#Autumn 2024-1
夏競馬がどうの、といってるうちに秋競馬の季節がやってきてしまった。
暑さからすればまだ夏の空気だが、ネットの”今週の注目レース”欄に
”ローズステークス”の文字を見た途端、周りの景色が一気にセピア
がかった赤茶系の色合いになる。
9月15日(日曜日)、中京競馬場のメイン、11レースで今年のローズ
ステークスが行われた。
例年であれば阪神競馬場で施行されるが、今年は改築工事中という事で
久しぶりに中京競馬場での施行となった。
(誰の金で改築してんだ?待っとれよ、JRA!)
そのレースビデオを昨日から何回となく見直している。
9月最終週の”スプリンターズステークス”からいよいよ秋のGⅠ戦線が
始まるが、その第2弾として、10月2週目に牝馬クラシック3冠の最終章、
”秋華賞”が行われる。
牡馬のクラシック3冠が、
”皐月賞”(4月)、”ダービー”(5月)、”菊花賞”(10月)、
そして牝馬クラシック3冠が、
”桜花賞”(4月)、”オークス”(5月)、”秋華賞”(10月)。
クラシックとは、馬齢3歳の馬たちのレースの事で、4歳以上を古馬(こば)
という。
その秋のGⅠ戦線第2弾、”秋華賞”のトライアルレースが昨日行われたローズ
ステークスで、3着までの馬に秋華賞への優先出走権が与えられる。
クイーンズウオークが勝ったそのレースのビデオを、昨日から繰り返し
見ているのだが、しかし、永島まなみ騎手とは恐ろしいジョッキーだ。
正直この人が、自分が有力だと思う馬以外の馬に乗るレースで馬券は
買いたくない。
(有力だと思った馬は来ぇへんし、そもそもお前今馬券買う金無いやんけ、という話は置いといて・・・)
2002年生まれの22歳、初騎乗が2021年3月6日の小倉2R(16頭中4着)、
デビュー4年目の女性ジョッキーである。
現時点で通算106勝、今年は28勝している。
確かJRAには女性ジョッキーは今7名いるが、その中で断トツなだけでなく、
今やトップ20人の騎手達と同等の勝負ができるジョッキーにまでなった。
今年の6月16日(日)、京都のマーメイドステークス(GⅢ)、芝の上を
気持ち良さげに走るアリスヴェルテに乗っての大逃げはまだ記憶に新しい。
あんなに小気味の良い逃げは久々に見た気がする。
16頭中4番人気だったが、まさか勝つとは思わなかった。
4コーナーを周る時のあの京都競馬場の”え?うそやろ?”というような
ざわめき、そして直線、”よっしゃ!もうそのまま行ったれ!”と言って
いるかのような歓声の中、悠々と2000mを逃げ切ったアリスヴェルテと
永島まなみ。
その直後の夏の小倉での活躍ぶりを見れば、あのレースがこの人の
ブレークスルーだった気がする。
逃げて良し、追い込んでもクビ差で差し切るという武豊みたいな芸当を
魅せる。
今年の小倉は、”また永島かよ・・・”と何度心で思わされた事か。
先ごろ来日したオーストラリアを主戦にしている女性ジョッキー
(あえて”女性”と付ける事さえはばかられる、英国出身の一流ジョッキー)
レイチェル・キング騎手のような風格さえにじみ出ている。
その永島騎手が、昨日の中京競馬場、ローズステークス、芝2000m、
スタート直後レディヴァリューの首を押しながら真っ先にハナに立った。
(うゎ・・・嫌なのが前に出よった)と思いきや、そのハナを叩いたのが
セキトバイースト、藤岡佑介騎手である。
スローペースになる、とは見ているファンも乗っているジョッキーも
誰もが思っていた事だろう。
藤岡セキトバイーストは、永島レディヴァリューのハナを叩いた後、
ぐんぐん飛ばしていきあっという間に7、8馬身の差をつけた。
永島騎手はどうしたか?
藤岡についていけば他馬を引き離しつつ2頭で競り合う形となり、
ゴール前の直線で2頭ともつぶれる可能性が高い。
ならば、かどうかはわからないが、セキトバイーストを行かせ、
自分は2番手に控えた。
これが結局、最後までセキトバイーストを生かす事に繋がったのだが、
自分が犠牲になって、というつもりは永島騎手はさらさらなかった、
と私には思える。
大逃げを先にうたれ、2番手に控える形となった場合、普通は先頭に
大逃げの馬、間が開いて2番手の馬、そしてまた少し間が開いて後続の
馬群が続く、といった形になる事が多い。
いわゆる、先頭からポツン、ポツンと1頭づついて、その2頭の後ろに
また少しの間があって後続馬たち、というのが私の印象なのだが、
永島騎手は2番目のポツンにはせず、後ろの馬群を引き付けにかかった。
(何という・・オッソろしいクソ度胸だ・・・)
と私は思った。
少しの間、藤岡を追いかけようとしていたように見える永島騎手だが、
向こう正面半分まで行ったあたりから、藤岡セキトバイースト1頭が
遥か先を走り、あとにその他の馬が続く、という形にし、その先頭で
他馬を引き付けにかかったのである。
私にはそれは普通はやらない戦い方に見えた。
そんな事をすればレースの利が藤岡セキトバイーストに全部いってしまい、
2番手以降の馬全てが不利になる。
当然3番手以降の騎手からは、”おい!まなみ!何してる?追いかけろ!
藤岡を楽に行かせて勝たせるつもりか?”と憎悪にも似た檄が重圧として
のしかかってくる。
”それなら先輩方がおやり下さい、道は譲りますから、お先にどうぞ”と
永島騎手が思っていたかどうかはわからない。
(恐らく、天然系の彼女はそんな事は1ミリも思ってなくて、ただ自分の
馬がどう乗ったら勝てるかだけを考えていたのではないか、と私は思う)
藤岡の馬を生かす事が、自分の馬、レディヴァリューを生かす事だ、と
瞬時に永島騎手は直感したのではないか、と私は思った。
後続からのプレッシャーを受けながら、藤岡に大逃げを打たせたまま、
2番手でその後続を、精神的重圧ごと引き付けながらレディヴァリューは
4コーナー、他馬に並ばれかけつつ内側の利で周って先頭で直線に入り、
永島騎手が後続の2頭に並ばれながら満を持して追い出すと、
レディヴァリューがその2頭からまた頭一つ抜き出る。
その瞬間、背中に悪寒が走った。
(まさか・・あの展開から優先出走圏内の2着に・・
残すってのか?・・)
坂を超えたところ残り200mまで。
レディヴァリューは頑張った。
2番手に抑えながら、最後、1着から0.5秒差の6着に残したのである。
出走権にも届かず、掲示板にも乗らなかったが、あのレース展開で
6着はすごい、と思う。
藤岡セキトバイーストは3着となり、秋華賞へのキップを手にした。
ゴール前の直線、1着になったクイーンズウオークも、1番人気の
レガレイラの事も私は見ていなかった。
(※いつもながらピンボケのトップ画像
先頭のゼッケン2番が勝ったクイーンズウオーク、画像左端の方、
上下真ん中あたり、青い帽子が永島まなみ騎手とレディヴァリュー。
ゼッケン4番と5番の向こう側緑の帽子が藤岡セキトバイースト。
画像一番左端、半分で切れているピンクの帽子が一番人気、レガレイラ)
レガレイラはレディヴァリューと同じ1着から0.5秒差の5着、上り3ハロン
33.1秒は全出走馬中1位だが、あのスローペースを最後方ですすみ、
そこから直線に入って悠々と追い出したのでは、32秒台でも
届くわけがない。
単勝1.7倍という断トツの1番人気を背負いながら、いかにもトライアル用
の走りで馬体ならししました、というようなその乗り方から、鞍上の
フランス人の、日本競馬界における地位の安泰ぶりがうかがえた。
勝ったクイーンズウオークの上がり3ハロンは、全出走馬中2位の33.5秒だが
中団前目から行ってなら、この上がりがこの馬の精一杯といったところ
だと思える。
全ラップを見ると、後半5ハロンが12.1-11.9-11.9-11.8-11.9。
高低差3.5mほどの上り坂の後、200m走ってゴールとなる中京競馬場
の最後の直線412.5メートルらしい平均的なラップタイムから、
スローから直線に入ってよーいドンの競馬だった事が察せられる。
ん?
という事はクイーンズウオークはいつも通りの走りをしただけで、本番
(秋華賞)に向けてのどこまでロングスパートできるかは試走しなかった
って事・・・だよな?
後半の脚はそこそこ切れるが、レガレイラほど切れないし、切れが身上、
という馬でもない。
ならば本番、この馬が勝つにはレース中盤からのロングスパートしか
あるまい、と思ったのだが。
今回、ローズステークスに勝った事で人気するだろうが、本番でこの馬、
”勝ち”はなくね?・・と思った。