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「実現主義」vs「投資のリスクからの解放」

事業投資・金融投資の定義

事業投資:事業への投資
金融投資:余剰資金の運用手段であり、事業投資で資金が必要になった際に直ちに換金できるもの。以下の議論では「換金可能性(流動性と同義)」という考え方が重要になってきます。

金融商品会計

1999年以前、有価証券を時価評価せず、売却時にのみ損益を認識する方法を取っていました。その当時は市場が現在ほど流動的ではなく、時価で有価証券を売却できる保証がなかったため、このような会計処理が行われていました。しかしその後、市場の流動性が高まり、有価証券の時価(株式市場での価格)が現在の売却可能額を適切に表すようになったことから、1999年に金融商品会計基準が制定され、有価証券の時価評価が必要となりました。

実現主義

当時は実現主義という考え方が会計基準を支えていました。実現主義とは、キャッシュの回収が確定した時点で収益を認識する方法を言います。しかし、有価証券の時価が上がったとしても、その時点で売却しキャッシュを回収することは確定していないため、従来の実現主義の考え方では金融商品会計基準と一貫した説明を付与できませんでした。

投資のリスクからの解放

そこで、金融商品会計基準に首尾一貫した説明を付与するために考えられた概念が「投資のリスクからの解放」という考え方です。投資家は将来の予測を行い、リスクを取りながら、投資を行います。その後財務諸表を見ることで、リスクから解放された実績値を確認し、自身の過去の予想が適切であったかを評価します。従って、当期純利益はリスクから解放された確定した利益を提供する役割を果たすべきです。そうでないと、投資家は過去の予想と実績値を照合できなくなってしまいます。したがって、当期純利益は「投資のリスクから解放された」際に認識すべきと言えます。

金融投資と事業投資

ここで、「投資のリスクからの解放」の定義が事業投資と金融投資で異なります。事業投資の最大のリスクは商品の売れ残りであり、そのリスクから解放されるのは商品を顧客に販売した時です。したがって、商品販売時を投資のリスクからの解放時点と考え、損益を認識します。一方、金融投資の目的は時価の値上がりとされるため、時価評価差額を損益に計上すべきです。

投資のリスクからの解放

実現主義という考え方は間違いだったのでしょうか。そんなことはありません。1999年以前の市場は現在ほど流動的ではなく、時価で有価証券を売却できる保証がなかったため、企業が行っている投資は全て事業投資に分類されると考えます。しかし、その後、市場の流動性が増し、有価証券の換金可能性が向上したことにより、金融投資という概念が登場し、金融商品会計基準が制定されました。これにより、金融商品会計基準と実現主義の整合性を明確にするために、「投資のリスクからの解放」という概念が登場したのです。
                                

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