息子の成長が嬉しい。
息子は、今年の春に高校生になった。
どちらかというと、気持ちが穏やかで優しい性格だ。
姉が、2人いる環境も影響しているのか、ほとんど喧嘩もしないし、汚い言葉も使わない。競争や争いごとは嫌いで友達と仲良く遊ぶのを好む。平和主義者だ。
しかし、私に似て、頑固なところがあり、たまにそれが邪魔をして上手くいかない事もある。
私は、そんな息子を15年間見守ってきたのだが、つくづく優しい心を根っこの方に持っている子なのだなと感心している。姉たちも、口をそろえて同じようなことを言っているので、本当なのだろう。
息子は、5歳~14歳までテニスを習っていた。
そもそも自分の意志ではなく、親に勧められて始めた事だ。
週に3~4回は練習に連れていかれ、それなりに上手くなっていたが、試合で負けても悔しがらず。日々の練習を淡々とこなすだけだった。私には、そこまで好きではない様に見えていた。その為、それ以上にはうまくはならないと思っていた。ただ、夫のほうは、一生懸命になっていた。その為、普段の練習も欠かさず見学し終わるとアドバイスや注意をしていた。試合で負けると息子より夫のほうが悔しがって息子を𠮟っていた。
これでいいのか。
心が優しい息子は、やめたいと言えなかったのか。親を裏切れずに親の期待を背負い続けていたのか、その辺の本心はわからない。しかし、習い事にもたくさん友達がいて楽しくしていたのも事実だった。それでいいのかなと思っていた。
ところが、中学2年も終わる頃、怪我と受験を理由に息子が突然辞めたいと言い出した。私は、びっくりした。父親と二人で続けていたテニス中心の生活を相談なしに終わりにしたいと言っているのだ。休むのではなく辞めると言った。夫は寂しそうだった。
考えてみたら、息子が自分から重大な決断をしたのは、生まれて初めてのことだった。
長く続けたテニスをやめるのは、私も寂しいと思ったが、息子が夫にハッキリと意見を言えたという事実が驚きであり、むしろ嬉しかった。息子の成長を感じた瞬間だった。
そして、長かったテニス生活が中学2年で終わった。
その後、一年間テニスは一度もやらなかった。5歳からそんな生活はなかった為、親から見れば何か物足りない感じがしたが、当の本人はすっきりしていて、テニスから解放されたように、今までになく存分に好きなゲームを友達と楽しんでいた。受験というのは、辞める口実のように、勉強に切り替える感じでもなかった。
そして、この春高校生になった息子は、いろいろ悩んだ末になんと。部活にテニスを選んだ。
長い間、父親と続けてきたテニスを今度は自分だけの力で試してみたいと思ったのだろう。
そこから、息子は、自分から早起きをして壁打ちに行ったりと初めて自分から進んで行動を起こした。筋トレやストレッチも自分からやっている。そんな事は今まで一度もなかった為、変化に驚いた。
一年間テニスを休んで良かったのだろう。息子なりにリセット出来た感じだ。
その休息の一年間があったから、父親からも卒業できた。そして、父親から離れたことで、父親が築いてくれた土台の有難みにも気付いてくれていると思う。
これからは、きっと自分のテニスが出来るだろう。
いままで、息子になかったものは、自分の力で決断する力だ。
何事も自分を信じて進んでいってほしい。
親から少しずつ巣立っていく。
そんな成長していく姿を見るのが本当に嬉しい。