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経済学過去問演習②~中小企業診断士令和6年度:経済学・経済政策第20問~

1.はじめに

いつも閲覧ありがとうございます。経済学習STADIOです。

中小企業診断士のような国家試験や公務員試験、そして大学編入試験で出題された経済学の過去問を取り上げて解説するシリーズ第2弾です。

今回は、中小企業診断士令和6年度の経済学・経済政策の第20問を取り上げます。設問1の問題をまず示しますので、解いてみてください。目次の後に解説を始めます。


↑令和6年度第20問のリード文


↑令和6年度第20問設問1の選択肢と解答群

2.設問1

①労働需要側

本問は、労働市場の話となっています。労働市場のとき、労働需要曲線は、人を雇う側(例えば企業側)ですね。賃金率が下がれば下がるほどたくさん雇おうとするわけです。したがって、労働需要曲線は右下がりとなっています。

そして、選択肢のうち、aの「労働と補完的な生産技術水準の向上」と、cの「企業による資本投入量の増加」が企業側の動きとなります。

aは、労働とセット(補完的ということですので)になる生産技術水準の向上ということですから、例えば、回転ずし店における「しゃり供給ロボットが、従来と価格変わらずに1分間当たりのしゃり生産数が向上した」などがイメージされるケースでしょう。このとき、ネタを担う人さえ増えれば、より多くの寿司を生み出すことができます。したがって、aが起こると、労働者をたくさん雇って、生産量を増やそうと企業は考えます

また、cも機械などの資本の投入を企業が増やしたのであれば、後は労働者をたくさん雇ってその投入した資本を使い切ろうとします。つまり、cが起こると、労働者をたくさん雇って、生産量を増やそうと企業はします

aもcも労働需要を増やす(労働者をたくさん雇う)話だということです。

②労働供給側

一方、労働供給曲線は、働く側(労働者側)です。賃金率が上がれば上がるほどたくさん働こうと考えるからです。したがって、労働供給曲線は右上がりです。

そして、選択肢bの「雇用環境の改善に伴う労働の限界不効用の低下」と、選択肢dの「出生率の上昇に伴う生産年齢人口の増加」は労働者側の動きになります。

bは、働きやすくなったので、追加的に1単位の労働時間が増えても不効用(不満足)が低下しているということを意味します。であれば、もう少し働いてもいいなぁとなりますから、労働供給を増やそうとします。

dは、生産年齢の人口が増えているのですから、たくさんの労働者が働くことを意味しますので、労働供給が増える話となります。

まとめますと、bとdは労働供給が増える話になります。

③均衡賃金上昇の要因分析

さて、設問は均衡賃金率を上昇させる要因を見つけましょうということでした。労働需要曲線と労働供給曲線の交点の縦軸座標値を上げる要因を探すというわけです。

これは、図的に考えれば、(ⅰ)労働需要曲線が右にシフトするときと、(ⅱ)労働供給曲線が左にシフトするときしか、ありません。

このことを下図で確認しておきましょう。
(ⅰ)の労働需要曲線が右にシフトした状態が下記です。


労働需要曲線が右シフトで均衡賃金率が上昇

(ⅰ)の労働需要曲線が右シフトするというのは、労働者をたくさん雇おうとするときに起こります。なぜなら、図の吹き出し①のとおり、今までの賃金率ならたくさん雇おうとしている労働需要曲線になるとき、右シフトが起こっているからです。

そして、2の①で述べた通り、選択肢aとcは労働需要が増える話でした。ということは、労働需要曲線を右にシフトするものが選択肢aとcなので、これらは均衡賃金率を上昇させます。

ということは、答えは選択肢aとcになっている「ア」になります。

正解には至れましたが、(ⅱ)労働供給曲線が左にシフトするときもまとめておきましょう。

労働供給曲線が左シフトして均衡賃金率が上昇

吹き出しの①のとおり、労働供給曲線が左シフトして均衡賃金率が上昇しているとき、労働供給は減らしています。しかし、選択肢bとdは2の②のとおり、どちらも労働供給を増やす話でした。したがって、誤りの選択肢となります。

ということで、設問1は正解がアとなります。

3.設問2

①問題の確認

では、設問2にいきましょう。図の再掲からしておきます。

第20問の図


↑設問2です。


②解説

選択肢a~dをみて、解きやすいものから判断しましょう。

まずは、選択肢cですね。

そもそも、この図は、均衡賃金率Woが労働者のもらえる単位当たりの給料でもあり、企業側が払わないといけない単位当たりの人件費でもありますす。そして、均衡労働量Noが雇われる労働量=雇う労働量を意味していますよね。

したがって、四角形WoONoEは、単位当たり人件費×雇う労働量なので、企業側の労働にかかる費用を表しています。そのため、選択肢cが正解の選択肢だとすぐに検討できます。

次に、「機会費用」よりは頻出の単語が余剰ですからこちらを片付けましょう。なお、「余剰とはお得感のこと」を指します。

本問でいえば、均衡賃金率を、「思ったより安い人件費だな。これはお得だ」と思う企業側のところが「企業に帰属する余剰」になり、「思ったより高い給料だな。得したな」と思う労働者側のところが「労働者に帰属する余剰」になります。

具体的には、均衡賃金率はWoですから、これよりも高く払うつもりだったのにWoで済んでいるとなれば「思ったより安い」と企業側が判断しますので、線分AEがここに該当します(D線が労働需要曲線であるのは2の①のとおりです)。

したがって、「企業に帰属する余剰」は⊿AWoEになります。これにより、選択肢aが誤りで、選択肢dが正解になります。

ちなみに、均衡賃金率Woより安い賃金を覚悟していたのに、Woでお得となるの線分BEを含んでいる⊿BWoEが「労働者に帰属する余剰」になります。

以上の解説から、選択肢cとdが正しいので、正解はオとなります。

4.おわりに

本記事は、中小企業診断士令和6年度の第20問を解説しました。

労働市場は通常の財を扱う市場でイメージしがちな、供給曲線が企業側ではなく、労働需要曲線が企業側になるため、難しく感じます。こういうときは、問題用紙の図の近くに、Dが企業側、Sが労働者側のように書いて間違えないようにしましょう

その後、設問1であれば、均衡賃金率の上昇がどういうときに起こるのかを線を実際にシフトさせて2パターン浮かび上がらせ(労働需要曲線の右シフトか労働供給曲線の左シフト)、その後、選択肢a~dはどの曲線をどちらシフトするか考えることで正解へ導きましょう。

設問2は、選択肢a~dを読んで、主語が違うだけで三角形の指し示しているところは同じという選択肢aとdは怪しいと捉え、余剰分析しましょう。ただ、その前に、設問1から同じ図を見ているので、選択肢cが労働の総費用を表していることはすぐ分かるので、そちらを処理してから行うと良いでしょう。

ご参考になれば幸いです。

〜執筆者紹介〜

経済学習STUDIO
 公務員試験・経済学検定・各種資格試験・大学編入の経済学・経営学系科目の情報発信をします。中の人は、大学や資格予備校で経済学を教えてきたミヤンです。自身も、公務員試験合格経験があります。2024年1月に出版した電子書籍はこちら。また、市販教材で独学で経済学を学んでいる方に、月額で質問し放題サービス(質問交換制)の「KIKIYASU経済学」を、公務員・教員に特化したアプリ「KIKIYASU」(こちらは経済学以外の質問も可能です)を行っています。





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