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心電図の勉強って意味ある?

こんにちは、福井大学救急部の川野です。
初めて心電図を学ぶ人たちに向けて、心電図の読み方の講義を行っていきたいと思います。
今回のテーマでは、心電図の役に立つときは?です。
「心電図って、じゃみじゃみの線にしか見えんし、正直よく分からんのや。」って感じている人も多いと思います。
「う~ん、難しいから、また今度にしよう。」っていう気持ちになってしまうかもしれませんが、ちょっと待ってください。
心電図は様々な現場で日常的に行われる簡単な検査ですが、不整脈が起きているか、心筋梗塞は起こっていないか?など様々な情報が読み取れる、奥が深くて、面白くて、とても実用的な検査なんです。。

元々はWebやYoutubeで後期研修医向けに心筋梗塞の心電図を講義していましたが、例えば検査技師さんからの質問が来たりと多くの職種の人からの反響がありました。なので、これからは難しい内容にも今後は触れていきますが、「もし自分が心電図が苦手だった学生・研修医時代に読んでみたかった講義は?」という目線で、初めて心電図を学ぼうと思っている人向けに書いてみようと思います。もし疑問に思うことがあれば、どんどん質問をしてみてください。少しずつ記事を改善しながら、心電図を体系的に学べる内容に出来たらいいと思っています。

さて、このサイトを見てくださっている、みなさんは何故、心電図を勉強したいのでしょうか?例えば、「国試で出るから」という理由も考えられますが、モチベーションとしては少し低いですよね。
「目の前の患者さんに起こっていることが分かりたい。そして、いい治療やケアをしたい。」という気持ちがモチベーションになって行動したり、勉強したりする時って、医療者として、医療を学ぶ学生として、凄い力が発揮出来たり、勉強がはかどったりします。実際に僕も勉強を頑張るようになったのは、恥ずかしながら、「学んだ知識をすぐに目の前の患者さんの役に立てるようになった」初期研修医からだと思います。そうはいっても学生の段階で、「心電図を勉強したら、実際の医療現場でどんなことに役に立つのか?」って分からないし、現場に出ていても心電図の大切さって、理解できるようになってからしか分からなかったりします。
本来なら、初めに「P波は・・・」とか始めたほうがいいのかもしれませんが、まずは「心電図が分かると、こんなことに役立つよ」というのを他の心臓の検査と比較しながら説明するので、読んでる皆さんに「じゃ、とりあえず勉強してみよう」っていう気持ちになってもらえたらいいなと思います。

心電図の役に立つときは?

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1903年に生理学者アイントホーフェンによって心電図は発明されました。
その後、新しい医療機器が開発されていますが、未だに心電図を日常的に使い続けています。心電図は今でも研究が盛んにされていて、心電図にまつわる新しい論文も毎年発表されています。100年前の古い医療機器なのに、未だに現役として活躍しているなんて凄くないですか?
以下に、心電図の優れた特徴を上げてみたいと思います。

①簡単にできる(低侵襲かつコストもかからない)
心電図の取っている実際の現場を見たことがあるでしょうか?胸にペタペタと電極を正しく張り付けることが出来れば誰でも簡単に検査でき、短時間で、コストもほぼ紙代だけです。

②刺激伝導系の異常が分かる
③心筋の状態が分かる

勉強が進んでくると、一枚の心電図から、様々な病態が分かるようになります。心電図は心臓の電気の活動をみているので、刺激伝導系(電気の伝わり方)の異常、つまり不整脈やブロックなどの病態も分かりますし、電気に対する反応の仕方で心筋梗塞心筋炎などが起こっていないか分かることもできます。

実際の現場では、「入院時にとりあえず行う検査」として心電図をとったり、後はモニター心電図として簡易な四肢誘導だけで入院患者さんにつけて観察したりします。重症な患者さんでは必須ですよね。もちろん、胸痛や動悸がする患者さんがいたりすると診断目的で心電図をとります。
それ以外には救急隊がモニター心電図を患者に装着して、観察しながら救急車で搬送したりします。

心電図以外の心臓の検査と比較

心電図は低コスト低侵襲で不整脈などの診断の時のみでなく、様々な場面で使われていることが分かったと思います。現代は心電図以外の様々な心臓の検査があると思いますが、それぞれ心電図とどう使い分けるのか分かりますか?

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心臓を評価するときに同時に撮影することが多い胸部レントゲン。こちらの検査も低コストで低侵襲と心電図と似た性質を持っていますが、心電図と評価しているものが違います。胸部レントゲンは心不全を疑った時に、「心臓の大きさ」や「肺水腫の有無」など評価したり、肺炎や他の酸素化低下を示すような疾患がないか評価したりします。心電図と比較すると、当たり前ですが不整脈などの脈の異常は分からないし、心筋梗塞が起こっているのかなど心筋の状態も分かりません。

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次に心臓エコー検査との比較ですが、心臓エコー検査は「目で心臓の動きや構造を評価できる。」のが特徴ですよね。なので、心筋梗塞を疑ったり心不全を評価するときには心筋の動きを確認したり、大動脈弁に異常がないか調べる時に使います。心電図と比較すると、脈の異常はあまり分からなかったり(技師さんによっては分かる人もいます)、心筋の動きや壁の厚さは分かっても、高カリウム血症などで心筋の状態に変化が起きているのかなどは分かりにくい。あと、心電図と違い、誰にでもできる検査ではなく、高い技術が必要です。

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最後に心臓カテーテル検査との比較ですが、心臓カテーテル検査では冠動脈が細いか閉塞しているのか、など血管の状態を直接評価する事が出来ます。そして、ステント留置など心筋梗塞の治療が行えます。なので、心筋梗塞を疑ったり診断した場合には、ほぼ必須の検査なのですね。心電図と比較するとほかの検査と同じで脈の異常や心筋の状態はよくわかりません。また、カテーテルを心臓の血管までもっていかないといけないので、簡単に行える検査でなく、侵襲が高く、高コスト、高い技術力も必要とします。

まとめ

このように見ていくと、心電図は心臓の電気活動をみているので、「脈の異常(電気の伝わり方の異常)」や「心筋の状態(電気信号に対する反応の仕方)」を評価するのに有用な検査であると言えます。
また、誰にでもできて、特に害にはならないので、広く使われる理由が分かりますね。

次からは心電図の実際の読み方の講義に入ります。
心電図を勉強しながら、「この勉強って何の役に立つんだろう?」って思った時には、この記事をまた読んでみて、実際の現場で使われる状況を意識しながら、気持ちを新たにしてみてください。

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