東京藝術大学楽理科・指揮科 学部入試類似問題 第1回 解答例と解説
1) バス課題の解答例
バス課題のTips
2分の2拍子なので、2拍目といった場合は四分音符では3つ目のことを指しています。
① 2小節目
Ⅴ基本形→Ⅰ1転 (Ⅴ5→Ⅰ6) の連結では、ソプラノを4度上行させると、動きのある美しい旋律が簡単に書けることが多いです。
② 3小節目2拍目~4小節目1拍目
この4つの和音におけるバスとソプラノの旋律の組み合わせは非常によく用いるので、覚えておくと良いです。移動ドで書くと、
長調ではバス「ソ、ラ、シ、ド」に対してソプラノ「ソ、ファ、ソ、ミ」
短調ではバス「ミ、ファ♯、ソ♯、ラ」に対してソプラノ「ミ、レ、ミ、ド」
となります。
③ 8小節目
ソプラノをなるべく動かしたいと思うかもしれませんが、終止形の時はソプラノが止まるのもアリです。フレーズの途中では動き、終止形では止まるというメリハリが付く効果もあります。なお、最終小節も同様です。
④ 10小節目1拍目
1)「新しい和声」式の説明
ドリアのⅥからⅦへの連結。5斜線の和音では、不安定な響きの減5度を形成する根音と第5音はなるべく重複させず、第3音重複で実施するのが望ましいです。
また、減5度は次に狭まる動きをしたくなる性質があるので、バスの根音の2度上行に対して、第5音は2度下行させましょう。第3音は自由に動いて良いですが、2つとも同じ音に動くと連続8度になるため注意しましょう。
2)「和声 理論と実習」式の説明
+Ⅳ7根省1転からⅤ7根省1転への連結。どちらの和音も、第3音は上行限定進行音、第7音は下行限定進行音であり、重複は不可です。したがって、第5音重複で実施します。(Ⅴ7根省の第7音重複が許されるのは2転の時のみです。)
第3音と第7音は限定進行に従って動かします。重複させた第5音の動きは自由ですが、2つとも同じ音に動くと連続8度になるため注意しましょう。
◆あわせて参照→Ⅴ7根省(1転)→Ⅰ(基本形)の連結 (100円)
⑤ 11~12小節目
8~9小節目と同じことを、下属調で行っています。
⑥ 13小節目2拍目~14小節目
第一転回形(6の和音)がずっと続いており難しそうに見えるかもしれませんが、コツをつかめば簡単です。
テノールを除く3声部では、(下の声部から順に)ミソド→ファラレ→ソシミ→…のような配置を平行させて用いれば良いです。バスはずっと第3音、アルトはずっと第5音、ソプラノはずっと根音を続けて使うことになります。
ただし、テノールも平行しようとすると連続8度が続くことになってしまうので、テノールだけは用いる構成音を変えながら折り返すような動きをしてつなげることになります。
この時、第一転回形では第3音重複はあまり用いたくないので、基本は根音と第5音を行き来することになりますが、それではパタパタした動きになってしまうので、Ⅱの1転のように第3音重複が良好である和音をうまく利用して、単純な折り返し音型にならないよう工夫します。
⑦ 16小節目1拍目~2拍目表
1)「新しい和声」式の説明
+4, 6 の和音は、5斜線の和音と同様第三音重複で実施するのが望ましいです。
増4度は次に広がる動きをしたくなる性質があるので、バスの第5音の2度下行に対して、根音は2度上行させましょう。第3音は自由に動いて良いですが、2つとも同じ音に動くと連続8度になるため注意しましょう。
2)「和声 理論と実習」式の説明
Ⅴ7根省3転。第3音は上行限定進行音、第7音は下行限定進行音であり、重複は不可です。したがって、第5音重複で実施します。(Ⅴ7根省の第7音重複が許されるのは2転の時のみです。)
第3音と第7音は限定進行に従って動かします。重複させた第5音の動きは自由ですが、2つとも同じ音に動くと連続8度になるため注意しましょう。
◆あわせて参照→Ⅴ7根省(3転)→Ⅰ(1転)の連結 (100円)
→Ⅴ7根省(2転)→Ⅰ(基本形or1転)の連結 (無料)
⑧ 17小節目2拍目裏~18小節目1拍目表
このⅤ基本形→Ⅳ1転 (Ⅴ5→Ⅳ6) の連結は、Ⅴ→Ⅵの偽終止の代用となる和音進行です。アルトが [固定ド] ミ→ドとなれば通常の偽終止ですが、それがミ→レと順次進行になることによってより柔らかい印象になります。
通常の偽終止では様々な配置での実施が可能ですが、Ⅳ1転を用いる場合は、Ⅴの配置はこれ以外は不可能に近い (連続5度ができるか、ソプラノが主音で終止できない) ため注意が必要です。
2) ソプラノ課題の解答例
ソプラノ課題のTips
① 2小節目
ソプラノ「ラ、シ、ド」に対してバス「ド、シ、ラ」(またはその逆)のように、両外声が反行の順次進行をし、その真ん中の和音として46の和音(三和音の第2転回形)を用いる方法は非常によく用います。
② 3小節目
D→Dis の半音関係の声部以外は同じ音を続けて用いるようにすると、響きがスッキリします。ここでは、バスの旋律を考慮してオクターヴ跳躍にしています。
③ 4小節目~5小節目1拍目
ソプラノの4度上行 (属音→主音または上主音→属音) は、Ⅴ基本形→Ⅰ1転 (Ⅴ5→Ⅰ6) でうまくいくことが多いです。
④ 7小節目
ソプラノで3度の動きがパタパタと繰り返される場合、6、5、6、5、の反復進行は実施しやすい一つの方法です。
この4拍目のテノールをラにしてしまうと、次の和音へ進む際バスと連続8度になるため注意しましょう。連続5度や8度は、第3音重複を用いることで上手く避けられる場合も多いです。
解説は以上です。
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