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針を持つ


いつの日か祖母が私にぴったりなサイズのベストを編んでくれたことがあった。
渋い赤とピンクと黄色と余り糸を上手く繋げて作られたものだった。

祖母の手から作られたものが大きな服だったことに私は感動した。
服が作れるものなんだ。針と糸で作られた「編み物」は私の編むことに対するはじめての感動だった。

編むことに興味の湧いた私は祖母に簡単な編み物を教えて貰った。
それが棒針編みだった。

私はいわゆる「ぎっちょ」だ。
「棒針も右で編んでいくからやりにくいやろうけど針を持てへんかったらどっかに置いて糸を持ちぃ」と告げられた。

ぎっちょの私の宿命である。

初めましてなことをする時、左利きの私は全部左ではしない。
やりやすいと感じた方でやる。
マイルールがその頃からあった。

鉛筆は保育園に入る頃に矯正して右で書いていたが、力のいることはやはりぎっちょのため、左が強い。
ハサミや消しゴム、ラケット系のスポーツは左だったが、幼い頃ドッチボール大会に出るために地域の友達と猛特訓したボール投げやバスケのドリブルは何故か右だ。

なのでぎっちょの私はどっちでもすることにある意味慣れていて抵抗はなかった。
使える方使ったらええねん。
棒針編みもそういう気持ちで右で針を持つことにしたのだ。

これが私の棒針編み人生のスタートである。

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