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Career Creation STORY #20:長門湯本温泉まち株式会社 永田尚祥さん

今回インタビューさせていただいたのは、長門湯本温泉まち株式会社で活躍されている永田尚祥(ながたひさよし)さんです。
永田さんは、大学卒業後、青年海外協力隊としてアフリカに派遣され、帰国後はホテル運営会社アクティビティ部門に入社、主に地域の魅力を利用した自然体験をお客様に提供されていました。
現在は長門湯本温泉まち株式会社で季節ごとのイベント企画や広報を担当されています。
インタビューでは、永田さんの学生時代から今に至るまでのキャリア、現在のお仕事、そのやりがいについてのお話を聞かせていただきました。
アフリカでの貴重なお話や永田さんのまちづくりへの思いについてたくさんお聞きしたので最後までご覧ください!


学外の活動がキャリアの原点に

—まず、学生時代についてお伺いします。学生時代はどのように過ごされていましたか。
学生時代は、実は理学部の自然情報科学科で生物を選択していました。最終的には音響生物学研究室という屋外調査がある研究室に所属し、コウモリの研究をしていました。
また、環境教育に興味があり、学外で活動に参加していました。環境教育とは、環境の仕組みや環境保護についての教育活動なのですが、特に体験を通して学ぶ、イメージとしては自然学校のような体験教育の手法に関心がありました。

—学外で参加されていたということですが、どのような活動を行っていたのですか。
実際に定期的に活動の場を持つということはなかったのですが、インタープリテーションという体験教育や自然ガイドで必要になるような知識や技術を学んでいました。
セミナーやワークショップに参加し、その中で実際に参加者を呼んで活動することもありました。
この分野に携わったことが、まちづくりの仕事にも繋がっているかなと感じています。

—学業以外に熱中していたことはありますか。
マンドリンクラブに所属していました。マンドリンはイタリアの楽器でマンドラテノールという中音域を担当していました。
よく部室で朝まで話をしたり、練習をしたりしていました。

—学生時代の経験から現在の生活に活きていると感じることがあれば教えてください。
建設的にまちづくりを進めて行く際に、どういう取り組みをしていくかを考えたりしていく上で、観測点をどこにするか考えたり、データをどのような方向で見たりするのかという点では、卒業研究で必要な考え方などと繋がっていると感じます。また、環境教育での学びの中で、どのようなアクティビティやプログラムを組めば体験者の学習効果が高まるのか、という技術や考え方などはまちづくりで魅力的な体験プログラムを提供するのにも似た点があると思っています。

就活がすべてではない!?日本を飛び出して気づく地球規模の繋がり

ー次に就職活動についてお伺いします。就職活動の際は、どのような業界を見られていましたか。
実は、私ほとんど就活やっていないんです(笑)。当時自分の興味をそそる企業を見つけることがなかなかできなかったので、一度青年海外協力隊に応募して、アフリカのマラウイ共和国に2年間行っていました。
生物の教師をしていました。発展途上国に一年以上住んでみたいということが、自分のやりたいことリストにあったのも理由の一つです。

ー発展途上国の暮らしはどのようなものでしたか。
インフラはやはり日本とは全然違いますね。私の派遣地に住んでいた方は、日本は、「家を出てから帰ってくるまでに(土で)靴が汚れない」ことに驚いていました。水事情も異なっていて、私が住んでいたところは井戸だったのですが、都市部でもすぐ水道が止まってしまうので、家に水を貯めるための大きなバケツがおいてありました。

ーお話をお聞きすると大変だなと感じるのですが、反対に行って良かったなと感じた点はありますか。
アフリカという違う国であっても、人々が日頃さまざまなことを考え、感じながら生きていることは変わらないことですかね。行くまでは、海外の人は遠く、別の暮らしがあると考えていたのですが、地続きという考えに変わりました。みんな同じ地球で、それぞれのところで普通に生きているという。

人の心に響く思い出を提供する

—青年海外協力隊として活躍された後は、どのようなお仕事をされていましたか。
学生の時にお世話になっていた環境教育の講師の方のお手伝いをさせていただいていました。その後、お世話になっていた方から紹介してもらい、ホテル運営会社のアクティビティ部門に就職しました。
地域の魅力を発掘して、お客様が満足するような自然体験を提供していました。館内で、クリスマスやハロウィンのイベントを演出することもありました。

—ホテル運営会社に就職された理由は何ですか。
私の配属されていたのは大きいホテルの中のアクティビティ担当の一部署でした。そのため、多くの人と関わっていく中で、実際に環境教育に関わる体験を実践し、お客さんの反応を見られる場として多くの経験を積むことができると思い選びました。そのなかで、どうしたらお客さんの心に響く体験を提供できるのかなど、心の動きと体験の関係が学べるのではないかと考えていました。

—では、ホテル運営会社でお仕事された後に、現在の会社へ入社されたのですか。
はい。ホテル運営会社でやれることはできたと思ったので、転職しようと考えていたときに、誘っていただき現在の会社へ入社しました。

―現在の会社のどのような点に魅力を感じ、選ばれましたか。
ホテル運営会社で山口県長門市にある旅館の開業に携わったときに、まちづくりがとても盛んで、今の会社で働く前から地域の人と深い関わりがすでにありました。より街を盛り上げるために、今までの自分のスキルが役に立つのではないかという思いと、街が変わっていく姿を見るのが楽しみで選びました。

―現在はどのようなお仕事を担当されていますか。
主に街の魅力が伝わるような季節ごとの魅力を作り、形にしています。発信という点が観光業にとって大事であるため、発信がうまくいくようにメディアの方とやりとりをする広報的な役割もしています。

―今までどのような季節ごとのイベントに携わっていたのですか。
この温泉街で行っている大体のイベントには携わっています。冬であれば、音信川のうたあかりですね。
冬の閑散期の集客と、地元の方に長門湯本温泉で思い出をたくさんつくってほしいという目的と想いで企画と運営をしています。
長門市出身の金子みすゞさんの詩とライトアップを組み合わせたあかりのイベントで、地元の方をはじめ長門市内の幼稚園、保育園、小学校、中学校のご協力を得て児童生徒に作っていただいたあかりで演出をおこなったりしています。

―ドローンで撮影されたうたあかりの映像を拝見させていただいたのですが、とてもきれいで、まるで異世界に来た感覚になりました。
ありがとうございます。是非、実際に見て欲しいです。長門市でないとできないストーリー性のある照明のイベントになっていると思います。

多くの人を笑顔にする空間作り~地道な取り組みと使命~

―イベントに多く携わる中で、やりがいを感じた瞬間や一番印象に残っている出来事はありますか。
地元が隣の市なので、割と小さな頃から温泉街見ると閑散としたイメージだったのを知っています。そのため、今まで来たことない方々が足を運んで来てくださる状態だけでも大きな成果だと思います。
多くの方々の努力によって、温泉街が大きくリノベーションされて、地域の方やお客さんが喜んでくれたり、街を楽しんでいたりする姿を見られるのが励みであり、やりがいです。もちろん、すべてがいい反応とは限らないですけど(笑)。

―先ほど、すべてがいい反応ではないとおっしゃっていましたが、反対に大変だったと感じることはありますか。
目指すべき方向性ややっていることをすべての人に理解してもらうのは難しいですよね。

―目指すべき方向性をどのようにそろえていくのですか。
自分たちが持っている方向性はぶれないことが大事
だと思います。その上で、しつこくというか、持続的に発信を続けます。
その中でさまざまな方との関わりが増える・増やすことで、活動への理解を深めてもらいます。

―とにかく触れてもらう機会を増やすということを意識されているのですね!少し大きな質問になってしまうのですが、永田さんにとって、まちづくりとは何ですか。
地道で大変なこともたくさんあるけれど、私たちの仕事は「多くの人に笑顔を与えて、いい社会を作っていくための一つの空間作り、場づくりに繋がっている」と思っています

ただ活動を行うのではなく、ターゲットや時期などを考え発信をし、戦略を持続的に・計画的に行動にうつすからこそ成果が現れていると感じます。

―いい社会ですか!永田さんの考えるいい社会ってどのような社会だと思いますか。
「多くの人が笑顔で過ごせる社会」
ですかね。温泉街であれば、多くの人が来て、癒されたり、日常にない好奇心を満たされたりすることで、良い体験できるということです。

―私も非日常を体験できることが観光の醍醐味だと思っています。
そうですね。非日常体験を提供できることは、温泉街の使命だと思っていますし、非日常性が実現できるとお客さまがたくさん来て、旅館が潤い、周りの企業も潤います。また、まちづくりの活動には波及効果があるので、続けていくことで良い社会の動きに繋がると思っています。
実は、コロナの流行が始まった2021年の宿泊データで、全国的に見ると5割減なのですが、私たちの温泉街はなんとか3割減にとどまりました。

―3割減でとどまったんですか!
もともと山口県内で長門湯本温泉が大きくリノベーションし、まちづくりが行われるという報道が、コロナ禍前から多く出ていて、県内の方が注目していました。それに、コロナ禍でマイクロツーリズムが盛んになったことも相まって、県内の方の認知によりなんとか集客できたのだと思います。

*マイクロツーリズム:自宅から1~2時間程度の移動圏内で、旅行や観光を行うこと。

視野が広がった自分で原点回帰

―ここまで学生時代から前職のこと、現在のお仕事までさまざまなことをお聞きしたのですが、社会人になって成長したと感じたり、考え方に変化が生じたりしたことがあれば教えていただきたいです。

広く大きく物事を捉えるようになったことです。社会人になって働くというのは、いろいろな人と関わっていくと言うことなので、自分のやっていることが多くの人に影響しているかがわかるようになります。
それに、さまざまなことにチャレンジしていると、できることがどんどん増えていくので、そこは学生の頃と比べると成長したなと感じます。

―今後はどのようなキャリアを歩んでいきたいですか。
実は弊社を春に退職して、自然体験に近い仕事に戻る予定です。木育といって、林業の方面から、長門市内の自然環境教育や林業分野の体験、就労の活性化に携わっていけたらと思っています。

*木育:子どもをはじめとするすべての人が『木とふれあい、木に学び、木と生きる』取り組み。子どもの頃から木を身近に使っていくことを通して、人と、木や森との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育むこと。(「『木育』プロジェクト報告書」より)

―今後温泉街がどのようになっていって欲しいですか。
やはりまだまだ多くの人に来てほしいですね。より魅力的な文化的に深いこと、面白いことを提供できる温泉街になって欲しいです。

やってみたいことはまず一歩を踏み出してみる

―最後に学生へのメッセージをいただけますか。
「やってみたいことは是非やってみてください。」

遠そうに見えることでも、調べてみると意外と身近に感じることもあります。
1歩進めば、10も20も情報が入ってきて、また道が開けるので、気になることはチャレンジしていって欲しいです
気になることは一生気になる可能性が高いですし(笑)、若いうちは失敗しても大丈夫です。はじめの一歩がなかなか踏み出せない時は、興味ありそうな人を巻き込んでみてください。興味がない友達でも何か遊びのついでに一緒に行ってもらうのもいいかも知れないですね。自分の理想の100%ではなくてもいいので、10%でも5%でも最初に1を踏み出せれば、次から次へと繋がります。
ほんの小さなことでもいいので、自分で踏み出せたと思えることを作っていってください。

インタビュー後記

永田さんの環境教育という観点からお仕事に励むお話を伺い、「どうしたらお客さんに喜んでもらえるのか」、「どうしたら笑顔を与えられるのか」というまちづくりへの強い信念を感じました。インタビューを通して、自分の軸をぶらさずに、誰かのために全力を注ぐことで幸せの輪が広がること、また、自分のやりたいという気持ちに忠実になることの大切さを学びました。社会の普通に従うばかりではなく、興味のあることにチャレンジし、自分の軸や武器を探していきたいです。永田さん、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。
(インタビューアー:大学2年生 鈴木瑠衣)


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