品質管理検定 #26-06-002
[問]
実験計画法に関する次の文章において、 $${\boxed{\space}}$$内に入るもっとも適切なものを下欄のそれぞれの選択肢からひとつ選びなさい。ただし、各選択肢を複数回用いることはない。なお、解答にあたって必要であれば付表を用いよ。
②ある研磨機の送り速度を4つの水準$${(A_1,A_2,A_3,A_4)}$$で設定して研磨を行う。
各水準で繰返し数3回、計12回の研磨実験をランダムな順序で行った結果を表6.1に示す。この結果より表6.2の分散分析表を得た。
なお、表6.1には、各水準でのデータの合計とそれを2乗した値を示している。また、個々のデータの2乗をすべて加えた値は47.51である。
上記より分散比$${F_0=\boxed{(38)}}$$であり、$${A}$$の効果は$${\boxed{(39)}}$$といえる。また、$${A_1}$$の母平均を信頼率95%で区間推定を行うと、信頼限界は$${\boxed{(40)}}$$である。
$${\boxed{(38)}}$$の選択肢
ア. 0.11 イ. 0.30 ウ. 2.67 エ. 3.38
オ. 6.75 カ. 9.00 キ. 10.63
$${\boxed{(39)}}$$の選択肢
ア. 有意でない イ. 有意である
ウ. 有意か有意でないか判定できない
$${\boxed{(40)}}$$の選択肢
ア. 1.29 〜 2.13 イ. 1.32 〜 2.16 ウ. 1.42 〜 2.26
エ. 1.61 〜 1.99 オ. 1.64 〜 2.02 カ. 1.74 〜 2.12
キ. 1.82 〜 2.66 ク. 2.14 〜 2.52
正解
(38) カ. 9.00
(39) イ. 有意である
(40) カ. 1.74 〜 2.12
説明長いです😇
問題文中にある「個々のデータの2乗をすべて加えた値は47.51である」はダミーです😅 使いません。
測定結果の表中にある合計の2乗も使いません。
分散分析表を見ていきましょう。
平方和Sのところ。最初から数字が載っているのでそれを使えば良いのですが、どうやってこれらの数値を計算するのかを見ておきます。
まず、一番下の「計」のところ。総平方和です。これが一番しっくりきます。
・全データの平均値$${\overline{x}}$$を求める。
・{(各データ)ー$${\overline{x}\}^2}$$ を合計する。
これが総平方和になります。総平方和を$${S_T}$$、各データで条件$${_i}$$、各水準のデータを表の左から$${_j}$$番目のデータを$${x_{ij}}$$とすると、
$${S_T=\displaystyle\sum_{i=1}^4\displaystyle\sum_{j=1}^3\left(x_{ij}-\overline{x}\right)^2}$$
計算すると、0.70です。
要因$${A}$$の平方和$${S_A}$$を求めます。
この平方和は、水準間のばらつきを見ています。
・各水準の平均値を$${\overline{x_i}}$$を求めます。
・水準ごとの偏差、$${\left(\overline{x_i}-\overline{x}\right)^2}$$を求めます。
・水準ごとの偏差をデータ数倍します。今回は各水準3データですから3倍します。
・全部の水準で計算したものを合計します。今回は4水準です。個々のデータは使いません。平均値を使います。
$${S_A=\displaystyle\sum_{i=1}^4\displaystyle\sum_{j=1}^3\left(\overline{x_i}-\overline{x}\right)^2}$$
計算すると。0.54です。
誤差の平方和$${S_E}$$を求めます。ここの「誤差」は、同水準内の誤差です。実験条件が同じのとき、どのくらい偏差があるかを求めます。
・各データから、その水準の平均値を引いたものを2乗します。
・全データで計算して、合計します。
$${S_E=\displaystyle\sum_{i=1}^4\displaystyle\sum_{j=1}^3\left(x_{ij}-\overline{x_i}\right)^2}$$
計算すると、0.16です。
数値から予想出来ますが、
$${S_T=S_A+S_E}$$ です。
式を書き直すと、
$${x_{ij}-\overline{x}=\left(x_{ij}-\overline{x_i}\right)+\left(\overline{x_i}-\overline{x}\right)}$$
こんなトリックです。
さて、ようやく分散分析表の数値の意味が分かりました。
記号になっているところを数値に変えていきましょう。
自由度$${\phi}$$
$${A}$$は4水準ありますから、
$${{\phi}_A=4-1=3}$$
全データの自由度は12データありますから、
$${{\phi}_T=12-1=11}$$
誤差の自由度は、全データの自由度$${{\phi}_T}$$から$${A}$$の自由度$${{\phi}_A}$$を引いて、
$${{\phi}_E={\phi}_T-{\phi}_A=11-3=8}$$
平均平方$${V}$$は、平方和$${S}$$を自由度$${\phi}$$で割ります。
$${V_A=\cfrac{S_A}{{\phi}_A}=\cfrac{0.54}{3}=0.18}$$
$${V_E=\cfrac{S_E}{{\phi}_E}=\cfrac{0.16}{8}=0.02}$$
分散比$${F_0}$$は、平均平方$${V_A,V_E}$$の比です。
$${F_0=\cfrac{V_A}{V_E}=\cfrac{0.18}{0.02}=9.00}$$ ー (38)
ここで要因$${A}$$が、この結果に影響を及ぼしていると言えるのかどうかを判断します。この分散比$${F_0}$$に注目します。要因$${A}$$の平均平方$${V_A}$$は水準間の差があるほど大きくなります。つまり、条件(水準)が異なると、結果に違いがある、指標になります。
$${V_E}$$は、水準内のばらつきを示しますから、同一条件でのばらつきの大きさの指標になります。これが大きいと、水準間の平均値が異なっていても、単なるばらつきの範囲とみなされやすくなります。
$${F_0=\cfrac{V_A}{V_E}}$$ ですから、$${F_0}$$が大きいほど、$${A}$$要因の影響は大きいと言えます。そこでF表を見ます。$${F_0}$$を計算したときの分子の自由度は$${{\phi}_A=3}$$、分母の自由度は$${{\phi}_E=8}$$でしたから、$${{\phi}_1=3,{\phi}_2=8}$$の交点を探します。
上段が$${F(3,8 ; 0.05)=4.07}$$
下段が$${F(3,8 ; 0.01)=7.59}$$
比較すると、
$${F_0(9.00){\gt}4.07}$$ ー 有意である ー (39)
$${F_0(9.00){\gt}7.59}$$ ー 高度に有意である
と言えます。
問題では有意水準を示していませんでしたが、0.01においても有意でしたので「有意である」の選択としました。
$${A_1}$$の母平均を信頼率95%で区間推定を行います。おおざっぱにいえば、実験結果から考えたとき、実際の結果はこれくらいの下限〜上限になるを計算します。問題文中に式が示されていないので、知らないと計算できません。
・結果をピンポイントで推定します。実験結果の平均値です。
$${\overline{x_1}=\cfrac{5.8}{3}=1.93}$$
・t表で、$${t({\phi}_E,0.05)}$$を探します。
$${t({\phi}_E,0.05)=2.306}$$
その水準の繰り返し数nを見ます。
n=3
・信頼限界を計算します。
$${\overline{x_i}{\pm}t\left({\phi}_E,{\alpha}\right)\sqrt{\cfrac{V_E}{n}}=1.93{\pm}2.306\sqrt{\cfrac{0.02}{3}}}$$
$${=1.74 〜 2.12}$$ ー (40)
となります。計算機の使い方も練習しましょう。
この問題の場合、最後の式をしっかり覚えていなくても、区間推定の理屈が分かっていれば、選択肢の中から正答を見つけ出すことが出来ます。
この計算方法は、$${\overline{x}{\pm}a}$$ の形になります。
だから指定した水準の平均値と、選択肢の下限〜上限の中心値が一致すれば、それが正解となります。一致するものは「カ」しかないので、それを選ぶことが出来ます。もし幅だけ違っていたら厳しいですが、絞ることは出来そうです。ずるいけど、覚えておきましょう😅
もちろん、実務では都合よく選択肢はありませんから、自分で計算しましょう。または、エクセルなどの表計算ソフトで計算してくれるかもしれません。その方法も調べておきましょう。
表示の都合で必要な付表しか提示していませんが、試験ではいろんな表がありますので、どれを使うのか、練習して身につけましょう。
ではー。