【Her Odyssey】18日目
『ハートの2』
山道をしばらく行くと、様相は一変した。
道が歩きやすくなったのだ。石畳などで舗装されているわけではないが、それでも明らかに人の手が入っている。
気になって確認してみると、道の両端には広く田園が作られているようだった。
そうしてさらに歩いて行くと、人の気配も感じるようになる。
「やあ、旅人さんかい? 珍しいね」
「こんにちは。ええ、ちょっと砂漠の方から」
優しげな声に、ボクも挨拶を返す。どうやらこのあたりに住んでいる農民だそうだ。
彼らは旅の話をするととても喜んでくれて、今夜は一泊させてくれることになった。
ありがたさを噛みしめながら、キィ君と共にベッドで休む。
翌日は、お礼に少しだけ農作業を手伝わせてもらった。
これは思ったより上手くいったし、習いながら稲穂を刈るのは存外楽しかった。
「こりゃあ、もう暫く居てくれても良いがね」
なんて口々に言ってくれたのが嬉しくて少し困ってしまったけど。
でも、もう行かなきゃ。ボクはまだ故郷を目指す旅の途中なのだから。