〇『ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート』誕生秘話
〇『ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート』誕生秘話
【The Dark End Of The Street Story】
チーティング。
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(本作・本文は約2000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ4分から2分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと7分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)
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〇『ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート』誕生秘話
【The Dark End Of The Street Story】
チーティング。
先日、ディペッシュ・モードのリード・シンガー、デイヴ・ガーン&ソウルセイヴァーズのソロ作からジェームズ・カーのサザン・ソウル傑作曲「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」をご紹介し、その後、ジェームズ・カー・ヴァージョンもBGMでかけた。
この「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」他にもカヴァーがたくさんあり、そうしたカヴァーからその存在を知った人も多い。番組でも少し話したが、この曲の誕生秘話を改めてご紹介しておこう。なお、この秘話以外、いくつか説があるので、それも最後に紹介する。
1.DJコンヴェンション
1966年のある日、メンフィスでいわゆる音楽業界のDJコンヴェンションが行われていた。全米のDJやレコード会社の人間、ミュージシャン、アーティスト、プロデューサーなどが集まり、パネル・ディスカッションや、ときにライヴなどが行わたり、レコード会社や音響会社、DJ機材のブースなどが展示される一大イヴェントだ。
夜はライヴや食事やその他の遊びで多くの業界人が楽しむ。そんな中、ダン・ペンとチップス・モーマン、そして、フロリダの人気DJドン・シュローダーらがカードゲーム(おそらくポーカー)をやっていた。ダンとチップスはメンフィスの仲間、バディーバディーだ。そこで、彼らは二人で組んで、ちょっといかさまをしてドンから小遣いを巻き上げようと考えた。いわゆる「いかさま(チーティング cheating)」だ。
実際彼らがどれだけドンから巻き上げたかはわからないが、そんなチーティングをしているときに、話の流れで、「俺たちは最高のチーティング・ソング(浮気・不倫ソング)を作りたいなあ」ということになった。そこで、同じコンヴェンションに参加していたマッスル・ショールズの重鎮で曲も書くプロデューサー、クイントン・クランチが取っていた部屋に行き、そこで、「ベスト・チーティング・ソング」となるべく「浮気曲」を書き始めた。
そのとき部屋のクランチは「部屋を貸してやってもいいが、一つだけ条件がある。その曲ができたら、それを(俺のレーベル=ゴールドワックス=に所属している)ジェームズ・カーに歌わせろ」と言うのだ。もちろん、彼らは二つ返事で了承し、しかも、この「ベスト浮気曲」は、なんと30分もかからないで完成した。
2.チーティング(インチキ、ずる)とチーティング(浮気)
それが、「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」、道の先の暗がり、という曲だ。これは1966年暮れにメンフィスのハイ・レコーズのスタジオ、ロイヤル・スタジオで録音された。いつもは、クランチはメンフィスのアメリカン・スタジオを使っていたが、この日だけ機材トラブルかなにかで使えなかったため、急遽ロイヤルでセッションが行われたという。
そして、この「ベスト浮気ソング」は、ジェームズ・カーにとって最初で最大のヒットとなった。ソウル・チャートで10位、ポップ・チャートで77位を記録。しかし、この曲はその曲の普遍性や支持もあり、多数のシンガーにカヴァーされる。
まずは同じ南部のパーシー・スレッジがカヴァー。さらには、同じく南部のジョー・テックス、またクイーン・オブ・ソウル、アリーサ・フランクリンなどもカヴァーした。ソウル系のシンガーのみならず、ドリー・パートンなどのカントリーシンガー、ライ・クーダー、リンダ・ロンシュタット、グレッグ・オールマン、エルヴィス・コステロなどジャンルを問わず、カヴァーされるようになる。
3. 多数のカヴァー誕生。1991年映画『コミットメント』
特に1991年イギリスの映画『コミットメンツ』で、アイルランドのダブリンの白人ソウル・グループ、コミットメンツがカヴァー。話題を集める。
その後もいくつかカヴァーが出て、2021年イギリスのロック・エレクトロ・グループ、ディペッシュ・モードのリード・シンガー、デイヴ・ゴーンがカヴァーした。
「暗い道の行き止まりのあたりで、俺たちはいつも会っていた。悪いと知りつつ、影に隠れ、暗闇に身を隠し、お前と俺は密会をする。ばれたら、痛い目にあうことはわかっていてもやめられない。暗がりの突き当りで、俺たちは密かに会う。罪で悪いと知っていても。身を潜め、行き止まりの暗がりに行く。いつか、見つかってしまうかもしれない、と思いつつ…」(大意)
それにしても、ポーカーで「チーティング」(いかさま、ズル)をしながら、「チーティング・ソング(浮気ソング)」を書こうなんて思いつくあたり、彼らもダジャレ好きな業界人なんだろう。
4.他のヴァージョン
ダン・ペンはほかのインタヴューで、この曲はチップスと自分の部屋で書いたとも言っている。また、ジェームズ・カーが録音したのは、そのとき、デモテープを作ってるときか、トラックを作ってるときか、要はスタジオにいたときに、ジェームズがそこにいたからだ、ともいう。それもぜんぜんありそうなはなしだ。
ダン・ペンに話を聞いてみたいところだ。
すでに、この曲の誕生秘話が伝説化しているのかもしれない。
James Carr - The Dark End of the Street (Official Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=HC3AXQ8dPJM
Dave Gahan, Soulsavers - The Dark End Of The Street (Unofficial Video)
https://www.youtube.com/watch?v=6Agx2T2boM8
the dark end of the street, commitments
The Commitments - Dark End of the Street
https://www.youtube.com/watch?v=cwFf89DvgCs
Dark End Of The Street-Ry Cooder
https://www.youtube.com/watch?v=R8bAZFgUV4s&t=12s
Linda Ronstadt "The Dark End of the Street"
https://www.youtube.com/watch?v=dSsgZvgPGsU
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