中年モデルがコレクションのオーディションに行く話。
「多様性」や「inclusive」のおかげか、最近のコレクションにはさまざまな体型の人たち、プラスサイズはもちろん、シニアとか年齢層高めの方々も出るようになりました。
そのおかげでわたし中年モデルは今季の東コレオーディションをやたらと受けています。これまでなら有り得ないことです。
本日は200人待ちの列でした。モデルが街なかに200人並んでる様はなかなかに圧巻です。いや、正直言うと並んではいません。道の両脇に並んだり座ったり立ったりしています。
オーディション会場に入りきれず外まで溢れかえっているのです。
そんな列に並んでる俺。かつて行きたくても行けなかった列に中年になって並んでる俺。軽井沢の撮影を終えて新幹線からそのままオーディションに直行した俺。
もともと撮影スケジュール的に間に合わないだろうということでオーディションの準備を全くしておらず、移動と待機のことだけを考えたゆるゆるのデニムに長袖シャツというおおよそショーのオーディションには相応しくない格好(ショーのオーディションはなるべく身体のシルエットが想像できるタイトめな服で来るように指定があるか、大概みなさん露出多めで行きます)でしたので、東京駅構内のユニクロでアメリカンスリーブのタンクトップを購入しました。こういうときにこうやってちゃんとタンクトップとか買っちゃう自分を我ながらかわいいなあと思います。
オーディション待機のコツは、我を強く遠慮せず割込は許さず大人しく待たずに静かに待つことです。
なんとなく行列ができているところの最後尾にとりあえずうっかり並んでしまうことは危険です。
まずは会場の先頭を覗いてみます。そこで受付をしている可能性が多いからです。
受付スタッフさんがいるときはラッキーですが、誰もいないときもあります。そんなときは先に並んでるモデルさんに「エントリーしました?」などとお聞きしてみたりして今回の様子を予想します。
今回の場合は受付でエントリーを済ませるスタイルでした。
名前を書いたり、コンポジを渡したりします。
コンポジと言うのはモデルの持っているオーディション用のプロフィール。名前と事務所名、サイズと写真だけが載っています。
ちなみにわたしはコンポジも持参しておりませんで身一つで行ったため、リストに名前を記入しただけです。コンポジもないのに受けさせてくれてありがとうございます。
さらにちなみに、会場に着く前に大人数の外国人モデルさんの集団と遭遇することがあります。
そんなときには少し歩幅を早めて彼らを追い抜くのが良いでしょう。
なぜなら彼らは来日中事務所ごとの集団で大量のオーディション行脚をされますから、彼らの後になるとそのぶん待ち時間が長くなってしまうのです。彼らは日本語が話せないことも多いので必ず通訳兼マネージャーさんがひとり付き添いをしています。彼らは格好も存在感もとてもラフで、身軽で素敵です。らっくりいれるってとても魅力的だなあと思います。
待っている間は本読んだりぼーっとしたり知り合いがいればハロー元気とあいさつしたり喋ったり喋らなかったりしながら待ちます。暑い中到着して汗もひかないまますぐ順番が来ることもありますし2時間待つこともあります。
周りのモデルさんたちを眺めながらおしゃれだなあ、スタイルが良いなあ、今のモデルさんはこんな感じなんだなあなどと観察するのが好きです。
そんなかんじで待っているといざ自分の順番が来ました。
名前を呼ばれます。
目の前にはデザイナーさんやショーのディレクターさん、スタイリストさんなどが横並びで座っていらっしゃいます。
そこで
「2WALKで」あるいは「1WALK」などとご指示があります。
2WALKは文字通り2往復、1 WALKは1往復、みなさんの前を歩くという意味です。歩く距離は会場やブランドさんによっていろいろです。本番さながらの長い空間のときもあれば、片道5歩くらいしかないときもあります。
歩き終わって「ありがとう」
と言われたらもうそこで終わり。不合格です。
「じゃあ着替えてもらおうかな」
と言われると一次合格。
ブランドのお洋服を着て再度ウォーキングしてみます。
「次はこれに着替えてみて」
お
良い手応え。
二次通過といったところでしょうか。
着替えた状態で写真を撮ります。
これでオーディションは終わり。
ウォーキングのあとに着替えがあると合格の可能性が残ります。
歩くだけで終わった場合(もしくは歩く前に帰らされる場合もありますが)、
これは不合格。
そう、ショーのオーディションは合否がとってもわかりやすいのです。
1時間待っても2時間待っても、最短15秒で終わります。
儚い。
儚いですよねえ。
良いですよねえ儚くて。
どれだけ集中するか
どれだけリラックスするか
どれだけ無でいくか
広告やCMのオーディションのように結果がわかるまで何日もうずうず待つことがありません。
終わった瞬間に さ、次次!
と切り替えることができます。
ショーのオーディションは合否がとてもわかりやすくて好きです。
もちろん決まらないと意味ないですし、合格するために行くのですけれど
憧れの世界のリアルにこうして今まさに自分が混じっていることがとにかくうれしいんですねえ。はあ幸せはあまた頑張れるなあと感謝するのです。
中年にもランウェイのチャンスをくれる世の中ありがとうそれから空気を読まずあるいは空気をあえて読んでるのか
キャスティングさんにばしばしわたしの資料を送り続けてくれる事務所の社長とマネージャーさん
いつもありがとうございます。
次はどんなショーに出れるかな。
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