品質管理検定 #32-03
【問3】
検定と推定に関する次の文章において、$${\boxed{\space}}$$内に入るもっとも適切なものを下欄のそれぞれの選択肢からひとつ選びなさい。ただし、各選択肢を複数回用いることはない。なお、解答にあたって必要であれば付表を用いよ。
ある工場では、2つの生産ライン(Aライン、Bライン)がある。Aラインで製造される製品からランダムに抜き出した$${n_A}$$個のサンプル中に$${x_A}$$個の不適合品があり、Bラインで製造される製品からランダムに抜き出した$${n_B}$$個のサンプル中に$${x_B}$$個の不適合品があるとする。このとき、2つのラインに対する母不適合品率に違いがあるかどうかを検討する。具体的な各ラインにおける製品サンプル数と不適合品数を表3.1にに示す。
手順1として、帰無仮説を$${H_0}$$、対立仮説を$${H_1}$$とした場合、$${\boxed{(11)}}$$として仮説を立てることができる($${P_A}$$はAラインの母不適合品率、$${P_B}$$はBラインの母不適合品率)。
手順2として、有意水準$${{\alpha}=0.05}$$を定める。
手順3として、表3.1のデータより、各ラインの
標本不適合品率$${p_A=\cfrac{x_A}{n_A},{\space}{\space}{\space}p_B=\cfrac{x_B}{n_B}}$$と、
平均不適合品率$${\overline{p}=\cfrac{x_A + x_B}{n_A + n_B}}$$を求める。
手順4として、棄却域の境界値は$${\boxed{(12)}}$$となる。
手順5として、検定統計量の値を計算すると、$${{u_0}=\boxed{(13)}}$$となる。
手順6として、棄却域と検定統計量を比較して評価すると、帰無仮説$${H_0}$$は有意水準5%で$${\boxed{(14)}}$$され、2つのラインの母不適合品率は$${\boxed{(15)}}$$といえる。
さらに、2つのラインに対する母不適合品率の差の信頼率95%の信頼区間は、次式で求めることができる。
信頼区間:$${\boxed{(16)}}$$
この結果、このデータによる信頼区間は、$${\boxed{(17)}}$$となる。
【$${\boxed{(11)}}$$の選択肢】
ア. 帰無仮説$${H_0 : P_A\space{\not =}{\space}P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A = P_B}$$
イ. 帰無仮説$${H_0 : P_A > P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A = P_B}$$
ウ. 帰無仮説$${H_0 : P_A < P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A < P_B}$$
エ. 帰無仮説$${H_0 : P_A = P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A\space {\not =} {\space}P_B}$$
オ. 帰無仮説$${H_0 : P_A = P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A > P_B}$$
カ. 帰無仮説$${H_0 : P_A = P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A < P_B}$$
【$${\boxed{(12)}}$$の選択肢】
ア. 1.645 イ. 1.960 ウ. 2.325
エ. 2.920 オ. 3.270 カ. 4.303
【$${\boxed{(13)}}$$の選択肢】
ア. 0.563 イ. 1.688 ウ. 7.281
エ. 7.281 オ. 7.475
【$${\boxed{(14)}}$$ $${\boxed{(15)}}$$の選択肢】
ア. 採択 イ. 棄却 ウ. 有意 エ. 変わらない
オ. 等しくなった カ. 違いがある
キ. 小さくなった ク. 大きくなった
【$${\boxed{(16)}}$$の選択肢】
以下で、$${K_p}$$は標準正規分布の上側100$${P}$$%点を表す。
ア. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$
イ. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}-\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$
ウ. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{(1-p_B)}{n_B}}}$$
エ. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{(1-p_A)}{n_A}-\cfrac{(1-p_B)}{n_B}}}$$
オ. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A}{n_A}+\cfrac{p_B}{n_B}}}$$
カ. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A}{n_A}-\cfrac{p_B}{n_B}}}$$
【$${\boxed{(17)}}$$の選択肢】
ア. ー0.129〜0.233 イ. 0〜0.104 ウ. 0.009〜0.095
エ. 0.019〜0.085 オ. 0.020〜0.084
【正解】
(11) エ. 帰無仮説$${H_0 : P_A = P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A\space {\not =} {\space}P_B}$$
(12) イ. 1.960
(13) ウ. 7.281
(14) イ. 棄却
(15) カ. 違いがある
(16) ア. $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$
(17) ウ. 0.009〜0.095
生産ラインA, B があります。抜き取りで検査をしたら「差」はあるけど、「意味のある差」なのかどうか?ってことですね。
AラインはBラインよりもサンプル数が若干少なめですが不適合品数は2倍ちょっとあります。結構違う気がするなー、と思っても良いです。結論はまだ出ませんけど。こういう「雰囲気」を感じておくということは有効だと思っています。計算間違いなどで、予想外の結論が出たときに、「おかしいんじゃない?」と見直すきっかけになります。ただ、あまり試験時間は無いのでそんなにじっくりできません。
手順1として、帰無仮説を$${H_0}$$、対立仮説を$${H_1}$$とした場合、「(11) 帰無仮説$${H_0 : P_A = P_B}$$、対立仮説$${H_1 : P_A\space {\not =} {\space}P_B}$$」として仮説を立てることができる($${P_A}$$はAラインの母不適合品率、$${P_B}$$はBラインの母不適合品率)。
「帰無仮説」と「対立仮説」の使い方。
「帰無仮説」って、そもそも否定される前提です。切ない仮説。これを否定することで、「もう一方の説(対立仮説)」を証明します。
「帰無仮説」vs「対立仮説」というより、
「帰無仮説」<「対立仮説」というイメージで良いです。
「AラインとBラインで母不適合品率に差があるかどうか」という検証で、
帰無仮説に「差がない」$${H_0 : P_A = P_B}$$(しかし否定したい)
対立仮説に「差がある」$${H_1 : P_A\space {\not =} {\space}P_B}$$
手順2として、有意水準$${{\alpha}=0.05}$$を定める。
手順3として、表3.1のデータより、各ラインの
標本不適合品率$${p_A=\cfrac{x_A}{n_A},{\space}{\space}{\space}p_B=\cfrac{x_B}{n_B}}$$と、
平均不適合品率$${\overline{p}=\cfrac{x_A + x_B}{n_A + n_B}}$$を求める。
数字を当てはめて計算すれば良いです。
$${p_A=\cfrac{x_A}{n_A}=\cfrac{16}{200}=0.0800}$$
$${p_B=\cfrac{x_B}{n_B}=\cfrac{7}{250}=0.0280}$$
$${\overline{p}=\cfrac{x_A + x_B}{n_A + n_B}=\cfrac{16+7}{200+250}=0.0511}$$
イメージが湧いてきました? Aライン、Bライン、平均の不適合品率が出ました。ばらつきの話なのか、差があると言えるのか。
手順4として、棄却域の境界値は「(12) 1.960」となる。
ここね。どうやって検定するか?
独立性の検定といわれている$${\chi^2}$$検定でも良いと思うんです。そうするとこの場合の自由度は1になります。$${\chi^2}$$の付表で自由度=1, 有意水準=0.05のところを見ると、3.84なんです。選択肢にありません・・・。
あせっちゃいますよね。
$${nP{\ge}5}$$かつ$${n(1-P){\ge}5}$$のときは、正規分布で近似することができます😅
ここでもう1トラップ。有意水準5%だけど、表の上の小っちゃいグラフを見るとP(確率)って片側でしょ? これ、両方で5%になるようにするから、片方は0.25%のところになります。
正規分布表の(Ⅱ)Pから$${K_p}$$を求める表の0.025(2.5%)を読んで、
1.960です。この狭いエリアにあるような状態なら偶然じゃなくて差があるんだ!という考えですね。
手順5として、検定統計量の値を計算すると、「(13) 7.281」となる。
母不適合品率の差の検定統計量は、
$${u_0=\cfrac{P_A-P_B}{\sqrt{\overline{P}(1-\overline{P})\bigg(\frac{1}{n_A}+\frac{1}{n_B}\bigg)}}}$$
で計算します。覚えるしかないかなー?
計算がわからないけど、棄却域の境界値が1.960ということと、結構大きくなりそうと思えたら、7.281, 7.475 のどちらかまで絞り込んで、好きなほうを選ぶのもアリかもしれません😇
手順6として、棄却域と検定統計量を比較して評価すると、帰無仮説$${H_0}$$は有意水準5%で「(14) 棄却」され、2つのラインの母不適合品率は「(15) 違いがある」といえる。
(13)の計算がわからなくても、ここはなんとかしましょう。
帰無仮説の「差が無い」を棄却すれば、対立仮説の「差がある」を採用します。問題のデータから、「差がある気がする」と思えば、「帰無仮説を棄却して、違いがある」と選択すれば良いです。「差がある、とは言えないなぁ」と思うなら、「帰無仮説を選択して、変わらない」を選択すれば良いのです。計算がわからないとしても、「帰無仮説、対立仮説」と「採択する、棄却する」「違いがある、変わらない」はイメージできるようにしましょう。間違っても仕方ないけど、「帰無仮説を棄却するけど、差があるとは言えない」とおかしな結論は避けたいです。個人的にオススメは、「帰無仮説を棄却して、差がある」とすることです。なぜか?というと、その方が試験問題っぽいからです😅
信頼区間:「(16) $${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$」
この結果、このデータによる信頼区間は、「(17) 0.009〜0.095」となる。
2つのラインに対する母不適合品率の信頼率は
$${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$
説明無くてごめんなさい。でも、このまま覚えてしまう方が良いです。何回か計算練習をして身に付けましょう。
$${K_{{\alpha}/2}}$$は、(12)で選ぶ1.960です。「片側」と強調して説明しましたが、$${{\alpha}/2}$$となっているので、後付けですがヒントになっています。
$${K_{{\alpha}/2}=1.960}$$
$${p_A=0.080}$$
$${p_B=0.028}$$
$${n_A=200}$$
$${n_B=250}$$
これらを式に当てはめて、
$${(p_A - p_B){\pm}K_{{\alpha}/2}\sqrt{\cfrac{p_A(1-p_A)}{n_A}+\cfrac{p_B(1-p_B)}{n_B}}}$$
$${=(0.080 - 0.028){\pm}1.960\sqrt{\cfrac{0.080(1-0.080)}{200}+\cfrac{0.028(1-0.028)}{250}}}$$
$${=0.052{\pm}0.043}$$
$${=(0.009, 0.095)}$$
計算問題はしっかり練習しておかないと解けませんね。いざ!となれば、それなりに選択肢を絞ってあとは運任せになります。
実務では、機能の少ない電卓でヒーヒー計算して評価することは無いと思います。試験ももうちょっと実際にあったものにして欲しいです。まあ、「実際に」やっていない会社も多いのかなー?とも思います。試験をきっかけに品質管理に取り組む、というのも品質管理検定の意義なのかもしれません😇 しらんけど😅
ではー。