資金調達コスト
本日は資金調達方法と資金調達コストについて議論したいと思います。
参考文献:金融論(福田慎一)
モジリアーニ・ミラーの定理
<定義>
理想的な資本市場では、資金調達コストはすべての方法(自己資金・銀行借入・債券・株式)で同じである。理想的資本市場とは以下の条件を満たす市場です。
<取引費用(倒産コストなど)が存在しない>
企業が倒産した場合、破産手続きのための弁護士費用などの費用が追加で発生するので、倒産にはコストがかかります。借入を行わない限り、会社が倒産することはないので、倒産コストという観点からは、借入の方が株式での調達よりも調達コストが高くなります。
<法人税が存在しない>
借入による利息の支払いは税務上の損金となるので、自己資金や株式と比較して節税効果があります。企業が配当金を支払っても法人税は減額されません。従って、法人税という観点からは、借入の方が資金調達コストは低くなります。
<情報の非対称性・不完備契約がない>
情報の非対称性がある場合、リスクプレミアムが上乗せされることになります。情報の非対称性という観点では、内部資金が最も資金調達コストが低くなります。
ペッキングオーダー理論
上記のケースでは、理想的資本市場を想定していました。しかし、現実には資金調達のコストは一般的に、内部資金<銀行借入<社債<株式とされています。
補足論点
<内部資金の利用>
内部資金とは、企業が稼いだ利益を再投資することを指します。この方法は最も安価な資金調達方法ですが、外部の投資家や監査機関による監視が少ないため、経営者が自己の利益のために不適切にお金を使うリスクがあります。この現象をフリーキャッシュフロー仮説と呼びます。
<メインバンクの影響>
メインバンクとは、企業の主要な取引銀行のことです。メインバンクが企業に融資を拒否すると、他の銀行も「メインバンクが融資を拒否するのは、この企業が財政的に危険な状態にあるからかもしれない」と判断することがあります。これにより、他の銀行も融資を渋り、企業は資金調達に苦労することになります。つまり、メインバンクと企業の関係では、メインバンクの方が交渉上の立場が上になり、割高な資金調達コストがかかる可能性があります。この現象をホールドアップ問題と呼びます。
<株式発行のタイミング:>
経営者は株価が割高な時に新株を発行し、資金を調達しようとします。しかし、投資家たちは経営者の意図を察知しているため、新株発行が発表されると「経営者が新株を発行するということは、現在の株価は実際の価値よりも高いのではないか」と考え、株を売る傾向があります。これにより、株価が下落することがあります。