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『女王陛下のピチカート・ファイヴ』 ピチカート・ファイヴ

【私の音楽履歴書】 
#41 田島貴男とピチカート・ファイヴ


私が推しているグループ櫻坂46が、19日『櫻坂46メンバーが選ぶ秋に聴きたい曲』としてプレイリストをSpotifyにて公開した。

先のマガジン#38大貫妙子でも、同様に櫻坂46メンバー藤吉夏鈴のプレイリストから稿を進めている。

今回のリストには櫻坂46メンバーの一人、山﨑天が上げている一曲にOriginal Love (オリジナル・ラブ) の『接吻』があった。
しかし、こりゃまた随分とシブいねぇ…

Original Loveは田島貴男を中心として結成されたバンドで、現在は実質彼のソロプロジェクトとなっている。
その、田島貴男はバンド活動初期に、その活動と並行してピチカート・ファイヴのボーカリストとして招聘された時期があった。
ピチカート・ファイヴは、後に田島が去った後に加わった野宮真貴とピチカートのフロントマン小西康陽のユニット時代に有名となったグループと言ってもよかった。
ちなみに、野宮真貴がかつて在籍していたポータブル・ロックは、マガジン#15ポータブル・ロックで取り上げている。

そして私個人は、田島貴男や高浪慶太郎が在籍していた時期に発売された3rdアルバムの『女王陛下のピチカート・ファイヴ -On Her Majesty's Request-』(89.07.21)が特に好きであった。

『女王陛下のピチカート・ファイヴ』

小西康陽 (Ba.Kb.Gt.Vo)
高浪慶太郎 (Gt.Kb.Vo)
田島貴男 (Vo.Gt)


この3rdアルバムを語る前に触れなければならないのは、一つ前の2ndアルバム『Bellissima!』(88.09.21)だ。
田島貴男がピチカートに参加して始めての作品だが、この2nd〜3rdの流れが私にとってのピチカート・ファイヴだった。

『Bellissima!』

誘惑について

『Bellissima!』の二曲目。
やはり田島の声が若い。
しかし、この一曲だけでもその才能の片鱗は十分感じさせる。
下世話さの希薄なエロティシズムと言うか絶妙な色気がある。


新ベリッシマ

朝 眼を覚ますと U2な気分
シャワーを浴びたら 忘れちゃうけどね

時間をかけて ネクタイを選ぶ
鏡の中のありふれた男

オフィスから 彼女に電話をかける
きみとは どうしてさよならできるかな

夜は僕らを悲しくさせる
たぶん二時過ぎには 忘れちゃうけどね

遠い天国 ひどく遠い天国
遠い天国 ひどく遠い天国

『新ベリッシマ』  詞/曲 小西康陽

ルースターズ花田裕之の間奏のギターソロがこの曲の疾走感をさらに加速させている。
何とも軽薄な詞だが、このある種の生活感のなさがこのアルバムの特徴を別の意味で表しているとも思える。


恋のテレビジョン•エイジ

田島貴男と高浪慶太郎の程よい掛け合いがいい。
冒頭の「愛してる」も良き。

リップ•サービス

後のねちっこい(笑)田島のヴォーカルスタイルがわずかに垣間見える楽曲。

バナナの皮

強めに押し出してくる田島貴男のヴォーカルとは違う、軽妙な高浪慶太郎の歌声もあってこその、この頃のピチカートの絶妙なバランスだった。

衛星中継

後にピチカートのヴォーカルとして加わる野宮真貴が参加している。
田島とのデュエットは、今振り返っても何とも不思議な組み合わせだ。

夜をぶっとばせ

この楽曲はむしろOriginal Loveとしての田島貴男作品として、世に知られる形となった。
何度もリアレンジされたこの曲が田島貴男のストーリーの一つの軸となってきたのだろう。


いわゆる「渋谷系」の代表格として祀り上げられた部分も無きにしもあらずのピチカートだったが、そのサウンドスタイルには多くの毀誉褒貶もあった。
私は、そんなノイズとはお構いなしに「そんな堅いことは言わずに、それぞれに人がいいと思ってるんだったら別にそれでいいじゃん」と割り切っていた。
そのスタンスは今も変わらない。



⚫スクランブル

田島貴男関連でもう一曲だけ。

Original Loveメジャー二枚目のアルバム『結晶』(92.05.01)
Original Loveで、このアルバムが一番好みかなぁ〜と、私は思っている。
ピチカート時代の延長線上にあるかの、この楽曲がピチカートの名残りを感じさせる最後の作品かも…とも思える。

田島のヴォーカルスタイルを確立させた、5th『風の歌を聴け』(94.06.27)そして6th『RAINBOW RACE』(95.05.17)はそれぞれに傑作アルバムではあるけれど、そこにはかつての微妙な甘さを含んだピチカート時代の田島貴男はもういない。
当たり前と言えば当たり前の話だが…


最初に紹介した櫻坂の山﨑天がピックアップした「接吻 Kiss」は、その間の93年11月10日に通算5枚目のシングルとして発売されたものだ。


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