【Her Odyssey】24日目
『クローバーの3』
廃墟の探索ばかりしているわけにもいかない。
ボクは渋々ながら旅に戻ることにする。
調べた感じ、子供の病気の手がかりになるとも思いにくかった。これは今後の課題にしておくのがいいかもしれないと思う。
キィ君となだらかな道を歩く。途中、ふいに声を掛けられた。
声の主はどうやらボクと同じ旅人であるらしく、怪我をしてしまって動けなくなっているようだった。
彼は「薬を少し分けて欲しい」と言ったが、心配なので傷の方も診ることにする。
怪我はたしかに酷くはあったが、幸いにも治療が難しい類いのものではなかった。ボクが慣れた手順で治療を行うと、旅人はすごく喜んでくれた。
「お代に払える金銭がないのですが、代わりにこれを持って行ってください。売れば幾らかにはなるはずです」
旅人はボクにそう言って、大振りなブローチを一つくれた。
別に良いのに……とも思ったが、ありがたく頂いておく。先行きの見えにくいこの旅で、路銀は命を繋ぐものでもある。
旅人と別れ、ボク達はさらに先を急ぐ。吹いてくる風から、微かに潮の香りがした。
なるほど。もうすぐ海へと出るようだ。