『ASIA MAJOR』 DICK LEE
【私の音楽履歴書】 # 28 DICK LEE
8月9日、私が推している櫻坂46が、18〜20日にマレーシア・クアラルンプールで開催される『Japan Expo MARAYSIA 2023』に出演することが直前で発表された。先月のパリに引き続いての海外ライブである。
この激烈なスケジュールに驚くとともに、私はふと「アジア」をテーマにした音楽についてしばらく振り返っていた。
思い起こしたのは、サンディー&サンセッツの久保田麻琴とシンガポール出身のディック・リーによる一連の共同作業である。
80年代後半からワールドミュージックのムーブメントは隆盛を向かえ、当時私は、アジアに於ける二人の関わりに大いに注目していた。
その二人が1990年に互いに発表した二作品が、今なお燦然と輝き続ける名盤であると思っている。
先ずは、サンディー&サンセッツのボーカリスト、サンディーのソロアルバム『MERCY』(久保田麻琴、ディック・リー共同プロデュース) から。
このアルバムは、是非単独で紹介したいほどの名盤なんだが、いかんせんサブスク等の音源が限られていて今は難しいのが残念だ。
ここでは、ディック・リーが特に関わっている二曲を紹介したい。
MERCY
アルバムオープニング曲。ディック・リーの作品。
独特のリズムを刻みながら、サンディーのボーカルも活きている。
SAKURA
日本の童謡「さくら さくら」を久保田麻琴がアレンジし、英語のラップ、バックボーカルにディック・リーが加わっている。
久保田麻琴とサンディーは、他にも童謡や歌謡曲のカバーを何曲か取り組んで発表している。
さて、ディック・リーは1956年シンガポール生まれのアーティストである。
シンガポールの裕福な家庭で生まれ育ち、その環境からも、お金持ち特有のにじみ出るいやらしさが微塵もなく、その立ち振る舞いは「あ〜ホンマモンのええとこのお坊っちゃまなんやなぁ〜」と感嘆させるほどであった。
そんな彼を紹介するアルバムは、同じく90年発表の『ASIA MAJOR』なのだが、その前に日本での初アルバムとなった、前年89年発売の『THE MAD CHINAMAN』から同タイトル曲を先ず。
THE MAD CHINAMAN
ONE SONG
アルバムオープニング曲。同タイトル曲の『ASIA MAJOR』のメロディーをバックに、アジア各国の招待の言葉で始まっていく。
ORCHIDS FROM OUTER SPACE
COCKATOO
COCKATOOとはオウムのこと。
インドネシア民謡を原曲にアレンジし、久保田麻琴がプロデュースしていたインドネシアのメリアナとデュエットしている。
LOVERS TEARS
ディックがプロデュースしていた香港の歌手サンディ・ラム (林憶蓮) をフィーチャーした一曲。
当時は、香港も言わずもがなのアジアの中心都市で、熱く活気もあったが、今となっては…の感は時代の流れを感じずにはいられない。
JAPANESE RHUMBA
戦後の進駐軍兵士(ジェラルド F ミラー軍曹)がカタコトの日本語で作った楽曲。多くのミュージシャンにカバーされている。
SUKIYAKI
言わずと知れた坂本九の『上を向いて歩こう』のカバー。
ASIA MAJOR
彼の作品の中で一番好きな楽曲。スケールの大きさを感じる。
最後に、彼と日本の関わりについてのインタビュー記事を紹介してこの稿を終えたい。
◆ 補記 参考までに…
久保田麻琴とも親交の深い細野晴臣がアルバム『はらいそ』(78)でJAPANESE RHUMBAを(ボーカルはかまやつひろしの父親、ティーブ釜萢) を取り上げている。
そして、サンディーもアルバム『MERCY』で久保田麻琴のアレンジにより、もちろんディック・リーも参加して『SUKIYAKI』を歌っている。言わば「相互乗り入れ」か…。
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