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『Shout』Tears For Fears


【私の音楽履歴書】 #18  Tears For Fears

今朝(12月25日)『1周回って知らない話』(NTV系)を何気なく視ていたら、番組BGMで「Tears For Fears/ ティアーズ・フォー・フィアーズ」(以下TFF) の「ルール・ザ・ワールド(Everybody Wants to Rulu the world)」が流れていた。
今でも、彼らの音楽は色んな番組のBGMによく使われている。制作会社の担当者のセレクトだとしても、それだけの普遍性があると云うことだろう。
そして、聴く度に、あの時代を懐かしく思い出したりしている。


なんとも武骨な二人組が現れたことよ…
第一印象はそんな感じだったと思う。もちろん、それだけなら特に注目はしない。当時のブリティッシュ音楽の傾向からは、余り捻りすぎていないストレートな楽曲は、意外と自分に入り込んできたものだった。

私が彼らを知ったのは、通算2枚目のアルバム『Songs From The Big Chair』(85.2.25) からである。この稿の表題の楽曲「Shout」がシングルとして発売し日本市場でも注目されてきて、この曲が含まれているアルバムを聴いてみた。構成がとても素晴らしく、もちろん個々の楽曲も瑞々しく感じられた。
それから彼らを追うようになる。

TFFは、ローランド・オーザバル (Vo.Gt.) カート・スミス (Vo.Ba) イアン・スタンリー (Key) マニー・エリアス (Dr) らで組まれたグループであったが、実質的にはローランドとカートの二人組という認識が一般的だ。
アルバムにも二人だけのジャケット写真が多い。

Songs From The Big Chair

このアルバムから何曲か紹介すると〜

Shout

The Working Hour

Everybody Wants to Rulu the World

Head Over Heels / Broken

この楽曲は資料によっては“ライブバージョン”と表記されているものもあるが、私はそれには疑問を抱いている。
当時リアタイで聴いたものからすれば、ライブ音源にしては明らかに音がクリア過ぎた。あくまで演出として、観客の歓声等を加えたアレンジだと思っている。これが彼らの手法の一つだと理解している。
この「手法」は次のアルバムでも使われるので後で紹介することとしたい。

Listen

アルバム全8曲のうち、ラスト3曲は前述した通り、ライブバージョン“風”にシームレスに構成している。
この「Listen」冒頭の歌詞〜
Mother Rossia badly burned…
など英語をよく解さない私でも、独特の表現をするなと思わせるグループだ~などの感想を持っていた。



The Seeds of Love

3rdアルバムとして『シーズ・オブ・ラブ』(The  Seeds of Love〜 89.9.25) がリリースされた。
この時点でイアンとマニーは脱退していたとされ、これ以降、暫くはローランドとカートのデュオグループとしての位置づけになっている。
本作ではフィル・コリンズやマヌ・カチェら豪華なゲストミュージシャンを迎え、これまでより厚みのあるサウンド作りをしている。

Woman in Chains

Sowing the Seeds of Love

Advice for the Young at Heart
ほろ苦き忠告の歌詞と共に、まさに青春といったメロディー…儚さを伴うアレンジが秀逸。

Year of the Knife
これも前述の通り、ライブテイストでアレンジした楽曲である。そして、この楽曲が私のTFFのベスト曲だ。ともすれば陳腐になりがちなギターアレンジがライブサウンドにすることにより、ギリギリのところで、まさに“研ぎ澄まされたナイフ”の如くのプレイとなっている。
しかし「イヤー・オブ・ザ・ナイフ」〜直訳すればナイフの時代か?これもまた魔訶可思議な歌詞であった。


さて、私がリアタイで彼らの作品を聴いていたのはこの頃までである。
その後、カート・スミスがグループを脱退し、TFFはローランド・オーザバルのソロプロジェクトとなった。グループにありがちな仲違いがあったという。

Elemental

4thアルバム『ブレイク・イット・ダウン・アゲイン』(Elemental / 93.6.7) は事実上のローランド・オーザバルのソロ作品である。それだけに、彼のこれまでのグループでの音楽的立ち位置が、逆に浮かび上がってよくわかる作品ともいえる。

Fish out of Water
邦題はなんと「陸に上がった河童君」…
袂を分かったカートのことを皮肉った作品だといわれている。
それはさておき、アレンジがとても印象的な楽曲である。


ローランドとカートは互いにソロ作品を発表していたが、2000年以降、再結成(再集結) が噂されるようになり、04年には約15年ぶりに二人組となるアルバムが発売された。(Everybody Loves A Happy Ending)
しかし、本作品は日本未発売であり、市場の現実はシビアな言い方をすれば「昔の名前で出ています」的に受け止められた部分があったのは否めようもない。
そんな状況でも、サマーソニックに来日参加するなど、地道に活動を続けてきて、今年2月25日に7thのオリジナルアルバム『ザ・ティッピング・ポイント』(The  Tipping Point) を世界同時発売とするに至った。
再結成の経緯については色々な記事があるが、そのうちの二つを紹介しておこう。

The  Tipping Point

Break The  Man

Stay
グループ初期を彷彿とさせる幽玄なナンバーで終えることとしたい。

離合集散はバンドの宿命と言ってしまえばそれまでだが、二人はもう日本でいうところの還暦を超えている。
恩讐の彼方に、酸いも甘いも噛み分けた二人が創り出してきた作品は、節目節目で今後も聴くことになるだろう。

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