スタートアップ市場調査:ヴィーガンレザー編
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イークラウドではサービス開始以来、株式投資型クラウドファンディングを通して20案件以上をご紹介してまいりました。ご紹介した企業の事業領域も幅広く、オンラインのカタログギフトからはじまり、D2C、SaaS、Femtech、培養肉、クラフトビール、ドローン、VR、AIなど幅広い事業領域のスタートアップ企業のサポートをしてまいりました。これからも、多種多様なスタートアップ企業をサポートしていきたいと思っております。
今回も弊社のインターンの前田が、今後イークラウドでご紹介したい特定の業界に関する市場の動向や注目のスタートアップ、その業界で株式投資型クラウドファンディングを実施したスタートアップなどを調査しました。
本記事では、サステイナブルな素材として注目される「ヴィーガンレザー」の中で環境負荷の低い「ヴィーガンレザー」を中心に取り上げます。
・「ヴィーガンレザーの市場は、現在どのような状況?」
・「ヴィーガンレザー市場では、どのような企業が取り組んでいる?」
・「ヴィーガンレザー市場は、今後どう成長していくの?」
などの疑問に少しでもお答えできるような記事になれば幸いです。
■ヴィーガンレザーとは?
環境を負荷を減らした素材でつくられた革製品
ヴィーガンレザーは、動物性の素材を一切使用せず、環境への負荷を考慮して作られる人工的な合成革製品のことを指し、”フェイクレザー”とよばれることもあります。その種類は、⽯油由来と植物由来の2種類に大きく分けることができます。近年では、より環境に配慮した植物由来の革製品のみをヴィーガンレザーとよぶ場合もあります。
■ヴィーガンレザー関連の市場規模
年次成長率が36.7%の急成長の世界市場
2028年までに、世界のヴィーガンレザー市場は1,578.9億ドルであり、2021年から2028年までの年平均成長率36.7%で増加していくと予測される急成長市場です。(数値には食物由来だけではなく、石油由来のヴィーガンレザーも含まれます。)
現在の市場成長の大きな要因は、多様な業界の企業が、環境負荷軽減や動物愛護を考慮した経営を求められ始め、取り扱う商品をヴィーガンレザー製へシフトし始めていることにあります。また、個人の消費者においても、サステイナブルやエシカルに配慮した消費行動の意識の高まりから、ヴィーガンレザーへの消費が拡大傾向にあることも要因の1つです。
ヴィーガンレザー市場を地域別に見ると、多くの消費者と多様な種類の資源を抱える北米地域が最大のシェアを持っています。ヨーロッパ地域は、政府による厳しい規制から、ヴィーガンレザーを取り扱う企業が増え、年々需要を増加させています。また、人口増加が予想されている東南アジア・インド地域は、衣類品や自動車産業における需要の高まりから、2023年度以降の高い成長率が見込まれています。
皮革製品全体の市場を素材別に見ると、2021年時点では、天然皮革が市場全体の約50%を占めています。人工皮革・合成皮革は約30%であり、植物性樹脂由来の皮革は約20%を占めています。
(参考:Vegan Leather Market Global Scenario, Market Size, Outlook, Trend, and Forecast, 2019 – 2028)
(参考:Leather Market Size - Global Industry, Share, Analysis, Trends and Forecast 2022 - 2030)
■ヴィーガンレザーの現在
多様なアプローチで開発に取り組むスタートアップが急増中
世界中の大企業やスタートアップが、多様な事業領域においてヴィーガンレザー領域に参入しています。ヴィーガンレザー領域は、欧米諸国が先行して発展しています。しかし、持続可能性を重視した社会へのシフトや、新しい消費スタイルの定着とともに、日本の市場規模は年々拡大しており、企業やサービスの数は増え続けています。
さまざまな持続可能な素材を取り入れたスタートアップが登場しています。
アメリカ発のMyco Works社やEcovative社、インドネシア発のMycotech Lab社、韓国発のMycel社は、マッシュルームレザーとよ呼ばれる、菌糸体由来のバイオマテリアル素材の開発に取り組んでいます。
廃棄される予定の果物を再利用して製品の開発を行う企業もあります。
オランダ発のFruitleather Rotterdam社は、廃棄予定だったマンゴーなどの果物の皮から、靴やファッションアクセサリーを生産しています。イタリア発のVEGEA社は、年間約140億トンも廃棄されるワイン生産に使用されるブドウの搾りカスから、本革に劣らないサステナブルヴィーガンレザーを生産しています。デンマーク発のBeyond Leather社は、リンゴジュースやアップルサイダーの搾りカスと天然ゴムと混ぜ合わせることで、質感・耐久性を保持した素材を開発しています。他にも、パイナップルの廃棄部分を再利用して素材開発を行うイギリス発のAnanas Anam社や、サボテンの葉を利用したメキシコ発のADRIANO DI MARTI社など、さまざま様々な企業がフルーツレザーの開発取り組んでいます。
ユニークなアイディアで、ヴィーガンレザー開発に取り組む企業もあります。インド発のMalai社は、果肉を採取した後の廃棄予定のココナッツ水を利用してバクテリアを培養し、バイオ複合素材を作り出しています。
ヴィーガン対応の環境が拡大している
2020年には、ニューヨーク証券取引所において、ヴィーガンと気候変動対策のためのETF「US Vegan Climate Exchange Traded ETF」が誕生しました。
アメリカの大企業のうち、兵器やタバコ等のセクターおよび、動物性食品を取り扱う企業や動物実験を実施している会社以外の、ヴィーガンや気候変動に配慮した企業のみで構成されています。
ロンドンにあるHilton London Banksideでは、ヴィーガンスイートルームがあります。部屋のカードキーやリネン、床、文房具、掃除用具にいたるまで、植物ベースの素材でできたもので提供されており、ヴィーガンな暮らしを実践するアイデアが凝縮されています。
■ヴィーガンレザーに関連する上場企業
すでに上場している企業においても、さまざまなヴィーガンレザー事業が行われています。ここでは、2社を紹介します。
①三洋化成工業株式会社 (事業主体は子会社のサンノプコ株式会社)
②共和レザー株式会社 (事業主体は子会社の共和ライフテクノ株式会社)
■ヴィーガンレザー関連のスタートアップ *非上場
スタートアップ(非上場企業)においても、植物性ヴィーガンレザー関連事業に取り組んでいます。ここでは、5社を紹介します。
①ヘリテッジ株式会社
②ラヴィストトーキョー株式会社
③MYCL Japan株式会社
④appcycle株式会社
⑤PEEL Lab株式会社
■海外のヴィーガンレザー関連スタートアップ
こちらでは、海外のヴィーガンレザー関連スタートアップを紹介します。
①BOLT THREADS(アメリカ)
②Natural Fiber Welding(アメリカ)
③Modern Meadow(アメリカ)
■株式投資型クラウドファンディングで調達したヴィーガンレザー関連スタートアップ
①Immaculate Vegan(イギリス)
②OneMore(イタリア)
■植物性ヴィーガン専用株式投資型クラウドファンディングプラットフォーム
Vegan Business(ブラジル)
■まとめ
ヴィーガンレザー領域に参入する企業の数は、欧米を中心として近年徐々に増加傾向にあり、スタートアップとして数十億円単位の調達を行う企業も誕生しています。環境問題や動物愛護などへの意識の高まりから、欧米以外の世界中においても注目されはじめている領域です。
現在のヴィーガンレザーは、多くの企業が新規の素材開発の段階であり、ファッションや家具などのあらゆる生活用品が新たに誕生しつつあります。原料に用いられる素材も、廃棄予定の果物の皮や、菌糸体や酵母による培養など、多種多様なアプローチから開発が行われています。
また、日本国内においては、今まで個人で行われていたアップサイクルによるヴィーガンレザーの開発が、少しずつベンチャー企業で取り組まれ始めており、これから新たな素材や商品の開発が進められていくことが予想されます。
生産過程で環境負荷の少ない製品や、廃棄が少なく長期で利用できる製品の開発や消費へと社会がシフトしつつある中で、これから成長していくことが予測されるヴィーガンレザー領域の成長には、目が離せません!
イークラウドではヴィーガンレザー業界のスタートアップも積極的にご支援しています。
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