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『Cue』 高野 寛

【私の音楽履歴書】 # 45   高野 寛


昨年11月27日に、高野寛デビュー35周年を記念したアルバム『Modern Vintage Future』が発売された。
打ち込み•シンセサイザーをベースにしながらも、彼が持つ本来のポップ•センスと、その瑞々しさを失うことなく、とても聴きやすいアルバムに仕上がっている。


85年、キャニオン・レコード(当時)内に高橋幸宏とムーンライダーズがT.E.N.Tレーベルを創設した。
高野は、彼が86年大学3年の時に、そのレーベル主催の「TENTレーベル•究極のバンドオーディション」に応募する。
バンドの各部門の合格者で「究極のバンド」を結成するという趣旨のオーディションだったらしい。
ギタリスト部門に応募し合格した高野だったが、結局、バンドを結成してプロデビューという形には至らなかった。
その後、高橋幸宏とムーンライダーズの鈴木慶一が組んだユニット「THE BEATNIKS」のツアーにギタリストとして参加するなどの活動を経て、高橋幸宏の事務所に所属となる。
そして、東芝EMIから88年10月高橋幸宏のプロデュースによる、シングル『See You Again』アルバム『hullo hulloa』でソロ•デビューすることとなる。
89年にはセルフプロデュースによる、2ndアルバム『RING』を発売するが、ここまでの活動は、いわゆる音楽マニアには高く評価されてきた。

そして、奇才アンディ・パートリッジ率いるXTCのプロデューサーとして注目されていたトッド・ラングレンをあらたにプロデューサーとして迎え、3rdアルバム『Cue』(90)を発売する。
高野がかねてから敬愛してやまないトッド・ラングレンがプロデュースした、XTCの『Skylarking』(86)は、当時私が初めて買った彼らのアルバムでもあった。

アルバム『Cue』と、それに続いて91年に発売された『AWAKENING』が彼の作品の中で、私が好きなものである。

◆ Cueから〜

虹の都へ

MIZUNOのスキーウェアのCMソングにも起用され、TVCMで頻繁に流れることとなり、オリコン2位を記録するなど彼の最大のヒットシングルとなった。

Eye to Eye

言葉には頼らず 目と目を合わせ話す時
君は笑うだろうか?

大切な「物」

物は はかなくて 人は 恋しくて
そして 今何が要る
物は はかなくて 人は 悲しくて
そして 今何を見る


◆ AWAKENINGから〜
こちらもトッド・ラングレンのプロデュース。
ニューヨーク録音。

目覚めの三月(マーチ)

6枚目シングル。
ロッテのCMソングにも起用されていた。


ベステンダンク

5枚目シングル。
「虹の都へ」に続き、この曲もMIZUNOのCMソングとなった。

こだま

この曲が彼の作品の中で私の一番好きな楽曲だ。

全編に流れるシンセサイザーが、まさに”こだま"を表しているのか…


高野は22年、彼の師でもある高橋幸宏のライブBOXセット『IT'S GONNA WORK OUT〜LIVE 82_84〜』の発売に際して、YMO〜高橋幸宏の熱烈なファンである櫻坂46のメンバー小池美波と対談している。


また高野は、自身のソングライティングだけではなく他のミュージシャンのプロデュース活動も並行して行ってきた。
その活動で最も有名なのは、ハナレグミ〜永積タカシがかつて所属していたSuper Butter Dogの、5thアルバム『grooblue』(01)のプロデュースであろう。
その中の一曲『サヨナラCOLOR』は高橋真梨子/大沢誉志幸/小泉今日子/野田洋次郎をはじめとした数多くのアーティストがカヴァーして、今でも支持されている楽曲である。


サヨナラCOLOR Super Butter Dog


また、92年にはサッポロビール冬物語のTVCFソングとしてオリジナル・ラブの田島貴男とユニットを組んでいる。

Winter's Tale〜冬物語〜 高野寛&田島貴男



冒頭で触れた高野の最新アルバム〜
『Modern Vintage Future』に戻り、その中から2曲を取り上げたい。

青い鳥飛んだ

青い鳥飛んだ どこにいった?
「火星の果てまで」と誰か言ってた
青い鳥飛んだ どこに消えた?
✕印が 跡に残った

何を歌っているか、もうお判りだろう…
もう何も言うまい〜の、彼らしい切り口だ。

⚪ 僕ら、バラバラ

この楽曲(MV)については、ご本人の言葉をそのまま紹介したい。




『Cue』の歌詞ブックレットの見開き扉には〜

──'80年代、そして'90年代に捧ぐ

と、ある。
2025年の初頭、長く音楽に携わってきた高野寛の歩みを振り返ってみた。

還暦を迎えた彼は、純朴そうな青年が、その実、骨のある(こだわりのある)音楽スタイルを貫いてきた、そのままの活動を今も続けている。

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