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#Autumn 2024-4

(そうか!!・・・そうだった!・・そうだよな!お前だよな!)

9月29日、日曜日、曇空からは幾分小雨が散らつくような中山競馬場、
第58回スプリンターズ・ステークス(GⅠ)、芝1200m。

最後の直線、恐らく先頭でゴールを駆け抜けるルガルの脚が、ぐんぐん
伸びて2番手以下が決して追いつけないであろう瞬間を観ながら、
心の中でそう叫んでいた。

叫びは(しまったぁあああ!お前を忘れていたぁあ!)という思いが
多分に含まれていたからだが、馬券を買っていなくても、自分の
予想と現実がどこまで嚙み合っているかは重要である。

全くのノーマークというのは、自分が現実に一切コミットしていない、
という事で、それ専門の係なのに事が起こった時、席を外していて他
の誰かがコトに当たり、自分は現場にいなかった、みたいな、
で、戻ってみたら事は全部終わっていた、という(俺・・何の為に存在
してンの?)といったあの感じに似ている。

約半年前の3月24日、日曜日、中京競馬場、第54回高松宮記念(GⅠ)、
芝1200m、3.4倍の1番人気はルガルと西村淳也騎手。
2番人気のナムラクレアが5.4倍だから結構な評価をされていた。

無事だったなら、恐らく評価通りになったのではないか、と思わされ
もするが、残念ながらルガルはレース中骨折してしまい、勝ったのは
9.6倍の6番人気マッドクールで、アタマ差の2着にナムラクレア、
1着馬から1.2秒離された10着にルガルは敗れている。

あれから半年、7年目GⅠレースへの挑戦は24度目だという西村騎手の
心中は、この時の蹉跌の中にあり続けたのではないか、と想像する。

さ‐てつ【×蹉×跌】
[名](スル)《つまずく意から》物事がうまく進まず、しくじること。
挫折。失敗。「計画に蹉跌をきたす」「事業が蹉跌する」
[類語]失敗・不首尾・挫折・破綻(はたん)・頓挫・立ち往生・
行き詰まる・壁に突き当たる・暗礁に乗り上げる・けちがつく・行き悩む・お先真っ暗・前途多難・前途遼遠・八方塞がり・絶体絶命・剣が峰・九死・危機一髪・袋の鼠・抜き差しならない・のっぴきならない・
にっちもさっちも・進退維谷これきわまる・動きが取れない・切羽詰まる

コトバンクより

今年、3月24日の高松宮記念、最後の直線、途中まで西村騎手はルガルを
追っている。
先頭まで3、4馬身、7、8番手といった所、小雨降る中京競馬場、重馬場
となっていた直線の坂を、西村騎手は目一杯追っていた。
だが坂を越えた後少しして、直線残り150mあたりとなったところで追う
手を緩めているように見える。

何らかの異変を感じ取ったのかどうか、それはわからない。
ルガルの骨折が判明したのはレースが終わった後。
この時、西村騎手の心中には(なぜ気づいてやれなかったのか?)という
思いがあったのかも知れない。
骨折している馬を、坂越えからゴール150m手前ぐらいまで目一杯追って
しまった・・・そんな思いがあったかどうかはわからない。
全部私の妄想である。

今回のスプリンターズ・ステークスで7年目、初のGⅠ制覇を遂げた
テレビインタビュー、
「高松宮記念で関係者の方々にたくさんの迷惑をかけた」
「関係者の皆さんが一丸となって馬を作ってくれた」
「馬にも迷惑をかけた」
と涙を浮かべながら何度も口にする西村騎手を観ていると、
そう思えてくる。

テレビインタビューに答える西村淳也騎手

トップ画像、ゴールの瞬間、騎手が馬に頭を下げているように見える。
そして鞭を持って強く握りしめた左手を何度か上下に振った。
その後は、馬上、手が何度も顔と手綱を往復した。
目を拭う手の動きが止まらなかった。
その姿にかぶさる中山に集った観客からの”淳也コール”。
歓声に応えて挙げた右手を、また目の所に持っていく西村騎手。
GⅠレースのゴール後、騎手が感情を表す場面は数多いが、こんなに
何回も顔をぬぐう騎手は見た事がない。

ゴール直後、既に目をぬぐっている西村騎手

(この男はついている・・)
と思った。

高松宮記念のレース後、主戦を降ろされても不思議はない。
だが、インタビューで西村騎手が『こんな僕をまた乗せてくれた』と
語っているように、骨折明けからの復帰のこのレースで、ルガルへの
再騎乗となっている。

彼のインタビューで、下記の部分が印象に残った。

『感謝を伝えたい人は、いらっしゃいますか?』
『もうホントまぁ・・まずは・・母親ですかね・・まぁ、僕ひ・・
女手一つで僕を育ててくれましたし、そして・・ほんとぉ・・
僕騎手なってから・・たくさんの方に、支えられて、ここまで
これましたし、そして、まぁ、馬にも、一杯迷惑かけたり・・
しましたし・・ほんと・・感謝する人、一杯いますね・・』

西村騎手へのテレビインタビューの一部

訥々と答える西村騎手の口から、感謝すべき人として真っ先に”母親”が
挙がった事が印象に残った。

”人柄”であろう、と何となく思う。
”こいつを何とかしてやりたい”と周りに思わせる行動と言動を、西村騎手
は極めて自然に普段から何気なくしたり、言ったりしているのではないか。
そんな風に思えた。

”運とは、人が運んでくるものである”という言葉を何かで読んだ記憶が
ある。

この男は”ついている”。

馬券を購入される方々は、今後、買う対象から切る馬の騎手欄に、
この男の名前があった場合、一度再考してみる事をお勧めする。

西村淳也騎手、25歳。
2018年、3月3日、阪神競馬場第1レース、マエガミでデビュー。
12頭中、9着。
初勝利は同年3月31日、阪神競馬場第6レース、ティーブラッサム。

現時点で騎乗回数4512回、通算385勝、今年68勝。
現在、リーディング9位。

ルガルとは、シュメール語で”王”という意味。

次の騎手界の王に、この男はなるかも知れない。
(性格は多分、ルフィとは真逆だと思うが)

ゴール板を過ぎた瞬間、上下させる強く鞭を握りしめた左拳に万感の想いがこもる西村騎手。
その横(奥側)笑顔で西村騎手に何か言葉をかけているのは2着トウシンマカオの菅原明良騎手。
自身、今年の宝塚記念、ブローザホーンでGⅠ初制覇、2019年デビュー、西村騎手の1年後輩。
現在西村騎手68勝でリーディング9位、菅原騎手49勝で13位。
ルガルは、(どこやねん?ここ?)という顔に見える。

上記の写真、手前側馬番5番(切れていてわかりづらいが)は
3着のナムラクレア・・・3着?・・先の高松宮記念2着で
またも惜しいって?・・聞き飽きたわ、惜しいちゅう言葉!
鞍上は、斜行で騎乗停止となっている主戦、浜中俊騎手に変わって
誰が乗っていると思います?

ちなみに今回のスプリングステークス、影の主役というかレースの
立役者は、レース前半3ハロンを11.8-9.9-10.4という(9.9って何?)
異次元のロケットダッシュで超ハイペースを演出し、最後8着となった
ピューロマジック、鞍上は今年のダービージョッキー横山典弘騎手。

その息子ですわ、ナムラクレアの鞍上・・・。
武史さんさぁ・・・上がり3ハロン全出走馬中第1位、最速の33.2秒で
ルガルから0.1秒差・・・で3着ですか?・・また大外ぶん回してましたが。
前半の位置取り・・・2800文字超えとるがな。
これについては、後日、機会あらばという事で。

これだけ書かせてください。

ルガルに比べてナムラクレアよ・・・ホンマにあんたに無いのは運だけ
やなぁ?な?腐らんと。来年の高松宮、獲り行こうや?な?
ホンマやったらもうGⅠ2勝ぐらいしとったはずやのに。
主戦の浜中はんだけ神戸新聞杯のメイショウタバルで報われとっても
あんたが報われん事にはどないもならんがな、なぁ?

そんなわけで次のGⅠレースは、10月13日、日曜日の秋華賞まで
無しだが、馬は走る。私も無い智恵を絞る為、血の巡りをよくする
ストレッチに余念があってはなるまい。

(ところでレガレイラ、秋華賞回避やてなぁ?
ホンマえぇ加減にしとけよ?ほなローズステークスはエリ女の調教
やったちゅうんかい?舐めすぎやで?
馬主のサンデーレーシングさん?)

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