいちばん奥の席で、その奥にトイレがあるのでこちらに歩いてくるということはトイレに行く動線しかありません。
ところがマダムはトイレではなくわたしの前で止まりました。

大体見ず知らずのマダムがわたしに声をかけてくるとき、少し離れたところでじいっと眺めてから、すすす、と近寄って小さなお声で「ねえねえちょっといいかしら。。。」
というような雰囲気で始まることが多いのだけれど

このマダムは店の自動ドアが開いて入ってくるなりまっすぐわたしの方へ向かってきたのです。
朝の静かな店内で風切って歩いてくる人って目立ちますでしょう。
だからなんとなく目が行ったんですねマダムに。
行き先をしっかり定めて歩いてくるからそりゃあトイレに行くんだろうなあと思ったんです。
そしたらわたしのテーブルの前でぴたっと止まるんですもの。

「ひとつ聞いてもいい?」
「え、あ、はい、何でしょう?」
「身長どれくらいあるの?」
「ああ、175センチです」
「そう!何のお仕事されてるの?」
「えと、俳優をしています」
「やっぱり!あなた大丈夫よ。わたし当たるの。」
「あ、なんだかうれしいですありがとうございます」
「わたしだいぶ歳いってからNYに行ったの。デザインの仕事してたの。好きなことするのって大事よ、あなたそういう好きなこととかやりたいこと、ちゃんとノートに書いてる?」
「(たまたま当時、ノートに書くということを始めていたのでびっくりする)
あ、はい、書いてます」
「うんうん、続けなさいね、大事よ」
「わかりました、ありがとうございます」
「大丈夫よ!あなた血液型なに?」
「A型です」
「やっぱり。大丈夫よ」
「ありがとうございます」
「何月生まれ?」
「8月です」
「でしょう!大丈夫よ。結婚してるの?」
「いえ、独身です」
「いいのよ、周りに何の目で見られたって自分のやりたいことをやるのよ、続けるのよ」
「なんだか勇気が出ましたありがとうございます」

何がやっぱりで何が大丈夫なのかはマダムのみぞ知るなんですけれど

マダムの渡米前と渡米中の話を聞かせてもらって
突然やってきたマダムはとにかく初対面のわたしを質問攻めにして全てを全肯定してくれたあと、
両手でしっかりと握手して
うんうん、と言いながら去って行きました。
結局トイレには行かなかったなあ。


わたしはたまに見ず知らずの年上のマダムに突然声をかけられることが珍しくないので
今日もいつものかな、と思っていましたが
ここまでぐいぐい前のめりな方は珍しいのでなんだかびっくりしましたけど
その日は特に緊張する課題のある日で
いつもに増してざわざわ落ち着かない時間だったのだけれど
もはやマダムはそれすらも見越してわたしに声かけてくれたんじゃないかと思うようなタイミングで
おかげで、わたしのやってることは大丈夫、って力強く思えたのでありがとうマダムという気持ち。

なんだか良い朝だなあと思いました。
ありがとうございました。


そのあとも
何かざわざわしたり
揺らぎそうなこととかがあっても
このときのマダムに言われたことを思い出して
「わたしは大丈夫。」
って思うようにしています。



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