二、わたくし白髪染めませんから
年々増える白髪
白髪が目立つようになってから数年経った。齢を重ねるごとに白髪は増え、頭髪はもとより、眉毛、アンダーヘア、さらに最近になってまつ毛にまでも見つけてしまった。額のシワ、ハリのない目元、それを隠すためのメガネ。メガネ至っては昨年から進行している老眼もあいまって、ファッションから実用品になってしまった。スマホを自撮り用のカメラに切り替えると、画面に映る私の顔面に衝撃を受けてシャッターボタンを押せない。恐ろしい。だが私は決めた。白髪は染めないことにした。
白髪を染めない理由は二つ
私が白髪を染めないと決めた理由は二つある。一つは、白髪を染めようが染めまいが美しい人は美しい。白髪とはまさに時代をたくましく生きてきた証であり、勲章でもある。坂本龍一さん、キングカズさん、イチローさんなど銀髪紳士は枚挙に暇がない。女性でも世界的なピアニストのマルタ・アルゲリッチさんのグレーヘアは風格があるし、草笛光子さんの白髪は品がある。お手本は身近にもいる。母だ。銀髪がよく似合っているし、何よりも私は母の銀髪が好きなのだ。私の理想は、歳を重ねるごとに美しさを増すフランス女性のように、今より美しくなることだ。グレーヘアの私は今より断然赤い口紅が似合うはずだ。悲観的な未来など想像したくないのだ。
そして二つ目の理由がヘアドネーション、つまり頭髪の寄付を希望しているからだ。Japan Hair Donation & Charity(通称ジャーダック)では、寄付する頭髪の条件を三十一センチメートル以上と定めている。美容師は頭髪をビーズの暖簾のように部分部分をゴムで束ね、そこにハサミを入れていく。従って素人が頭髪を後ろで一つにゴム止めして、ゴムの少し先から三十センチメートルの物差しを当ててはみ出したから「長さが達した」と思っても、それでは心許ない。見栄えや快適さを度外視して髪伸ばしているのに、長さが達しなかったという理由でウィッグを作れなかったら、ウィッグを待っている若人に申し訳ない。私自身も悲しい。
ただ、寄付する頭髪は黒髪でも、白髪でも、毛染めした髪でも、ブリーチした髪でも構わない。したがって、ヘアドネーションが白髪を染めない理由にはならない。白髪を染める染めない以前に、実のところ私はロングヘアが似合わない。ロングヘアの自分を好きになれないのだ。ヘアドネーションの機を待つ私の頭髪は、後ろ髪でバストを隠せる程の長さだ。身長が低い私にとって、ロングヘアは頭を大きく見せるという、決してありがたくない効果が働いてしまう。とにかくバランスが悪いのだ。かといって後ろで束ねたら年齢より老けて見える。そんな私が行きついたのが着帽だ。ねじねじした頭髪を帽子にスッポリ収めてしまうのだ。
帽子をかぶる
帽子は頭髪を隠す目的で着用するようになった。頭髪を隠したいのだ。そこに黒髪も白髪もない。ならば染める必要などない。私の考えはそこに着地した。男性は室内の着帽は一般的に認められていないが、女性は認められる場合が多い。だからといってすべてのケースで認められるわけでなはい。目下の課題は、どうしても着帽が認められない場所、例えばビジネスの現場で頭髪をどのように目立たせないようにするかだ。髪を小さくまとめ、なおかつ生え際の白髪を隠せるような広いヘアーバンドを、現在探している。そして、私が何よりも深刻だと思っているのは、頭髪の白髪ではなく、アンダーヘアの白髪なのだ。
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Japan Hair Donation & Charity https://www.jhdac.org/index.html