これが学術団体のレポート??? ICOMOS/日本イコモスのヘリテージ・アラート
ICOMOSのヘリテージ・アラート、内容もですがそれ以前に基本的なレベルでヘンテコリンなのをご存知ですか。
本稿では、どこがヘンテコリンなのか、あげていきます。
はじめに
COMOSのヘリテージ・アラートが、2023年9月5日に発出されました。
ヘリテージ・アラートそのものは、こちらからご確認ください。
また、和訳版もでています。※こちらは、圧縮ファイルへの直リンクです。
ヘリテージ・アラートは3つの書類から成り立っています。
The letter sent to government and city officials
(送り状。宛先と差出人、送付物と内容の要約。)Heritage Alert Background Information
(ヘリテージ・アラートを発出した背景情報。)Press Release
(プレスリリース。概要と、今まで発表した提言履歴、趣旨に賛同する他団体の資料。)
今回は、ヘリテージ・アラートの本体である「Heritage Alert Background Information」をみていきます。
ヘッダーをちゃんとしましょうね
まずは、こちらの2つの書類の右上のヘッダーを見比べてください。
上は、2023年9月5日に発出された神宮外苑の再開発に関するヘリテージ・アラート、下は、2023年1月26日に発出されたアメリカ・ペンシルベニア州のフィラデルフィア警察管理棟に関するヘリテージ・アラートです。
前者のヘッダーは、
Heritage Alert Template ver. 2010/06/30
後者ヘッダーは、
Heritage Alert Background Document ver. 2023/01/26
となっています。
ヘリテージ・アラートには書式が決まっているようです。背景資料は、右上には背景資料と日付がはいるのが通常のようです。
神宮外苑に関するヘリテージ・アラートのヘッダ、おかしいですね。
テンプレートのファイルをもってきて、ヘッダの更新を忘れたようです。
ちょっとこれは、恥ずかしすぎます。
日本イコモスの理事たちにも書類の確認を依頼したそうなのですが、皆さん、読んでないんでしょうね。
秩父宮ラグビー場は国有地ではない
P.5の「1-3 分類/場所の種類/地域/土地所有者」の記述をご覧下さい。
神宮外苑地区まちづくりの計画地に国有地は存在しません。
独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)所有の秩父宮ラグビー場が国有地だと主張する方もいますが、JSCの土地です。
港区北青山二丁目268-1(29,298.91㎡)の登記簿情報も平成15年(2003年)10月20日にJSCへ所有権が移転されています。(他数筆、あります。)
念のため、関東財務局にも電話して聞いてみました。国有地とは所有権が旧大蔵省か財務省の土地のことだそうです。
なぜ関東財務局が関係するかというと、国道が正確にはどこまで国有地なのか、河川やその土手がどこまで国有地なのか、などを判定し証明するために対応されているとのこと。
正確な地番を伝えると、そこが国有地であることの証明、もしくは国有地でないことの証明書類を発行してくださるそうです。今回は登記情報で判明していることもあり、書類の発行の手間をとらせるのは申し訳ないので口頭のみの確認とさせていただきました。
関東財務局に、青山二丁目268-1は国有地では無いと回答をいただきました。
ということで、国有地であるという表記は間違いです。
確認せずに、間違った情報を世界に公開し、日本政府にも宛先の1つとしてヘリテージ・アラートを送るとは、赤面ものではないでしょうか。
児童公園(Children’s Park)ってなあに?
P.12 の神宮外苑開園当初の説明。
図16として、当時の「明治神宮外苑平面図」を参照しながら各所の説明を簡単にしています。
その最後の段落にこうあります。
憲政記念館は、現在の明治記念館のことです。日本庭園は現在もあります。当時は植樹のための苗床もあったのでしょう。最後の文章に、「現在は児童公園として利用されている」とあります。
これは、文脈と平面図をみると明治記念館と日本庭園の先、東にある公園のことを指すと類推されます。こちらは、現在面積の半分がマンションになっていますが、東半分は現在「区立みなみもと町公園」です。
おそらくこの公園の前身のことを説明していると思われます。
P.13 の図16 はこちらです。
拡大したのがこちら。
明治記念館と日本庭園、苗床の表記はあります。
その下に、聖徳記念絵画館前広場を指す矢印の説明として、児童公園(Children’s Park)と書いてあります。
凡ミスなのか、それともここがオープンスペースだと主張する根拠としたいから、嘘を書いたのか。詳細がわからない海外の人だから嘘をぶっこいても大丈夫だと思ったのか、どうなのか。
唐突にシカゴの建築デザイン会社
聖徳記念絵画館前広場からの景観がどうかわるのかの予想図に、唐突に雑な3Dパース図が掲載されます。
昨今、3D表現はかなり発達しているのに関わらずかなり雑な図です。建築予定のビルの色、形、ざっくりすぎます。
雑というのは、これを見てもらえれば解ります。
芝生が浮いています。このレベルの稚拙なパースを資料として利用するとは。
こちらは、ロッシェル・カップさんがシカゴの建築デザイン会社に発注した3D動画です。
ICOMOSが発出するヘリテージ・アラート、実際は日本イコモスの石川幹子さんの指揮で作成されていると思われるレポートなのに、反対活動家のロッシェル・カップさん提供の動画が利用されています。
これが、元の動画です。
Berman Architecture & Design に発注した経緯は次の動画の中でロッシェル・カップさんが語っています。
書き起こしから引用します。
公開データを元に制作してくれる会社は日本にもあると思うんですけどね。
さて、書類の作成は誰でしょう
通常、企業、団体が公に発表するPDFは当該団体名を入れることはあっても個別の担当者名を削除するのがマナーです。しかし、ヘリテージ・アラートの3つのPDFには、プロパティ情報に作成者情報が残っています。
順に、みていきましょう。
1.The letter sent to government and city officials(レター)
こちらは、Gaia とありますので、イコモスの国際事務局ディレクターのGaia Jungeblodtさんでしょう。
2.Heritage Alert Background Information(背景資料)
こちらは、Itoh とあります。次のプレスリリースの作成者からの推測で、筑波大学大学院・人間総合科学研究科・准教授の伊藤弘さんでしょう。
こちらは、伊藤研究室のホームページです。
3.Press Release(プレスリリース)
こちらは、脇園大史とあります。筑波大学・人間総合科学学術院人間総合科学研究群・世界遺産学学位プログラム に所属されています。前述の伊藤弘さんは世界遺産学学位プログラムの講義・演習を受け持ってらっしゃるので、背景資料の作成者は伊藤弘さんではないかと推測しています。違うのであればご指摘ください。
最後に
最後に、ICOMOS Japan information 12期 ― 7号(2023.9.21発行)の2023年度 第3回 理事会(拡大理事会)報告より、協議事項の欄の文章を引用します。
このヘリテージ・アラートの作成過程が垣間見られます。
以上。
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