【Her Odyssey】21日目
『ダイヤのクイーン』
引き続き今日も廃墟の探索をすることにした。
城らしき建造物の壁などを触れ、指先で装飾をなぞる。そうしてわかる施された紋様は、だいぶ古いもののようだ。一体いつ頃に作られたものなのだろう。
そうしていると足下がぐらりと不安定になり、ボクは大きく体勢を崩した。
杖を片手によくよく気をつけていたはずなのだけど、ボクの乗った重さで老朽化した床が崩れたのだろうか。一気に崩れ、ボクは奈落へと落ちそうになる。
慌てて体勢を建て直し、ボクは瓦礫を足場に跳躍した。見えないけれど、崩れた床の縁を掴むため精一杯に腕を伸ばす。しかし──ボクの手は空を切ってしまった。何も掴めない指を握りしめたまま、ボクはただ下方へと落下する。
「──キィ君! そこで待ってて!」
ボクは叫ぶ。声は幾重にも反響して、それが落ちた穴の深さを物語っていた。
キィ君には届いただろうか。大丈夫、必ずそこまで戻るから。