見出し画像

価格調査をWebに載せるということ

「MACHIDA PC MAP」で反響が大きかったコンテンツに「抜き打ち価格調査」がある。

当該記事のロゴは使い回された

なんと開設直後の1997年2月には初回が掲載されているから、中学生の時に書いた文章を公開し続けているということになる。
やはりどこのお店が安いのか、サンプルとして確認したいもの。「MACHIDA PC MAP」が範とした秋葉原マップにも価格掲載があり、これはやってみっかということで何も考えず初めてみたのであった。
冬の抜き打ち価格調査」「春の抜き打ち価格調査」「抜き打ち価格調査デジカメ編」「夏の抜き打ち価格調査」「秋の抜き打ち価格調査」と季刊+αで5回繰り広げられた。中には秋葉原・新宿まで足を伸ばし比較してみたという回もある。「競争が少ない電気街は高い」とまことしやかな話は当時からあり、本当か?と気になっていたからだ。ちなみに秋葉原・新宿・町田の3都市対決の結果は、「メーカー製パソコンは秋葉原が安いとは限らないが、メモリなどのパーツは秋葉原が安い」だった。

さて、価格調査と言えば今はドンキホーテのあるところに建っているキムラヤでの一件を述べざるを得ない。この町田駅周辺のパソコンショップにおける価格調査の記事で、私はキムラヤと2回揉めている。

1回目はメモをしていたら、店員に高圧的に声をかけられた。結構不愉快な事件だったので当該記事を読み返すことはあまりなかったのだが、高校生の私が「今度デジカメを買おうと思っていて価格をメモしている」と言ったら、「デジタルカメラの価格を調べても2週間後なんかにはすぐ価格が変わってしまいますからね」といって追い払いにかかっている。
20年ぶりくらいに読み返したのだが、なんとふざけた小売店なのだろうか。
吉祥寺生まれなので、キムラヤには幼稚園児の頃からお世話になっていた。キムラヤで買った家電製品も多かった。キムラヤにはそんな意味もあって親しみはあって、当時はキムラヤで買うこともしばしばだった。ちなみに1回目の時、その後に行ったメディアバレーでは同様にメモを取っていた私を女性店員は「手に取って商品を見て下さい」と声かけしているのでダイエーのほうが何重にも上手だと言えよう(笑)
厳しい流通の世界、同業他社がメモをしに来ることもあったのだろう。だが、本当に客であることも考えた行為をキムラヤはとるべきだったのではないか。

もめた2回目、というか、私がキムラヤと価格調査というコンテンツを見限ったというべきかもしれない。店員が私をMACHIDA PC MAP作者として認識していることが判明したことによる。先の店員氏が「こそこそやるくらいなら、許可を取ってから価格を調べられたら、できる限りのご協力はしますよ」と提案してきていた。その回はキムラヤの価格調査を続けることが出来たのだが、既に私はこの回で価格調査をやめることにしていたのだった。

このことについては、少し想起する話がある。週刊アスキー(一般誌でなく、アイコンが誌名変更したパソコン誌)に当時のアスキー社長の西さんの日記が連載されていた。そこで、週刊アスキーリニューアル1号の価格調査が載っていなかったことを、西さんがわびるくだりがあった。その時、「雑誌連載の価格調査は商店の許可を取ってやっているものか」と驚いたものだった。そりゃそうかもしれない。雑誌は小売店に取材にいくこともあり、拒否られたら取材が成立できず困ることもあるだろう。なにより、広告をお願いすることだってあるからショップはカスタマーである。私は、あくまでショップからして客側であり、ショップがリジェクトすれば選択肢から抹消するだけの立場だった。私は圧倒的に立場が強かったのだ。
私はここで馴れ合いを排除して、一顧客として緊張感のあるレポートをという立場を取った。だが、他の同業種ウェブサイト(大手から他の電気街サイト)を読むと、そんなことはなくて、ショップの人と面識を持ち、コミュニケーションをしつつ取材をするということを選んでいるサイトが大半だったように思う。その意味で、私は異端である。否、単にいわゆるコミュ障ではとも思う。やはり、1回目にキムラヤから声かけられたときのロジックが圧倒的に気に入らなかったということだろう。取材のやり方の差異というべきか。私はジャーナリスティックで、観察者でありたかったのだ。ただ、取材は人が命で、人の懐に飛び込んでこそ取材という考えも当然ある。イチWeb媒体でそれをやろうという気にならなかったし、そもそも当時高校生で、社会人たるPCショップ関係者の人たちとは年齢差があったし、なによりもショップ店員と仲良くなれるほどの買い物をする財力は全くなかったことが、このあたりの考えを大いに左右した。

1点、店の中でのルールということも考えたい。「MACHIDA PC MAP」では、店内の写真を掲載したことはない。小売店において「店内での撮影はお控え下さい」というのはインターネット時代以前から明示されていることが多い。よって、デジカメを持つようになっても、「値札をデジカメでメモする」だなんてことは絶対にしなかったのだ。
ところが、店内でメモするかどうかは明文されたルール、掲載はない。新刊書店でメモするのは流石に良くないだろうなという程度か。90年代・00年代にインターネット時代になって、価格が流れ始めごくまれに「メモは禁止です」というショップが出たくらいか。なお、私は従順なので、お店が禁止と掲示されているのであれば行為は行っていない。だが、買い物でメモを見る・取るというのは歴史経緯として客側に禁じるにはあまりに重大な判断と言えないか。買いたいもののメモを取って型番を控えることはある。子どもであれば、価格をメモして親にねだると言ったことはあるだろう。当時のキムラヤの行為は商行為として自殺行為だったのではないか。
当時既にインターネット以前にパソコン通信もあり、ネットでショップの価格が流布することはあっただろう。いまや既に小売業の入口に掲げた「店内撮影禁止」がガン無視され、スマホで値札の写真が流通してしまっているのが2020年代の現状といったところだろう(これは2010年代には既にそうなっていたのでないか)。

基本的に価格調査は自ら行いメモを取っていた。夏だから汗だく…ということもある。メモの数字が読みづらかったりして。いま、改めて結果を見てると、存外各ショップ価格は拮抗しているのである。当該製品だけピンポイントで安いのがあってウェブを見てから行こうということでなければ、あとはショップの性質に応じて、価格以外に求めるもの次第で行く店を決めることになる。接客なのかポイントカードなのか品揃えなのか。とにかく数を見たいのだというのであればメディアバレー、とにかくコアな品揃えならパルテック、少人数で丁寧な説明ならJ&P、価格/接客ともにチェーンショップの強みのあるソフマップと、お好きにどうぞとなるのだ。キムラヤだって当時は価格で気を吐いていたのだ。ところで、ヨドバシが来る前に価格調査はやめてしまったのでヨドバシカメラは対象になったことが一度も無い。

要するに、顧客が価格をメモしてそれがすぐ流布する時代はもうすぐそこに来ていたのだ。キムラヤの店員氏はその気づきがなさ過ぎたし、それは良いが価格流通を恐れるあまりに一般顧客と思われる客をねじ伏せて追い払ったのだからアウトだった。

キムラヤのようなショップがある一方で、名前は出さないが「店内で『MACHIDA PC MAP』のハードコピーが置かれていた」というお店もある。これまでは直接か投函式の「お客様の声」しかなかったのが、ダイレクトに一顧客の反応がわかり、挙げ句の果てに証券の顧客の多くが見る影響力あるサイトになってしまったのだから、そりゃそうだというところだ。価格は真っ当な範囲で設定すれば良いのだ。リテールビジネスってこういうものだと思う。余談だが、キムラヤは2004年に倒産した。

そう言えばあの「価格.com」は1997年5月の開設。Wikipediaによると"知名度の上昇につれて販売店も「価格.com」登録の利点を理解し、店頭価格を自ら登録する販売店が徐々に増加した" とある。やはり最初はクレームも多かったのだろう。そんな記事を昔読んだ気もする。ただ、当時の私が未成年で弱かったことを抜きにしても、価格調査の対象とする先が少なすぎたし、どちらにせよ私は受験でWebコンテンツから抜けてしまっていたので、カカクコムのような化け方は望むべくもなかったというところなのであるが。

先に書いたとおり、価格調査はMACHIDA PC MAPの更新休止の1年前に止めてしまった。MACHIDA PC NEWSで不定期にやったりしたが、キムラヤは除外した。本当にウザかったから。町田のパソコンショップの歴史として、「デジカメを買おうと思っている高校生が価格をメモしていたら追い払った」キムラヤは滅ぶべくして滅んだということを語り継いでいきたい。ヤマダデンキには申し訳ないのだが。

ただ、今の財力で同じサイトを運営する時間があったとしたら、また違ったのだろうなとは思う。財力以上に、いろんな経験値が当時の私にはなかったのだ。

いいなと思ったら応援しよう!