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たった一度の取引で90億ドルを失った投資家、その内情+独自検証 (25年2月9日)
【動画】
【概要】
この動画では、2008年の金融危機下で巨額損失を出したモルガン・スタンレーの債券トレーダーが、なぜ失敗したのかを掘り下げ、サブプライム住宅ローン問題と格付けの実態、クレジット・デフォルト・スワップ取引のしくみを丁寧に解説しています。
【話者のプロフィール】
本動画の発信者は海外の投資・経済系YouTubeチャンネルの運営者。映画「マネー・ショート(原題:The Big Short)」など、金融危機をテーマとするコンテンツをわかりやすくまとめるスタイルで知られる。世界的な経済事件や著名投資家の手法に焦点を当て、解説動画を継続的に配信している。
【動画の結論・要点】(詳細は後述)
サブプライム住宅ローンのハイリスク債券を空売り(CDSの買い)しながら、逆にAAA格の債券を大量に売り持ち(CDSの売却)してしまった。
AAA格も実態は危うい商品が含まれており、そこから莫大な損失が発生した。
一方、マイケル・バーリーやマーク・バウム(映画ではそう呼称)などはAAA格のリスクを見抜き利益を上げた。
投資家自身はBBB格の崩壊を正しく予測したが、AAA格の脆弱性を過小評価した結果として大敗した。
最終的に約90億ドルという歴史的な単一取引損失となった。
【動画の詳細】
動画では、映画「The Big Short(邦題:マネー・ショート)」に登場する「ベニー・ケイガー(映画内の架空名)」のモデルとなったハウイー・ハブラー(Howie Hubler)が、モルガン・スタンレー在籍中に行った史上最悪級の失敗トレードを取り上げています。ハウイーは2004年頃、サブプライム住宅ローン担保証券のうちトリプルB(BBB)格の部分に不安を抱き、それらが破綻した際に利益が出るクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を購入しました。BBB格債券の焦げ付きが表面化すれば大きなリターンが見込めると考えたわけです。
しかし、CDSを購入すると保険料にあたるプレミアムを支払い続ける必要があります。ハウイーは、その支払いが自分の収益を圧迫していることに不満を持ち、より安全だと当時考えられていたAAA格債券を対象とするCDSを逆に売却して得られるプレミアム収入で相殺しようと考えました。ところが、AAA格のCDSはBBB格よりもプレミアムが低いため、同じプレミアム額を稼ぐためには何倍もの枚数を売らなくてはなりません。結果として、莫大なエクスポージャー(債務リスク)を抱え込むことになりました。
当時の格付け機関は、本来であればBBB格と大差ないほどリスキーな債権にもAAA格を与えていたケースがあり、実際にはAAA格の債券も大量のサブプライム融資を内包していました。金融危機が深刻化しサブプライムローンが次々と焦げ付くと、BBB格だけでなくAAA格も一気に崩壊します。ハウイーが買っていたBBB格債券向けCDSでは数十億ドルの利益が出た一方で、はるかに多い枚数を売っていたAAA格債券向けCDSで巨額の支払いを強いられ、差し引き約90億ドルの損失につながりました。
この失敗トレードには、ドイツ銀行(Deutsche Bank)やUBSといった欧州の大手金融機関が買い手として参加し、高いプレミアムを提示したハウイーから大量のAAA格CDSを取得しました。彼らはAAA格の危険性を認識していたため、結果的に一方的な利益を得たとされています。動画では、マイケル・バーリーやマーク・バウム(コーンウォール・キャピタルやフロント・ポイントなどを率いていた面々)もAAA格のリスクを見抜き大儲けした例が挙げられ、同じサブプライム危機の中で明暗が大きく分かれたことが強調されています。
ハウイー本人はBBB格の崩壊を読んだ点で洞察力を示しましたが、AAA格に「本質的な安全性はない」と見抜いた人々ほど徹底した空売りを行ったわけではなく、大きな損失を被ることになりました。金融危機後、モルガン・スタンレーは数百億ドル規模の巨額損失を発表し、そのうち9~10億ドルどころか90億ドル近くがハウイーのトレードによるものだったという説が広く報道され、今なお歴史上でも例を見ない単一取引の損失例として語り継がれています。
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