保険商品の世代間格差と、過去回帰
世代ごとに入れる保険商品が異なる話
生命保険は健康を損ねてしまった人だと入ることはできないというのが通説である。「○年以内に入院歴や病気の再発なし」など、例外もあるかもしれないが、基本的に病人は入ることができない。
これが意味するところは何か。消費者は自分が健康体でいられる期間に発売された保険商品にしか加入することができないのだ。
おおむね10〜30代の頃だろう。40代に差し掛かると、体調に不安を抱える人間が急激に増える。もちろん、こんなことをお客さまに直接いうわけにはいかない。
「あなたの健康は精々30代までです」なんてデリカシーのないことを言おうもんなら、誰でも激怒するだろう。特に自分の健康と判断力に対してバキバキに自信を持っている経営者は、そんな風にプライドを傷つけられたら一発でその担当者を出禁にするに違いない。
しかし、高度成長期に働き盛りを迎えた人たちの多くは極めて割安な保険(いわゆる「お宝保険」)に加入する。そして、世代が下るにつれて商品ラインナップは細分化・短期化・機能がスリム化された保障に変わってゆくのだ。
生命保険はその人の生活を写すものだが、世代ごとの販売環境もまた反映する商品なのである。
販売停止になる商品の背景
「何で過去の商品は維持しつつ、新しい商品をどんどん追加してゆかないの?」と思うかもしれない。しかし、商品ラインナップがあまりにも膨れ上がると、販売スキルの要求水準が上がるし、顧客からしても選択肢が多すぎて決断力がしづらくなる。
さらに、店じまいされる商品の背景に想像を巡らせるのがいいだろう。
民間生保は営利企業なので、儲からない商品は基本的に扱わない。では、どんな商品が儲からない商品なのだろうか。
以前も取り上げたが、保険商品における利益の源泉は3つだ。
支払事由が分かりづらくて苦情が一杯だとコールセンターや営業担当者に負荷がかかる。仕組みが複雑すぎて事務負担が重すぎるのもマイナスだ。思ったより支払事由の発生率が高いなんて場合もありうる。
生命保険会社のいう「儲からない商品」はこのようにいろんなニュアンスが含まれているのである。
保険商品のリバイバル
「世代ごとに加入できる商品に限りがある」ということをここまで書いてきたが、ここへきて過去商品のリバイバルがチラホラ見られるようになってきた。
外貨建保険はかつて売られていた変額保険(円建)と思想的に近いし、3大疾病に備える保障もちょっとずつ角度を変えながら売り出されている。
「ファッションは20年周期でまた元に戻る」と言われているが、どうやら生命保険業界にもいえることのようだ。
親世代の保険に入れなかった若年層からすれば、選択肢が増えるのは喜ばしいことである。
逆に気をつけなくてはいけないのは、機能が重複した保険に入らないことだ。「結局この保険って、やってることは既に入ってる〇〇と一緒だよね」と気付ければ、無駄な買い物を避けることができる。
どこの業界もそうだが、商品ラインナップの変更は「新鮮さの演出」も見込んでいるからである。目先の変更点に目を奪われてはいけない。