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Career Creation STORY #7:(株)ダイヤモンド社 金井弓子さん

今回インタビューをさせていただいたのは、株式会社ダイヤモンド社書籍編集局の金井弓子(かない ゆみこ)さんです。金井さんは新卒で高橋書店に入社後、1年間営業を経験し編集部に異動されました。社会人4年目には株式会社ダイヤモンド社に転職し、現在は児童書を中心に書籍の編集をされています。

インタビューでは、学生時代や現在のお仕事の話、やりがいや将来のキャリアビジョンを通じて、キャリア形成における金井さんの考え方ついてお伺いしました。


人生観を得た学生時代

―学生時代についてお伺いします。どのような学生時代を過ごされていましたか? 学生時代に経験したことで、現在に活きていることがあれば教えてください。
大学生の頃、将来のために何かやっていたかと言うと、実は何もやっていませんでした。お酒が好きでよく飲んだり、授業をさぼったり、今考えるともっと真面目にやるべきでしたね(笑)。学生時代は就職のためというより、人生におけるものの見方を得ることが多かったです。

―初めに入学した大学は3日で中退されたとのことですが、決断の背景には何があったのですか?
もともとあまり考えずに大学受験をしていました。「なんとなくかっこいいから」という理由で第一志望にした早稲田大学は落ちてしまい、受かった別の大学に入学したんです。しかし、入学式がものすごい曇り空でテンションが下がり、「本が好き」という理由で適当に選んだ専攻の日本文学も、学問として学びたいものではないような気がして・・・。あまり深く考えずに辞めてしまいました。
大学をやめてからは本をゆっくり読んだり、考え事をしたり、空白の期間をたいへん満喫したので後悔はありません。
勉強をサボり気味だった結果、残念ながら翌年も早稲田は落ちました。努力しないと相応の結果は得られない・・・と、努力の価値を実感しましたね。でも、別の大学に入学し、楽しい学生生活を送れました。

―編集者という仕事に興味をもったきっかけを教えてください。
実は、編集の仕事は消去法で残ったものなんです。昔から本が好きで、自分で漫画や文章を書いてみたこともあります。でも、私には創作の才能がないことがよく分かって・・・。それでも本の制作に携わる方法を模索した結果、「プロの読者」になろうと思い至りました。それが編集者という仕事です。

編集者は、本の制作において直接クリエイティブなものを生み出すことはしませんが、「こんな本読みたい!」と妄想し、最初の読者として本の完成まで伴走します。そうして本の根幹に関わる仕事ができたら楽しいのではないかと思い目指しました。

転職のきっかけとこだわり

―高橋書店からダイヤモンド社に転職されたのはなぜですか?
私は、新卒で働きはじめたときから、28歳までに10万部売れる本を作ることを目標にしていました。具体的な目標があったので、がむしゃらに頑張れましたね。そして26歳の時に『ざんねんないきもの事典』という本を編集したのですが、それが発売してすぐに10万部に到達したことで目標を達成したんです。そしたら気持ちがほっとしてしまって。このままではいけないなと思い、自分がまだ実績を上げていないところで、もう一度ゼロから自分を追い込むために転職を決めました。

―追い込むために。すごい! 転職活動中の軸やこだわりポイントがあれば教えてください。
一つは企画の自由度の高さです。作りたい本が作れる環境。それが最優先でした。ちなみに、編集者という仕事は、ある一人の作家についてマネジメントをするようなタイプと、自分が作った企画に合わせて作家やイラストレーターなどの配役を考えるタイプにざっくり分かれていて、私は後者をしています。そのため、企画を重視している会社を意識して選びました。

もう一つは、給料面です。給料体系は会社ごとに違い、成績によって給料が変わる会社もありますが、私は成績に一喜一憂する暇があったらもっと企画・編集に集中したいと思って、年功序列型を重視しました。最近は成果重視の企業も増えてきましたが、それぞれのメリット・デメリットを考えて自分に合う方を選ぶといいと思います。

やりがいと読者の期待を裏切らない覚悟

―やりがいや、「この仕事をしてよかった」と感じるときを教えてください。
私は担当した本に、必ずアンケートはがきを挟んでいます。それに読者が感想を書いて送ってくれるわけですが、これが宝物です。届いたはがきの分厚い束を見ると「こんなにもたくさんの人が読んでくれたんだ」と嬉しくて。はがきの状態も一つひとつ違うんです。子どもが何度も書き直した跡があったり、おじいちゃんが達筆すぎて読めなかったり(笑)、食べ物のしみがあったり。そういうのを見て、各家庭に本が届き、いろんな読まれ方をしていることを想像するのが嬉しい瞬間です。

―逆に、大変だと感じるときはどのようなときですか?
企画を進めていく過程では、一冊の本の制作にたくさんの人が関わるので、トラブルが起きます。編集者というのは、その調整役を担っているのですが、それぞれの思惑に優先順位がつけられないときは大変ですね。みんな、よかれと思って言っていることなので。それぞれの人と話してトラブルの中身を分析し、解決案を提案することで乗り越えています。

―金井さんはどんな人に価値提供したいと思って仕事をしていますか?
やはり、読者にとって払った金額以上に価値のある読書体験を提供したいと思っています。私が作る児童書は、一冊約1,000円なのですが、この金額は小学生にとって1ヶ月分のお小遣いだなんてこともあります。小学生にとって大きな投資なんですね。それでも「安い買い物だった」と思ってもらえるほどの価値を提供したいです。

大切にしていることとキャリアビジョン

―お仕事をする上で大切にされていることは何ですか?
妥協しないで、満足いくものを作ることです。制作過程において、スケジュールやお金のことなど厳しいところも出てきますが、そこは各方面にめちゃくちゃ頼み込みます。もちろん限度はありますが、そうやって、一番良い状態だと思うものができるまで粘って作っています。

―なるほど!そのポイントは、社会人になったときから変わりませんか?
これは、あまり変わらないですね。出版社の場合、会社がいちばん大切にしているのは「いい本をこの世に送りだすこと」。そのうえで「利益を生み出すこと」が求められています。つまり、ものすごくざっくり言うと、いい本を作って利益を出せばわりと自由が許されると思うんです(笑)。
当然、好き放題やっていいわけではありません。でも、妥協せずにいい本を作ってちゃんと実績を出せば、会社が信頼してさらに仕事を任せてくれる。そうやって、できる仕事の幅がだんだん増えていく。それが学生時代と違うし、魅力的で面白い。この循環を存分に活用したいという思いから、仕事において大切にしているポイントが生まれました。

―現在金井さんが思い描いている夢やキャリアビジョンがあれば教えてください。
定年退職した後も、編集の仕事を続けていきたいと思っています。嘱託社員になるとか、フリーになるとか、そのための方法は色々ありますが、ずっと編集者でいるための人生設計を今まさにしているところです。
あとは、編集者を志している人に、自分が今まで蓄積してきたノウハウを教えることもしたいです。私自身、先輩に実践の中で技術を教わりましたが、この技術は感覚的な部分も多いんですよね。だから、今度は私が次の世代に伝えていくことでより良い編集者を増やしていきたいと思っています。

思い切り次第で人生はいかようにも変えられる

―改めて、金井さんにとって働くとは何ですか?
働くということは、人生の大きなオプションだと思っています。人生をどう使うかは人それぞれで、働かなくて済むような環境に生まれていたら働かなくていい。でも私はそうではないので働かざるを得ないのですが、見方を変えれば、どこで、どのように働くかを選ぶ自由はある程度あると思います。そんな中で人生をチョイスするのは、結構楽しいですよ。

―最後に、学生に向けて一言メッセージをお願いします。
人生が順調じゃなくても、焦らなくていいと思います。私自身、最初の大学を3日で辞めたり、あまり将来のことを考えずに就活して落ちまくったり、おまけに就活中に東日本大震災まで起きたりで、まったく順調ではありませんでした。それでも人生はなんとかなります。
もう一つ、転職した身からすると、業界にもよりますが、転職は思い切りをつければ案外できるものです。新卒でどの会社に入っても、人生はいかようにも変えられる。だから、その時の自分の興味に従っていいのではないかと思います。そして願わくは、出版業界にも興味持ってくれたら嬉しいです。

インタビュー後記

金井さんのお話の中で、「人生はどうにかなる」という言葉が印象に残っています。受け身ではもちろん何も変わらないけど、自分から動けば未来は切り拓くことができる。そう感じさせていただきました、また、妥協しないで満足いくものを作る、というお仕事への姿勢はどんな業界にも通じると思います。私自身も今のうちから、やりたいことには妥協せずに熱中して取り組んでいきたいです。まずは、今の興味に打ち込んでみることから、ちょっとずつ頑張ってみます。少しでも多くの就職活動を控える学生にこの記事が届きますように!
金井さん、お忙しい中お時間を頂き、誠にありがとうございました!
(インタビュアー:ECCL修了生 大学2年 原田志帆)


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