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分かる!左房拡大の心電図

こんにちは。
お元気でしたでしょうか?
今回も心電図の講義をやっていきましょう。

症例81歳男性 入院時の検査

あなたの勤務する病棟に81歳の男性が失神の精査のために入院してきました。入院時の心電図をとってみていた看護師さんから、心電図が変わっているから見てほしいといわれました。
以下に心電図を示します。

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パッと見るとⅠ度房室ブロックがありそうな以外は大きな問題はなさそうです。ですが、P波に注目してよく見直してみてください。

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よく見るとⅡ誘導とV1誘導のP波が変な形をしています。
これはいったいどんな心電図なのでしょうか?

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答えは左房拡大が起こっているのでした。左房拡大が起こると変な形のP波になります。
次のスライドで左房拡大の心電図の特徴をまとめてみましょう。

左房拡大の心電図の特徴

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左房拡大ではP波がⅡ誘導とV1で特徴的な所見を示します。
そもそも、何で心房に変化が起こるとP波に影響がでるのでしたっけ?ここは前の講義を見てもらえると分かりますが、P波は心房の収縮を示しているのでしたね。
左房拡大ではⅡ誘導でP波が2峰性(山が二つということ)になります。また、V1誘導でP波の陰性部分が深く、幅が広くなります。なんでこんな変化がおこるのでしょうか?

左房拡大の心電図変化が起こる理由

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この講義でも何回もP波は心房の収縮を見ているといっていますが、心房には左心房と右心房があり、ますよね。Ⅱ誘導のP波はこの右心房由来のP波の成分と左心房由来のP波の成分が合成されて、一つのP波を作っています。だいたい、前半の1/3は右心房由来、後半の1/3は左心房由来のP波であるとされています

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左心房が容量負荷または圧がかかり拡大すると、脱分極が延長します。その結果、左房由来のP波の成分の三角形の底辺の部分が広くなります。そうすると、Ⅱ誘導で合成されるP波は左心房由来のP波のピークがずれるので2峰性になるのですね。

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さて、次はV1誘導に移りましょう。
V1はP波にとって特殊で右心房成分由来のP波と左心房由来のP波が逆の方向に流れます。そのため、2相性(陽性部分と陰性部分に分かれること)のP波になるのですね。
以前の講義を思い出してもらえれば、V1誘導は最も右心房に近い誘導でしたね。洞房結節は右心房にあって、洞房結節からの電気信号で右心房が収縮しますが、一方、左心房にも電気信号が送られて左心房が収縮します。この左心房の収縮は右心房から見て、遠ざかるほうに電気が流れているので、V1誘導では左心房由来成分のP波は陰性になります。

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左房拡大が起こると、脱分極の延長が起こるので、左房由来の成分が深くなります。そのため、P波の陰性部分が深く幅の広くなるのです。

左房拡大を起こす疾患

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左房拡大を示す疾患をまとめてみましょう。
左房拡大を単独で起こすのは、僧帽弁疾患(主に狭窄症)です。おそらく、左房拡大のみの心電図を見せて答えさせる問題がだされたら、僧帽弁狭窄症と答えるのが正解でしょう。
その他の疾患は通常、左心室肥大と合併して左房拡大が起こります。高血圧症、大動脈狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、肥大性心筋症などです。
この両者の違いはよく覚えておいてください。

ということで、今回の講義はどうだったでしょうか?
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