〇「ソウル・サーチン・ラウンジ#53F」近田春夫さん吠える ~「吼えろ! ハルヲフォン」(文字起こし)~ パート2(全4パート)
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【Haruofone Fighting on Soul Searchin Lounge (Part 2 of 4 Parts)】
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〇「ソウル・サーチン・ラウンジ#53F」近田春夫さん吠える ~「吼えろ! ハルヲフォン」(文字起こし)~ パート2(全4パート)
【Haruofone Fighting on Soul Searchin Lounge (Part 2 of 4 Parts)】
ラウンジ。
2021年4月21日、9か月ぶりに行われた「ソウル・サーチン・ラウンジ」、ゲストの近田春夫さんのトークは抜群におもしろかった。そこで、ほぼ全てを起こして、4回にわたって紹介する。今日は、パート2。
5.あこがれのハコバン~曲をメドレーにして
近田 「ライヴ・ハウスで新曲やると、みんな客が引いちゃうんだけど、ハコバンだと曲をうまくつないでやると、みんな踊り続けて、それほど引かないんだよ。ハコやってるときは、俺たちもずっと曲をノンストップにするわけ。この曲つなぎがまた快感なんだよ。(笑) 一応、ステージ始まる前にある程度曲順決めておくんだよ。だいたい定番のやつもある。
たとえばね、『スタレン・イッカン・カゲ・カイチー』っていうのがあるのね」
吉岡 「な、なんですか、それ??」
近田 「ぜんぜんわかんないでしょう。これね、頭のスタは『ロック・スタディー』(アレサ・フランクリン)、レンは『ロング・トレイン・ランニン』(ドゥービー・ブラザース)、イッカンは、『カンフー・ファイティング』(カール・ダグラス)を一回やって、カゲは『青い影』(プロコル・ハルム)、カイチーは、スタイリスティックスの『誓い(ユー・メイク・ミー・フィール・ブランニュー)』(チカイをバンドマンらしくひっくり返して、カイチーという)をつなげてやる、ってことなんだ。カゲ・カイチーはだから、スローのチークタイムね。
(では、そのスタレンイッカンカゲカイチーをつづけてどうぞ。カンはロングヴァージョンですいません)
スタ
Aretha Franklin – Rock Steady
https://www.youtube.com/watch?v=ndFkUSJJ7Zg
レン
The Doobie Brothers - Long Train Running
https://www.youtube.com/watch?v=bCnM-mB6t3A
イチカン
Carl Douglas ~ Kung Fu Fighting 1974
https://www.youtube.com/watch?v=g75QS0nNldA
カゲ
A Whiter Shade Of Pale – Procol Harum
https://www.youtube.com/watch?v=Mb3iPP-tHdA
カイチー
The Stylistics - You Make Me Feel Brand New
https://www.youtube.com/watch?v=cm7YF3gxZy4
でも、そんなときに客からリクエストが来ると、バンドメンバーでサインがあって、それを挟みこんだりするわけよ。じゃあ、ここは『ロック・ザ・ボート』(ヒューズ・コーポレーション)ね、みたいに。レパートリー的には、100曲以上あったと思うな。
Hues Corporation - Rock The Boat
https://www.youtube.com/watch?v=iKr9wZpjBqE
ハコバンの人はみんなそれくらいはあると思うよ。『すたれん~』みたいなパッケージ、ほかにもいっぱいあったと思うけど、いま、これちょっと思い出したんだよ」
吉岡 「ヴォーカルもいろいろ変わってたんですか?」
近田 「そう、それは必須。ヴォーカルはね、一人でやってると疲れるんだよ。(苦笑) だから、みんなで分担してた。もちろん、一人ずば抜けたヴォーカリストがいるバンドだったりすると、それが一人でずっと歌ったりするけど、俺たちは全員歌えるようにしておかないとダメなわけ。今日も来てくれてるけど、CCO(獅子王)のジュンみたいな飛びぬけたヴォーカルは一人で全部歌うんだけど、俺たちは疲れちゃうからさ、分担でやるわけさ。スタイリスティックスのラッセル・トンプキンス・ジュニアは裏声得意なお前とか、決めておく。
ファンキー・ベースボール / C C O (獅子王) / [7inch] (1976)
https://www.youtube.com/watch?v=5Q5WrH3HsjU
吉岡 「じゃあ、本当にハコバン、エンジョイされてたんですねえ」
近田 「ずうっとやってたかったよ。そんときは、ほんと、一生やってたかったと思ってたよ。俺たちが最初にはいったシーザース・パレスってところは、夜の11時半には必ず終わって。同系列の店でそのあと、俺はピアノの弾き語りやってたんだよ。断れない曲とかやってた。歌は歌わなかったけど、チップもらってた。シーザース・パレスのギャラはまあまあだったけど、(バンドメンバー)みんな実家だったからさ。(笑) ぜんぶお小遣いだから」
吉岡 「まさに東京のバンドならではですね」
6.あこがれのハコバン~毎日同じ場所に楽器がセッティングされていることが魅力
近田 「ちょうどその頃、最初の結婚してたから、一人暮らし始めてけど。別に余裕があったわけじゃないけど、あの若い頃なんて誰も先の事考えてないよ。ちょっと考えたら、こんな仕事しないよ。(笑)
ハコバンの一番の魅力は、毎日、同じ場所に同じ楽器がセッティングされてるんだよ。そうすると、毎日、理想の音が出せるんだよ。行ってスイッチいれるだけで、もういい音が出る。これが普通のバンドのツアーだったら、なんとか公会堂とかに行って、毎回サウンドチェックしなきゃなんないじゃん。そうじゃなくて、スイッチ・ビンっていれたら、もう音出せるんだよ。今でいうCDみたいな音がでるんだ、(笑) 完璧な音が出るんで、この快感といったらたまんないんだよ」
吉岡 「その頃って、たとえば自分たちの名前ででているバンド、ロックであれなんであれ、そういう人たちってハコバンのことを、下に見るというかバカにしてたでしょう?」
近田 「そう、ロックバンドは当時はレコード会社で、『制作』って言われてた。でも、ハコバンみたいなのは、『営業』って言われた。『営業』と『制作』、両方やってるバンドはそうそういなくて、俺たちは珍しかったんだ。それが誇りだったんだ。(笑)」
吉岡 「一時期、ずっと一生ハコバンやっていきたいって思ってたそうですが、どの時点かで、それもちょっと無理かな、みたいな転換期、あるいは、なにか出来事とかありましたか?」
近田 「そこんところは、よく覚えてないんだけど、時の流れのままにという感じかな。世の中の流れとして、だんだんハコバンが活躍できる店がなくなってきちゃったんだよね。それも、将来、未来を考えたときに、職種として業種として未来がないんじゃないかな、との思いも少しはあって、それで少しずつ制作のほうにいこうかな、とも思うようになりましたね。考え方として間違ってるかもしれないんだけどね」
吉岡 「確かに時代的にいうと1973年から1974年くらいから、ディスコというものが大ブームになり始め、もちろん、バンドとDJ、両方いる店もありましたが、徐々にバンドが少なくなり、DJがレコードをかける店が増えていくわけですよね」
7.あこがれのハコバン~生バンドの将来は? パーティーは行くものじゃない、やるもの
近田 「だから、それでもね、人に自分の音楽を聴いてほしいっていうよりは、自分の音で人に踊ってほしい、ということなのよ。それだけは、ずっと変わんないと思う。今でも変わんない。だから、今回の911のダンス・パーティーもそう。要するにね、(ダンス・)パーティーは行くもんじゃない、やるもんなんだよ。ステージ上からみんなが踊ってるのを見ると、気分いいってことなんだよ。みんなこっち、俺たちのことなんか忘れて踊っててくれたほうが気分いいわけよ。できれば、(自分は)透明人間になりたいくらい。(笑) 自分の力で人が踊ってるのを見ることくらい気分のいいことはない。DJとまったく一緒なんだよ。でも、それだったら、今は、DJのほうが効率いいじゃない。(笑) 俺、生バンドってこれから必要なくなると思うよ。なるなる、最終的には。どうでもいいんだもん、そこは」
吉岡 「うーん、確かに、1980年代にはいって、それまで7人だ、8人だ10人くらいの大型グループだったアースとかコモドアーズとかキャメオとか、そうしたバンドがどんどんメンバーを縮小して、キャメオなんか3人バンドになったりして、やはり、そういうのは時代の趨勢だからしょうがないんですかね」
近田 「僕はそう思いますよ。だけど、どうしても、生(バンド)じゃないとダメなものもあるんだけど、それはものすごく能力というか、相当な才能がないとできないんだよね。いまだに思うんだけど、やっぱりJB(ジェームス・ブラウン)は生じゃないとできないと思う。フランク・ザッパも生じゃないとダメ。いくつかそういうバンドはあるんだけども、そんなものを求めてる人はこれくらい(指で1センチくらいの幅を示す)のもんですよ。(笑) だから俺がこれから生バンドやるとしたら、純粋に自分の快感のため。後ろから鳴ってる音が気持ちいいとか、現場でメンバーに指示すると、音をその言われるがままに変えてくれるとか。さっきのハコバンもそうなんだけど、自分が何か言うと、メンバーはそれにしたがって曲を変えてくれるとか。そういうことを生でやれる快感。お客のためじゃなくて、自分のためにやることはあるだろうけどね」
吉岡 「そこまできっぱり言えるってすごいですね」
近田 「それは、JB見てほんとにそう思った。俺、JBと似てるなって思った。(笑) 俺、ジェームス・ブラウンとフランク・ザッパを足して2で割ったようなものだと思ったもん」
Sex Machine - James Brown 1971
https://www.youtube.com/watch?v=Ajzpd-ONOdo
FRANK ZAPPA & THE MOTHERS LIVE AT THE ROXY, 1973
https://www.youtube.com/watch?v=V2a0ux53dKY
吉岡 「JBで思い出すんですけど、JBの初来日、1973年2月武道館、そのときに近田さんともう一人長髪の男がいたというのを…」
近田 「(山下)達郎がそう言ってるんでしょ。俺、そのときそこまで長髪じゃなかったと思うんだよね。ひょっとして違う奴なんじゃないかと思うけど。俺はもうちょっとおしゃれだったと思うよ。(観客爆笑) 俺はさあ、そんなロック・ミュージシャンじゃないからさ。(笑) 俺は単に遊び人だからさ。違うのよ。俺、踊りうまいから。
まずね、基本的に『チャチャ』のステップができない人はダメ。(笑) ねえ、そう思うでしょう?? 横浜のチャチャと新宿のチャチャは違うけど、その前の本当のチャチャが踊れなきゃダメ。ソシアル・ダンス的な、2人で手を組んでの昔ながらのチャチャですよ。ディスコより前の学生のパーティーとかに行くと、みんな踊ってるじゃん、それをじーと見てると、チャチャっていうのは、6ステップだってことがわかったのよ。1-2-3-4-5-6、それで元に戻って繰り返す。ここで回転するんだっていうのを覚えて、うち帰って練習するんだよ。チャチャ難しいよね。気づいたんだけど、チャチャって社交ダンスみたいに男女が触れ合うじゃん。
最初にそうじゃなくなったの、『ツイスト』ですよ。今のトランスの踊りなんて元はツイストですよ。ツイストっていうのは、1-2-3-4、1-2-3-4で繰り返す。それまで、なかったんだよ。BPM、テンポがツイストになって独特のものになったんだ。チャビー・チェッカーの『ツイスト』は、ドンドンドンドンって、四つ打ちなんですよ。だから、四つ打ちの基本は、俺は『ツイスト』にあると思ってる。
The Twist - Chubby Checker
https://www.youtube.com/watch?v=im9XuJJXylw
https://www.youtube.com/watch?v=pHGXwQeUk7M
吉岡 「はああ、なるほど、そうしたら、ハウスのルーツはツイストだ…」
近田 「いやあ、そこまでは断言しないけど、ツイストていうものが現れて、すごく変わったものがいっぱいあると思う。逆に、ツイストが現れてつまんなくなったものもあると思う。ツイストは、『モンキー(・ダンス)』もそうなんだけど、『ゴー・ゴー(・ダンス)』も、練習しないで踊れる踊りになっちゃったんだよね。それまでの踊りは、うちで練習してきて現場で披露するみたいのが快感だったのよ」
Mickey's Monkey -Miracles
https://www.youtube.com/watch?v=jpLVyZVRw3w
吉岡 「1973年頃から、ちょうど日本でもテレビで『ソウル・トレイン』が放送されるようになりました。そこでは最新のダンスが踊られていましたが、当時はまだ家庭用ビデオがないから、一回の放送で踊りを覚えなければならなかった。そこで何人かで手分けして覚えたりしていたという時代ですよね」
近田 「ファンキー・ロボット、ファンキー・フルーツなんてあった。当時、そういうのをどうやって覚えるか知ってる? 実はね、当時、銀座のソニー・ビルで『ソウル・トレイン』をずっと流してたんですよ。それをずっと見ながら、一生懸命覚えたよ。そこでいつもやってた。
The Funky Robot – 1973 ― Rufus Thomas
https://www.youtube.com/watch?v=iSm97pA-TG4
From Soul Train – Jungle Boogie – Kool & The Gang
https://www.youtube.com/watch?v=lODBVM802H8
THE JACKSON 5 - Soul Train 1972 (Medley)
https://www.youtube.com/watch?v=IcEh4nkvrLc
最初に行った踊り場は、渋谷の『バン』かな。明治通り沿いのボーリング場の上。その次は、同じ時期でいうと、六本木に第二前ビルっていうのがあって、そこに『スピード』っていうディスコがあった。それと、俺も最近知ったんだけど、松本隆さんと細野晴臣さんがハコで入っていたという『コッチ』、青山のスパイラルのちょっと先の地下。細野さんたちは俺たちよりちょっと上だから、彼らがいた頃は知らないんだけど。俺も、ずっとハッピーエンド系をバカにしてたんだけど、(観客爆笑) 松本さんがハコバンのドラマーだったって知って、逆に尊敬するようになっちゃったよ。(笑) 俺、負けたわ、と思ったよ」
(パート3へ続く)
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