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上田知華さん永遠に…

【私の音楽履歴書】#11 上田知華

今から約2か月前の4月27日、ある音楽家の訃報が届いた。
その人の名は上田知華。
昨年の9月にお亡くなりになっていたという。享年64、膵臓がんとのことらしい。
ここに、あらためて御冥福をお祈り申し上げます。


今回はその上田知華を取り上げたい。
私が彼女を知ったのは、上田知華+KARYOBINとしてテレビの音楽番組でみた「パープルモンスーン」が最初であったと記憶する。その後、倉田まり子に「さよならレイニーステーション」を提供。
当時は、東京音大在学中の“お嬢様”が音楽活動を行っている…くらいの認識でしかなかった。東京音大といえば、その後ピアニスト、俳優として松下奈緒が活躍することになるがそれはまた別の話。
あらためて彼女の名を訊くのは、今井美樹への作曲家としての楽曲提供である。


薬師丸ひろ子

私が主に女優活動をしている人の中で、歌が上手いなぁと思わず唸ったのは、今までに二人いる。
薬師丸ひろ子と今井美樹である。
薬師丸ひろ子は81年の映画「セーラー服と機関銃」の同タイトル主題歌を発表した。その伸びやかな歌声には驚いた。
その後「探偵物語」(松本隆/大瀧詠一/83) 「Woman “Wの悲劇”より」(松本隆/呉田軽穂/84) 「元気を出して」(竹内まりや/84) などをリリースしている。
その薬師丸にも上田は何曲か楽曲を提供している。

通算16枚目のシングル曲「風に乗って」(作詞 作曲/上田知華/91)

今井美樹

今井美樹については、88年3月発売の3rdシングル「静かにきたソリチュード」(戸沢暢美/中崎英也) で意識するようになったと思う。
上田は同年6月の アルバム『Be with』で二曲、作曲者として提供している。
8月には資生堂のキャンペーンCM曲にもなった4thシングル「彼女とTIP ON DUO」(作詞 秋元康)も提供する。


そして今井自身の歌手活動の方向性を決定づけ、固めたのが89年11月「瞳がほほえむから」91年11月「PIECE OF MY WISH」(共に作詞 岩里祐穂) の二曲だろう。言うまでもなく今も彼女を代表する曲である。

ヴァンサンカン·結婚〜I WILL

91年7月から9月にかけて、CX系列で安田成美主演のドラマ『ヴァンサンカン·結婚』が放送された。上司(小林稔侍)との離れるに離れられない関係に、当時は若干イライラしながら観ていた記憶がある。

そのドラマ主題歌が上田知華自身による「I WILL」だった。洗練された歌声とメロディー、アレンジに一気に魅せられた。

『I WILL』(91.9/10)

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このアルバムの収録曲「COLORS」が私にとっての上田知華のベスト曲だ。アレンジが当時のサウンドのトレンドを押さえていた。

Oh no… 続けて もっと続けて 愛していたらあの日
きっと 今も 二人でいられたはず
冷えた水を体に浴びて太陽を待つ 
                                                 (作詞 作曲 上田知華)



『朝·昼·夜·晴れ』(92.11/10)

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『いつも2人で』(94.7/1)

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この三作はいずれもCD見開き紙ジャケットデジトレイ仕様でデザインも凝った作りだった。この三部作ともいえるアルバムが私にとっての上田知華ベスト3である。


その後、結婚 渡米により一時音楽シーンから離れていたが、約5年ぶりにアルバム『La La La』(99.3/20) を発表する。

NTTのキャンペーン曲となった「あおうか」の様な落ち着いた曲や、この「Oranges」のようにリズムアレンジを重視した曲などで構成されていた。これ以降、数枚のベストアルバムなどが発売はされたが、オリジナルアルバムは発表されることはなかった。


さよなら上田知華さん

良い作品が必ずしも商業的に成功するとは限らないのが、芸術、芸能の世界の常である。
素晴らしい作品を発表し、提供してきた上田知華は時代の波に乗り続けることは出来なかったかも知れない。
そして今にして思えば、健康面での不安もかかえていたのかも知れない。
しかし、瑞々しいほどの数々の作品を彼女は遺していった。
そして私は彼女の作品をこれからも聴き続けることになるだろう。



                            №17

【追記】

数年前、今井美樹が松任谷由実のカバーアルバムを出した。選曲をみて彼女のユーミンへの思いは十分に伝わった。と、同時にあなたの音楽活動の礎は、ユーミンでもあろうし、布袋寅泰でもあろう。しかし、誰より上田知華を除いては成立しないよ…との思いも強く持ったものだ。何らかの機会で彼女についてあらためて取り上げて欲しいと願っている。

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