心房細動アブレーション後の残存機能性僧帽弁逆流
抄録 心房細動(AF)と低下した左室(LV)駆出率を有する患者において、機能性僧帽弁逆流(FMR)は予後に悪影響を及ぼす。AFアブレーション後の構造的逆リモデリングがFMRの重症度を減少させる可能性があるが、FMRの予後への影響とその進行は未だ明確ではない。本研究では、初回AFアブレーションを受けた基礎LVEF<50%の491名の患者を対象に、FMRの改善に寄与する因子と長期臨床成績への影響を分析した。
背景 心房細動によるLVの逆リモデリングがFMRの改善にどのように関連しているかは、これまで十分には評価されていなかった。この研究は、AFアブレーションがFMRの重症度を変化させるかどうか、そしてその臨床的意義を探ることを目的としている。
方法 本研究は、2012年1月から2021年9月までに初めてCAを受けた4122名の患者を対象に、後ろ向きに単一センターで行われた。FMRの重症度は、基線およびAFアブレーション後6ヶ月にトランス胸壁心エコーで半定量的に評価された。
結果 基線時にFMRグレード2~4を有していた134名のうち88名(66%)が、AFアブレーション後6ヶ月でグレード0~1に改善した。逆に、基線時にグレード0~1だった357名のうち13名(3.6%)が、グレード2~4に悪化した。多変量解析により、左房の空洞分数の増加とLV末期拡張容量指数の減少がFMR改善の予測因子として同定された。
議論 AFアブレーションは多くの患者においてFMRの重症度を改善させる可能性があるが、残存するFMRは予後に関連している。これらの所見は、AFアブレーション後のFMRの管理戦略を再評価するための基盤を提供する。
新規性 以前の研究と比較して、この研究はAFアブレーション後のFMRの進行と予後への影響を包括的に評価している点で新しい。
限界点 本研究は単一センターの後ろ向き研究であり、選択バイアスの可能性がある。また、FMRは心エコーで半定量的に評価されており、一貫した定量的パラメータは利用されていない。
潜在的な応用 AFアブレーション後のFMRの管理に関する新たな臨床的アプローチが提案されており、それにより患者の管理と予後が改善される可能性がある。
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