【100BANCHイベントレポート】サステナブルな生産と消費はどこへ向かう?
ガーナでチョコレート工場をつくり、「カカオ革命」を目指すMpreaso合同会社の田口愛さんと、社会課題解決の市場創出を行う株式会社UNERI 代表取締役 河合将樹さんと共に、エコロギー代表の葦苅が、100BANCHにてワークショップを実施しました。
イベント内では、「サステナブルな消費」をテーマにパネルディスカッションを行った後、田口愛さんとのコラボ商品である「コオロギチョコ」を、ご参加の皆さまに試食いただきました!
今回は、イベントの様子をお届けします!
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●登壇者(司会者)株式会社UNERI 代表取締役 河合将樹さん
●登壇者Mpraeso合同会社 CEO 田口愛さん
●登壇者エコロギー代表 葦苅晟矢
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起業のきっかけ
河合さん
まず初めにこれまでのお話をお伺いさせていただきたいのですが、葦苅さんはなぜカンボジアに行かれて、起業されたんでしょうか?
葦苅
もともとは国内志向で、海外旅行にも1人で行ったことはなかったんです。当時は研究室にこもって、どうやってコオロギの生産性を増やせるのかを考えていました。そして研究を進めていく中で、コオロギは暖かい場所で育ちやすいということが分かってきました。
そこで早速Facebookで#criket farmer cambosia (#コオロギ農家 カンボジア)と調べてヒットした農家さんにDMをしてみたんです。そこで返信がきて、カンボジア農家さんと繋がる大きなきっかけになりました。
田口さん
タイやベトナムではなくて、なぜカンボジアだったんですか?
葦苅
カンボジアが唯一、都心部でも、まだ昆虫食を食べる習慣がまだあったんです。
実は現在でも、都心部のイオンにもコオロギが売ってたりしてます。
生産も消費も昆虫食のバリューチェーンが整っているという点でビジネスをやるうえでは面白いと思い、研究室を飛び出してカンボジアへ向かいました。
河合さん
田口さんはなぜガーナに行かれたんですか?
田口さん
私はもともと、顔が見える農家さんから買うことを大事にしていました。その中でチョコレートって誰が作ってるの?と考えたときに顔が見えなかったことが大きなきっかけです。
そして、チョコレートの生産に関して調べ始めたら、児童労働の問題など社会問題と密接に繋がっていることを知るようになりました。
私はチョコレートを食べて幸せなのに、作っている人は幸せでない。もうチョコレートは食べないほうがいいのではないかと考えるようになりました。
そしてもう一つ大きなきっかけがあって、高校時代に、必死に受験勉強を頑張っていたのですが、大学に合格し、迎えた入学式で「将来何になりたい?」という質問に対して、何も答えられなかったんです。そこで、これまで受験をゴールにしていて、その先の事は何も考えられていないことに気づきました。
それからは、自身の好奇心に向き合いたいと思うようになり、「自分は何にわくわくするか」を考えるようになりました。
そこで世界と繋がれることや、チョコが好きという事に関心があることに気づき、初めての夏休みにガーナに行きました。当時は特に何をするのかという予定は決めていなかったですね!
ただ、自分のワクワクに向き合って将来を考えたかったという思いが強かったです。
事業作りにおける難しさ
河合さん
お二人とも、海外で事業づくりを行っておられると思うのですが、そのなかでの葛藤など、誕生秘話を教えてください。
田口さん
ガーナでの工場づくりが印象的です。現地で工事をしている時に、土の中からお芋がたくさんでてきて……
現地の人は大喜び。その日はみんな工事のことは忘れて、家族のもとに帰っちゃいまいした……。芋に負けたのはすごく強烈な体験でしたね><
また別の日は、工事をしながら音楽をかけてたのですが、どんどん楽しくなって、ダンスパーティーみたいになってしまって……。
このように、始めは文化の違いに葛藤していたのですが、仕事よりも家族のことや楽しむことなど、ワクワクへの優先度が高い彼らに対して、ステキだなと思えるようになってきました。最近では、私も一緒にダンスを楽しんでます。
河合さん
葦苅さんも、ぜひエコロギーでの葛藤、大変だったことをお聞かせください。
葦苅
食事業は「作る」だけではなくて、「届ける」ことも大事だという点です。
カンボジアから日本に輸出する際に検疫を通過しないといけないのですが、怪しい粉末だと思われてしまい、検疫に苦戦しました......。「チョングラット!」と伝えるもなかなか通じない。(※チョングラットは現地語でコオロギという意味)
そもそも、カンボジアからコオロギを輸出した前例がないため、輸出リストに該当コードがないんです.....。
しかしながら、泥臭く丁寧にコミュニケーションをすることで、今ではカンボジアから正規輸出することができています。
言葉や文化が違う中でのコミュニケーションや交渉事はすごく難しかったですね。
田口さん
たしかにそうですよね。ガーナでも、チョコ産業に対するルールが決まっておらず、話し合いは大変でした。
葦苅
でも、田口さんは今、現地の文化を受け入れながら、一緒に楽しくやっておられますよね!
実際に私も現地で働いてみて思うのですが、悪い人っていないと思っています。
自分が何者なのかという事を丁寧に話していく事が大事で、それを続けていくと、私は今では「Mr.クリケット」と顔パスでもいけちゃうくらいです(笑)。やっぱり文化が違う中では、コミュニケーションが大事ですね。
サステナブル消費
河合さん
今日のテーマが「サステナブル消費」ということで……
サステナブル消費の主な担い手として「Z世代」とがよく挙げられます。
総務省のデータによると、Z世代は1000万人。これは人口の23%になるようです。その中で20~24歳とみると日本人口のたったの7%!
こうして見てみると、海外にも目を向けていく事が重要なのではないかと考えています。
皆さんは実際に海外もご経験される中で、日本との違いを感じておられますか?
葦苅
そうですね。最近だとシンガポールの方とも情報交換をするようになりましたが日本よりも好印象をもってくれやすいです。現在、シンガポールではフードテックが進歩していて、昆虫食に対してポジティブな印象を持っている人が多いように思います。
田口さん
私も最近、シンガポールの方とお話をする機会があったのですが、理解が進んでるなと感じました。シンガポールでは、「本当に美味しいものはきちんとトレーサビリティが成り立っている」ということがしっかりと伝わっている。
日本では、まだまだ「フェアトレード=寄付」という印象を持たれている方が多い中で、シンガポールでは「フェアトレード=本当においしい」といった考えの人が多かったです。
社会にいいことは世代で異なる
河合さん
最近、仕事をしていく中で社会にいいことが世代によって違うのでは?と考えることがよくあります。
【「社会にいいこと」の世代別認識 】
田口さん
私も第3世代に共感します。しかし現在は第2世代の考えが一般的には浸透している感覚があるので、自分の考えを伝えたいときは第2世代の考えに沿った伝え方を意識しています。
葦苅
そうですよね。私も第2世代の考え方から論点を進めるようにしています。その中で第3世代のような消費に変えて行くにはどうしたらいいのか、を伝えていますね。
河合さん
第3世代へとフェーズを移していくためにも、今後どのような取り組みをしていきたいと思いますか?
葦苅
「SDGsに従わないといけないから、昆虫食を食べないといけないんだ」といったような抑圧が生じてくるのは問題だと思っています。「地球にも健康にもいいものだから」と五感で感じていくことがサステナブルに繋がると思うので、そういった食体験を提供していきたいです。
田口さん
アフリカで活動しているというと、貧困といったネガティブなイメージから入る人が多いのですが、実際に現地で共に働いていると、みんなすごく楽しそうでステキな生活をしているんです。SNSで日々現地の様子をアップしたりして、現地の良さを伝えていきたいですね。
消費すればするほど社会が良くなる「リジェネラティブ商品」
河合さん
最近では、「リジェネラティブ商品」と呼ばれる「消費すればするほど社会が良くなる小品」が注目されていますが、まさにエコロギーチョコはリジェネラティブを体現しているものですよね!
(※エコロギーでは、田口さんのMAAHAチョコレートとコラボしてコオロギ粉末入りのチョコレートを開発)
葦苅
そうですね! エコロギーチョコ1つでどれだけ社会に貢献できているのかを数値で表せるようになっています。
こちらが、エコロギーチョコで貢献できるソーシャルインパクトです。
コオロギは現地の工場から出たフードロスを食べて育っているので、こちらのチョコを作るにあたって、1個あたり約25.2gのフードロスに貢献できます。
エコロギーチョコ 試食会
葦苅
社会課題を疑似体験できるような消費を、私たちの昆虫食から作っていきたいということで、この度、田口さんと共にエコロギーチョコを作りました。
ただのコオロギチョコではなくて、一口食べることでカンボジア農家の生活にどう貢献できるのか等、ソーシャルインパクトを楽しくポップに伝えたいと思ってます。
河合さん
エコロギーチョコに含まれているガーナチョコの特徴はどんな感じでしょうか?
田口さん
ガーナチョコでは、原料にこだわっています。ここではカカオ・砂糖・カカオバターしか使っていないんです。カカオ自体の味の面白さを楽しんでもらいたいという思いでミニマムな材料で作ることを大事にしています。
今回のコオロギチョコを作るに当たっては、持続的に食べられる事が大事と考え、おいしさを一番に追求しました。日常の中に入り込めるコオロギチョコを作れたのではないかと思います。
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これからもエコロギーではサステナブルを正しく伝えたいと思ってます。しかし近年はサステナブルがバズワード化しつつあって、“サステナブル疲れ”を感じる人が多くなっているのではないでしょうか?
本来は、自らが関心をもって取り組むことが自然とサステナブルに繋がってくるのだと思っています。
エコロギーチョコをきっかけに、エコロギーでは「楽しみながら、自然と社会にも貢献ができている」世界を目指していきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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