無尽会と社会的ジレンマ
今回は、無尽会を例に社会的ジレンマについて簡単なモデルを考えるということをしようと思います。無尽会というのは山梨の風習で、幹事が持ち回り、幹事以外がお金を出して月一程度でごちそうを食べる習わしです。ちなみに無尽会は自治会ボランティアなどと同様に公共財ゲームの典型的な例です。
無尽会のモデル
仮定:
10 人組を考える
幹事を除く 9 人はお金を支払うか?
一人の意思決定に注目する
お金を払った人: 𝑛人( 0≤𝑛≤8 )
無尽会の効用: 𝑛𝑏
人数が多いほうが豪華なごちそうが得られる
払うお金: 𝑐 ( 𝑐>𝑏>0 )
払ったお金分の元は取れない(幹事分を勘案)
今 𝑛人お金を払っている。自分はどうする?
効用を比較する
お金を払う: ( 𝑛+1 )𝑏−𝑐
払わない : 𝑛𝑏
効用の大小関係は 払わない>払う
𝑛𝑏− ( ( 𝑛+1 )𝑏−𝑐 )=𝑐−𝑏>0
結果
何人お金を払っていても、自分は払わな
いほうが得。
フリーライダーになるほうが楽。
そしてこれは誰にも当てはまるので誰もお金を出さない。
実際はどうなる?
実際は「だいたい 人は協力する」
無尽会は成立する
理由
協力が成立するときはどのようなときか
①見返りが(本人からでなくとも)見込め
るとき
ー互恵性 reciprocity が協力のインセンティブになる
•直接互恵性:施しをした相手に直接恩を返す
•間接 互恵性:施しをした相手が返さない可能性(情けは人のためならず)
ー協力をしないと、自分が協力を受けられない可能性があると人は協力する
•Image Scoring 戦略 (Nowak and Sigmund)
②関係性が長期的になりそうなとき
結論
無尽会のモデルを考えると「誰もお金を出さない」がナッシュ均衡(ゲーム参加者が互いに最適な戦略を選択し、それ以上戦略を変更する理由がない状態)であるから理論的には無尽会は成立しない。
しかし、参加することで見返りが見込めたり、関係性が長期的になりそうな場合は無尽会は成立する。
今回のモデルに互恵性や長期的関係を組み込むことが出きればより正確に事象を説明することができそうです。