葛西臨海水族園で1,400本の樹木が伐採されるというデマの発生源をつきとめた
いつのまにか、葛西臨海水族園で1,400本の樹木が伐採されるという言葉が一人歩きしています。東京都建設局が葛西臨海水族園の整備事業のQ&Aページでも「1,400本の樹木を伐採するなどの情報が、SNSを中心に一部で流れていますが、事実ではありません。」と否定してます。
では、このデマはどこから発生したのか。
発生源をつきとめたので記しておきます。
1,400本はどこから発生したか
まず最初に、1,400本というもっともらしい数字が発生した場を紹介します。
時は2023年2月10日(金)午後1時、場所は東京都の環境・建設委員会(第九委員会室)、13名の委員(都議)が全員出席して行われました。
葛西臨海水族園の整備事業で、1,400本という数字がでたのはこれが最初です。
新しい施設が建つ予定の場所に何本の木があるか聞いているだけです。
伐採するとは明言していません。
質問しているのは、日本共産党都議会議員・江戸川区選出の原純子氏です。
この会議で葛西臨海水族園の整備事業に関して2件の陳情があり、それに関しての質疑で上記のやりとりがありました。
森山高至氏がデマの起点だった
「葛西臨海水族園」+「伐採」というキーワードでGoogleの検索の結果が表示されるのは2月15日以降です。
「都議会環境建設委員会の根来氏は、
1,400本の樹木と淡水生物館は解体撤去、伐採されるべきである、
と答弁してます。」
というテキストを含むまとめサイトが検索にひっかかりました。
このテキストを含むのは、こちらのツイートです。
引用元の村松基安さんは、この日の2つの陳情の内の片方を提出した有志の団体に参加していらっしゃるようです、
その村松基安さんのFacebook投稿(画像)には、「伐採すると明言したようなものです」と書かれていますが、伐採するとは書いていません。
これを引用する際に、根来公園計画担当部長の答弁が「伐採されるべきである」と改変されて投稿されています。
上田令子都議が火に油を注ぐ
森山氏の投稿後、いくつかのウェブメディアが葛西臨海水族園の樹木「伐採」について報じました。ただし、煽ったタイトルではありますが、本文は事実を書くパターンが続きました。たとえばこの記事。
記事タイトルはミスリードですが、記事本文は「建設局担当者は新水族園の建設エリアにある樹木の本数について「約1,400本」と答弁。」と一線はこえていません。
そのなかで、名実ともに一線を越えたのはBussiness Jurnal、横山渉氏によるこの記事です。
冒頭にあげた議事録では、「移植を前提に設計を進めております」とあるものの1,400本伐採するという答弁はありません。
メディアが本文で括弧付きとは言え、本文で虚偽の内容を報じたのはこれが最初です。
もともとの根来公園計画担当部長の答弁はこちらです。
そして、記事の補強として環境・建設委員会の委員ではない上田令子都議に取材し、小池都知事と都の方針を批判する言葉を継いでいきます。上田令子都議は最後にこう締めます。
上田令子都議は、環境・建設委員会の委員ではないとは言え、参加した都の職員や速記録をすぐに確認できる立場です。自分が取材対象者として関わった記事が公開され、読むと明らかな嘘が書いてあることはわかるはずです。さらに、嘘記事に都議として信憑性の担保として利用されていることは、通常の読解力を持つ人なら分かります。
これを訂正せず、現在まで放置しているのは、ミスリードされてもいいという意志の表れととられても仕方ないと思います。
更に言うと、これになんら訂正の申し入れをしない環境・建設委員会の関係者や都は、都政情報を都民に正しく伝えることも役目だと認識して欲しいです。
質問当事者の原都議の反応
さて、質問した当事者の日本共産党都議会議員、上田令子都議と同じ江戸川区選出の原純子都議の反応はどうだったのか。
原都議は正確に事実を述べられていて、むやみにデマに乗っかっていらっしゃらなかったのでした。こういったケースでは、日本共産党の人は看過する方が多い印象なので、ちょっと意外でした。
まとめ
建築エコノミストの森山高至氏が
「都議会環境建設委員会の根来氏は、1,400本の樹木と淡水生物館は解体撤去、伐採されるべきである、と答弁してます。」
と書き、
都議会議員・江戸川区選出の上田令子都議が、『伐採本数について「約1,400本」と答弁』と書くBusiness Journalのライターの取材に、
「このままいくと、小池知事は東京都所有の公園の樹木をさらに切り倒していくかもしれない」
と、答えて「デマ」が広がりました。
以上です。
※アイキャッチの画像はStable Diffusionで作成しました。