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『Q.T』ポータブル・ロック
【私の音楽履歴書】 #15 ポータブル・ロック
ピチカート・ファイヴに野宮真貴というボーカリストがいた。ただ私は彼女がグループに加わる前の初期のピチカートが好きではある。
そして今回はピチカート・ファイヴを取り上げる訳ではない。その野宮真貴がそれ以前に在籍していたポータブル・ロックについて取り上げたい。
ポータブル・ロックは、野宮(Vo)と鈴木智文(G)、中原信雄(B)の3人で主に活動してきた。このグループでの野宮の歌声がむしろ私は気に入っている。
デビュー以前の83年、鈴木慶一の湾岸スタジオにて録音された当時の音源が、90年9月『ビギニングス』というアルバム作品として日の目を見た。何とも初々しく瑞々しい野宮の歌声と作品である。
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「ピクニック」
「真珠海岸」
そしてその後、ムーンライダーズの鈴木慶一主宰の「水族館」レーベルから興味深い二枚のアルバムが出た。
(時系列としてはこれが世に初めて出た作品となる) 83年の『陽気な若き水族館員たち』と、84年の『陽気な若き博物館員たち』である。
新人グループによるオムニバス形式のアルバムは新鮮な驚きを持って聴いたのを覚えている。
ポータブル・ロックは先の『陽気な若き水族館員たち』に参加していた。前述した『ビギニングス』収録時の作品から二曲がリマスターした形で収められた。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/87513032/picture_pc_b20b3bd236e79ca33b994d3c12a63b21.jpg)
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/87513052/picture_pc_6a5502c50734b827b462b41a17d288cc.jpg)
「グリーンブックス」
「クリケット」
この二作品で私は彼らを知ることになったわけだが、85年11月に待望のデビューアルバム『Q.T』が発売されることになった。
二作品の延長線上にある楽曲がより洗練された形で、アルバムとして集約されており、構成も素晴らしくて当時は何度も聴き直したものだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1663973997140-tsdLcLKLlX.jpg?width=1200)
「アイドル」
「B.B」
「Tu Tu」
「夏の日々」
翌86年にシングルとして「春して、恋して、見つめて、キスして」が発売される。コーセーのCM曲でもあったのだが、そのための制約があったのかどうか、私には「置きにいった」作品との印象が強かった。
当然、一定の注目はされたのだがセールスに結びついたとも言えなかった。
後にピチカート・ファイヴとして93年に「スィートソウルレビュー」がカネボウのCMタイアップ曲となったのだが、同様の印象を持ったのは少々皮肉な話でもある。
87年6月にアルバム『ダンス・ボランティア』が発売される。ただ、当然と言えば当然なんだが、デビュー当時のいい意味でのアマチュアっぽさが抜けて、洗練されすぎてしまった作品となってしまったなぁ…との思いがあった。いいんだけどワクワクしないと言うか…
今、聴き直すと「この頃からピチカート・ファイヴとそんなに変わらなかったな…」という、いささか乱暴な感想さえ持ってしまう。当時、野宮はピチカート・ファイヴの作品にゲスト参加はしていたが、結果的に加入することとなったのはある意味必然であったのだろう。
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「キュートな事情」
その後は、野宮真貴がピチカート・ファイヴで活躍し、解散後は、ソロとして時にテレビの歌番組に出演したりとポータブル・ロックとしては自然消滅した形となっていると認識していたのだが、春先に驚くべきニュースが飛びこんできた。22年5月に新曲を加えたベストアルバムを発売する(した)という。
またしても化粧品メーカーとのタイアップには苦笑いだが、ここまでくれば余裕でみていられる。それだけ注目と需要がある証でもあるし。
既に還暦を超えた三人が、こうして活動出来るのはとても素敵なことだ。
今あらためて彼らの作品を聴き返してその思いを強くした。