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経済学過去問演習①~国家一般職2024マクロ第1問~
1.はじめに
いつも閲覧ありがとうございます。公務員学習質問アプリ「KIKIYASU」に参画している経済学習STADIOです。
2025年からは新シリーズとして、資格試験系の過去問で、重要そうな論点を取り上げて解説をしていこうと思います。
第1弾は、国家公務員一般職試験で2024年に問われた、少しひねった乗数効果の問題を取り上げます。問題は以下です。目次の下に、解説が始まりますので、解いたことがない方は是非チャレンジしてから確認をしてください。
なお、解説は、効率性よりも標準的な試験対策テキストをベースとした場合に自然に解ける考え方を、多少の遠回りがあっても優先しています(苦手な人向けということです)。
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2.問題の把握(解答に至る思考)
問題文の1行目から閉鎖経済だと分かります。また、問題文の下2行から、本問は、政府支出乗数が問われていると把握できます。
ということは、乗数を暗記している方は、1/1-c(1-t)に、与件の数字を入れれば良いのかなと、認識できます。
この認識にそって、cとtにあたる数字を探しましょう。限界消費性向は、0.8だと、消費関数(C=20+0.8(Y-T))から分かります。
一方、tはすぐには見つからないですね。本来は、T=tY+αのような形で与えられるはずなのですが、問題文にそうした式がないからです。
むしろ、問題文4行目からT=0.25Cが与えられています。
さてはて、これは、、うん、、、どうしよう。
と、ストップしてしまう方がいるかもしれませんね。暗記している乗数の形が使えないときは、一度、乗数をどのように導出したかを思い出し、それを使いましょう。
3.乗数導出(解答へ)
乗数の導出方法は、Y=C+I+Gに与件の情報を代入して、Yで解くということでした(忘れていた方は、ここで思い出しましょう、普段使われているテキストなどを参考にしましょう)。
では、この問題の乗数を出しましょう。なお、IとGは定数なので、I'、G’とします。
つまり、Y=C+I’+G’(式①)となります。
この式①に、与件の消費関数を入れるわけですが、T=0.25Cでしたので、C=20+0.8(Y-0.25C)を計算してから、式①へ代入しましょう。
C=20+0.8Y-0.2C
1.2C=20+0.8Y
C=2/3Y+5/3(式②)
式②が計算結果です。式①へ代入しましょう。
Y=2/3Y+5/3+I’+G’
1/3Y=5/3+I’+G’
Y=3I’+3G’+5
G’の前にあるものが、乗数(かける数)ですので、政府支出乗数は3だと分かります。つまり、正答は4です。
4.おわりに(問題の考察)
本問は、乗数の丸暗記だけだと危うくなるパターンの問題でした。試験上の経済学は、言葉による理解、グラフによる理解、数式による理解の三位一体が必要ですが、本問は、数式の出し方を覚えておくことの大切さが分かる問題と言えます。
倍率低下と言われる公務員試験であり、昔に比べると問題もやや軟化していると感じますが、それでも、この位は出ますので、丸暗記だけでない準備もしておきましょう。
今後も、皆さんの学習に役立つ論点が載っている過去問解説をしていきます(公務員だけでなく、中小企業診断士、大学編入試験、不動産鑑定士なども加えていく所存です)。よろしければフォローください。
〜執筆者紹介〜
経済学習STUDIO
公務員試験・経済学検定・各種資格試験・大学編入の経済学・経営学系科目の情報発信をします。中の人は、大学や資格予備校で経済学を教えてきたミヤンです。自身も、公務員試験合格経験があります。2024年1月に出版した電子書籍はこちら。また、市販教材で独学で経済学を学んでいる方に、月額で質問し放題サービス(質問交換制)の「KIKIYASU経済学」を、公務員・教員に特化したアプリ「KIKIYASU」(こちらは経済学以外の質問も可能です)を行っています。今後も、様々な学習ツールを整備していこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。