【Her Odyssey】22日目
『ハートの7』
「あいたたたた……」
打った腰をさすりながら、ボクはよろよろと立ち上がる。身体はなんとか無事のようで、多少の切り傷はあれど問題はなさそうだ。
落ちた先はかなり広い空間だった。足下の瓦礫を除けば、基本的には障害物はなく歩きやすい。
周囲に気をつけながらとりあえず進むと、壁に突き当たる。今度は壁を伝って、さらに歩き続ける。
すると、装飾が綿密に施された大きな扉を見つけた。両扉で、中央に鍵穴のようなものがある。『ようなもの』としたのは、少々特殊な形をしていたからに他ならない。
その穴の形には覚えがあった。そう、以前に手に入れたロケットペンダントの形と同じだ。
恐る恐る、首に提げていたペンダントを取って穴に押し込んでみる。思っていたとおりに、それはぴったりと収まった。カチリ、と何かが動く音がする。次いでギギギギギ、と扉の内部で歯車が回るような音。
使い方は間違っていなかったようだ。……でも、どうして?
ボクが首を傾げている間に、軋むように鳴っていた駆動音が鳴り止んだ。そっと扉を押せば、呆気ない軽さで開かれてしまう。
進んだ先には登り階段があった。これが地上まで続いていれば言うことはないが、今はとにかく歩いてみるしかないみたいだ。