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◎コロナ明け~万感の思い込め、小曽根真観客入りライヴ

(本作・本文は約3400字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、7分から3分半。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと11分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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◎コロナ明け~万感の思い込め、小曽根真観客入りライヴ: コロナとBLMで荒んだ心を癒すその小曽根マジック

【Overwhelmed by Performance After Corona Breaks : Is Long Absence Of Live Audiences Over?】

観客。

ブルーノートの地下2階へ進む階段を降りると、そこにはいつもと違う風景があった。ふだんは観客がぎっしり座っているステージ前のいわゆる「アリーナ・エリア」にどーんと大きなヤマハのグランドピアノが鎮座していた。そして観客席は、それを取り囲む。それが間隔をあけての着席。ふだんのステージには大きな花とソファのようなものとクレーンのテレビカメラ。カメラは7台配置され配信された。

ブログ 小曽根ブルノ 花

(先日も小曽根さんがゲストで出た番組のDJジョン・カビラさんからの花)

通常200数十の客席数のところに、今回は限定100席で、チケットは52秒で売り切れたとか。

しかし、なんといっても観客入りのライヴだ。僕はちょうど4か月前このブルーノートでキーボード奏者キャメロン・グレイヴスのライヴを見た。それが結果的にコロナ禍になる前の最後のライヴだった。なので、4か月ぶりのライヴ、コロナ後、初のライヴハウスでのライヴだ。こんなにライヴハウスでの、あるいはコンサートホールでのライヴを待ち焦がれていたとは思わなかった。地下に降り、客席に観客がいたのを見た瞬間、いつもとは違うが、以前のようなブルーノートの光景を本当に久しぶりに見て感無量だった。

キャメロン・グレイヴス自己名義初ライヴ~ブルノでヘヴィメタ
2020年02月27日(木)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12577965182.html


ブログ 小曽根ブルノ 席から全景

(写真・全景=右側が通常のステージ。客席・アリーナをステージにして、それを客席が300度囲む形で見る)

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有観客。

4月から5月31日まで自宅からの計53回のライヴ無料配信が大きな話題となっていた小曽根さんは、最終回をオーチャード・ホールからの生中継という大サプライズで締めてくれたが、それに続いてブルーノートでのソロ・ライヴを2日間敢行した。

小曽根さんが登場し、ピアノの前に座り、鍵盤に触れ、音を出した瞬間から会場の多くの人たちの頬を濡らしたようだ。これは小曽根さん曰く未完成の新曲だそうで、アドリブでやりながらこれから完成させていくそうだ。


ブログ 小曽根ブルノ メニューとピアノ遠景


かつて自分が先輩にかわいがってもらい、いろいろなところでチャンスをもらったことを大変感謝し、今度は自分が若手にチャンスを与えたいという願いもこめ、そして、『ウェルカム・トゥ・アワ・リヴィング・ルーム』に動画を投稿してきたウクレレ奏者、リオ君をなんとブルーノートに招き、共演した。彼はまだ19歳、小曽根さんとは40歳差だが、音楽はそうした年齢差などまったく関係ないということを如実に表す。『リヴィング・ルーム』をやっていたからこそ始まった物語のひとつだ。

そしてゲストのトロンボーン奏者、中川英二郎さんとはすでに小曽根さんのビッグバンド、ノー・ネイム・ホーセス(No Name Horses)のメンバーですっかり息もあっている。

僕は以前から、リハーサルを100回しても、観客のいる前での本番1回のほうがミュージシャン/アーティストのためになる、学ぶものが多い(100回リハより1回の本番・セオリー)と思っているのだが、今回改めて観客の前でプレイすることがミュージシャン側がどれほどインスパイアーを受けるのかをまざまざと感じた気がする。

ブルーノート・ビッグバンドのリーダー、エリック宮城さんが小曽根さんに電話して「どうしてもこの場に出たい」ということで、この日なんとアンコールでサプライズ登場したが、その出てくるなり、「お客さんだあ~~すげーーー」と、客席を見回して泣きそうに感激していたのを見て、「これだ」と感じた。

ライヴはやはり、アーティストとオーディエンスが一体となって作るものなのだ。もちろん配信でのライヴもひとつの形としてはあり、特に『リヴィング・ルーム』の場合はリスナーの熱いコメントなどである程度の双方向性があるのだが、やはり、同一空間・空気の振動・匂い・香り、そして音の響き。それらがすべて一体となり、耳と目を中心に五感すべてに降り注ぐ。それがライヴ・ハウスだ。ライヴ・ハウスに来て、ライヴ音楽を「体験」することは、まさに体験であり、それは配信映像からだけではすべてを享受できるわけではない。もちろん、配信でライヴの一部を見ることはできるが、あくまでそれはほんの一部。絵画をインターネットや、画集・図版で見るのと、直接そのリアルなものを展覧会会場で見るのとの違いだ。もちろん、物理的に実際にライヴ会場に足を運べない人も多い。そういう人たちは次善の策として配信があれば、それは多くの人の助けにはなる。

今回、『リヴィング・ルーム』で小曽根さんを知り、初めてブルーノートというライヴ・ハウスに足を運んだというラッキーな方もいらっしゃったようだ。また、この『リヴィング・ルーム』では、それまでにジャズ喫茶やジャズのライヴ・ハウスに足を運んだことがなかったような人たちが多く見ていたという。それはまさに音楽ファンの裾野、底辺を広げることにもなっている。その意味で『リヴィング・ルーム』をずっと無料配信で続けてきた大きな意味はあったということになる。

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BLM(ブラック・ライヴズ・マター=黒人の命も大事だ)。

もうひとつ、僕が感激したのが、ダブルアンコール2曲目にソロで小曽根さんが一人残り、「今、もうひとつ問題があります。BLM、ブラック・ライヴス・マターです。僕は(多くの黒人アーティストたちから)『ジャズ』という言葉を授けてもらったことで、それで世界中の人たちと一瞬にしてつながることができました。アドリブで演奏して、ブルーズを演奏して、それだけで気持ちが通じあいます。クラレンス・ペン、マルサリス兄弟、ドナルド・ハリソン、クインシー・ジョーンズ、オスカー・ピーターソン…。オスカーの曲を愛すべき僕のブラック・ブラザースたちに捧げたい」と言ってオスカー作の「ヒム・トゥ・フリーダム」(自由への賛歌)を弾いたことだ。

この曲は、なんとオスカー・ピーターソンが1962年にマーティン・ルーサー・キング・ジュニアにインスパイアーされて書いた曲で、アルバム『ナイト・トレイン』に収められ、その後、多くのカヴァーが誕生し、ヴォーカルものも生まれたというスタンダード。この「ブラック・ライヴズ・マター」真っただ中でどんぴしゃの一曲でもある。ちなみに、小曽根さん自身のものはこちらに収録。邦題「自由への賛歌」。

(当初本人は録音していない、と書きましたが、ご指摘あり、訂正いたします。ありがとうございます)

Oscar Peterson – Hymn To Freedom


https://www.youtube.com/watch?v=tCrrZ1NnCuM
Live in Denmark,1964.
Oscar Peterson on Piano
Ray Brown on Bass
Ed Thigpen on Drums


ブログ 小曽根ブルノ ヒム・トゥ・フリーダム」楽譜写真


オスカーの録音ヴァージョン


https://www.youtube.com/watch?v=Uy25C_s288g

テナーサックス、ベン・ウェブスターのヴァージョン


https://www.youtube.com/watch?v=krAs4je6BzM

Hymn to Freedom: Oliver Jones, Dave Young, & Dione Taylor (ヴォーカル・ヴァージョン)


https://www.youtube.com/watch?v=YTAzDaAOtmI

Hymn To Freedom 

written by Oscar Peterson

When every heart joins every heart and together yearns for liberty
That's when we'll be free
When every hand joins every hand and together molds our destiny
That's when we'll be free
Any hour any day, the time soon will come when men will live in dignity
That's when we'll be free, we will be
When every man joins in our song and together singing harmony
That's when we'll be free

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長いトンネル。

小曽根さんの「なんとかして、(最終的には)みなさんをシアター(劇場)に呼び戻したい」という熱い思いが、長いコロナ禍というトンネルの先に少しだけ明かりを灯したように見えた。しかし、この長いトンネルは、まだ終わりではないかもしれない。コロナ禍の長いトンネルを抜けるとライヴハウス(劇場)があった、となる日は近いかもしれないのだが…。

僕にとってはコロナ禍とブラック・ライヴズ・マターの2大パンチで心がズタズタになっているような時期に、こうしてライヴ・ハウスで実際のライヴに接し、しかも最後にブラック・ライヴズ・マターにも一筋の応援歌を目撃したことでひじょうに前向きになれた一夜となった。

小曽根さん、そしてミュージシャンのみなさん、ブルーノートのみなさん、お疲れ様、そして、ありがとうございました。

ブログ 小曽根ブルノ 着物帯


(電光石火で予約したKさん、なんとお着物の帯はピアノがデザイン。土曜日も来たかったが、日曜の予約が取れてすぐに土曜も取ろうとしたが、もうダメだったという)

余談: 小曽根さんもMCで言っていたが、この日使用されたヤマハのピアノはエレヴェーターが使えず、500キロ超のそれを8人がかりで地下2階まで階段で下ろしたという。


■過去関連記事

小曽根真さん53日連続自宅からのライヴ完走、最終日はサプライズのオーチャードから
2020年06月11日(木)


https://note.com/ebs/n/n76906d7c7b6e

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12603109488.html

小曽根真さんの自宅から『ウェルカム・トゥ・アワ・リヴィング・ルーム』5月末でいったん終了
2020年05月29日(金)


https://note.com/ebs/n/na791ff0c347c

ブラック・ライヴズ・マターについて

コロナ・ウィルスからの手紙


■セットリスト Setlist @ Bluenote Tokyo
小曽根真 @ブルーノート東京、2020年6月21日(日)

[ ] denotes composer

Show started 20:01

01. (Untitled new song) [Ozone Makoto]
02. Mirror Circle [Ozone Makoto]
03. La Fiesta [Chick Corea] (+Rio on uklele)
04. Asian Dream [Ozone Makoto]
05. Secret Gate [Nakagawa Eijiro] (+Nakagawa EIjiro)
06. Ital Park [Ozone Makoto] (+Nakagawa Eijiro)
07. (Untitled new song) [Ozone Makoto] (+Nakagawa Eijiro)
08. Into The Sky [Nakagawa Eijiro] (+Rio, Nakagawa Eijiro)
Enc.1 The Preacher [Horace Silver] (+Rio, +Nakagawa EIjiro + Eric Miyashiro)
Enc.2 Hymn To Freedom (A Tribute To Black Lives Matter) [Oscar Peterson](1962)
Show ended 21:53

出演
小曽根真 (ピアノ)
ゲスト
リオ (Rio) (ウクレレ)
中川英二郎 (トロンボーン)
エリック宮城 (トランペット)

(2020年6月21日・日、ブルーノート東京、小曽根真ライヴ)

ENT>LIVE>Ozone, Makoto


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