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〇松尾潔のメロウな夜間授業6 メアリー・J・ブライジ~悲しみの女王

〇松尾潔のメロウな夜間授業6 メアリー・J・ブライジ


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〇松尾潔のメロウな夜間授業6 メアリー・J・ブライジ

【Matsuo Kiyoshi’s Mellow Night Classes #6 – Mary J. Blige】

五感。

五感で音楽を楽しむイヴェントとはうまいことを言ったものだ。五感とは、視覚、聴覚、味覚、臭覚、そして、触覚。特にこのイヴェントは聴覚と味覚が楽しませられる。味覚はこれまでのイヴェントで僕などはなかなか思いつかなかった。いわゆるソウル・フードなどからヒントを得て、当該のアーティストと関連のあるメニューを組み立てており、このイヴェントを特にユニークなものにしている。

ブログ 松尾潔夜間授業6 メアリーJブライジ2 メニュー

(メニューは毎回微妙に変わります。どれもおいしそうで、実際おいしい)

そんな松尾潔のメロウな夜間授業、その第6回はメアリー・J・ブライジ。日比谷から六本木に会場を移しての2回目。新しいヒップホップ・ソウル・クイーンをフィーチャー。

イヴェントは11月3日に全米で行われた大統領選がなかなか決着せず、土曜日深夜(7日深夜)にやっと当確が出た後という11月9日に行われた。その中でバイデン次期大統領の副大統領となるカマラ・ハリスが、なんとメアリー・J・ブライジの「ワーク・アウト」という曲を、自身のテーマのように使っていて、この曲のセールスが急上昇、メアリー・J・ブライジの株も急上昇になっていた絶妙のタイミングになった。

まずはその大統領選での「ワーク・ザット」の話から。これはメアリーの通算8枚目のアルバムで2007年12月全米リリースの『グローイング・ペインズ』(「成長期の手足の神経痛、青春の悩み、初期の困難、生みの苦しみ」などを意味する)のトップに収録されている曲。この歌詞が、実にカマラさんにどんぴしゃで、驚いた。

カマラ・ハリスのスピーチ。登場時、イントロで「ワーク・ザット」が流れている


https://www.youtube.com/watch?v=Xt8VvrdxzHo&feature=emb_logo

オフィシャル・プロモーション用ビデオ
Mary J. Blige – Work That (2007)


https://www.youtube.com/watch?v=AXAK9nVBI3M

この曲についての池城美菜子さんの解説記事

https://www.udiscovermusic.jp/columns/why-kamala-harris-use-mary-j-blige

メアリー・J・ブライジは1971年1月11日生まれ、49歳。一方、カマラ・ハリスは1964年10月20日生まれ、56歳。この「ワーク・ザット」は2007年12月リリースなのでメアリー36歳、カマラ43歳。

松尾さんは、毎回そのアーティストについて簡単なプロフィールを書いたA4一枚にまとめたペーパーを配る。そこには、メアリー・J・ブライジ、「事情」を「詩情」に昇華させて「市場」に届ける女王、と書いてあった。なるほど。

メアリー・J・ブライジ、略称のMJBは、コーヒーブランドとしても有名、あるいはメアリー・ジェーンはマリファナのことも指す、という解説。

幼少の頃は、大人の男女にレイプされたり、かなり悲惨な経験をしてきたが、ショッピング・センターにあった簡易録音機で録音したアニタ・ベイカーの「ラプチャー」を歌ったデモ・テープ(ディスク)が、アップタウン・レコーズのジェフ・レッドの手元に渡り、それが社長のアンドレ・ハレルに認められ、デビュー。以後はそのスタッフでもあったプロデューサーのディディー(パフ・ダディー)とくっついたり、離れたりしてレコードを作ってきた。

ヒップ・ホップ界のアーティストたちともつながり、音楽的にもヒップ・ホップの要素がたっぷりあるので、クイーン・オブ・ヒップ・ホップ・ソウル、と呼ばれる。
     
ヒップホップ・ソウルの原型。「リアル・ラヴ」

Mary J. Blige – Real Love


https://www.youtube.com/watch?v=90c9pEtZquw

メアリー・Jは、そのプロデューサーたちのゆえもあり、多くのサンプリングを使用する。たとえば。

Mary J. Blige – Love No Limit (Puff Daddy Mix)


https://www.youtube.com/watch?v=8eX2zhTXBXU

Keni Burke – Rising To The Top


https://www.youtube.com/watch?v=9ieevQ9RrDc

パフ・ダディーは「サンプリングの使い方で俺の右にでるものはいない」と豪語するだけあり、昔のレコードからのサンプリングの技が群を抜いている、という。

そうしたサンプリングをした曲をさらにサンプリングした作品などもでるようになった。再構築に再構築を重ねていくのもヒップ・ホップ・ソウルのおもしろさ。必ずしも楽器に修練しなくても、みんなの心に残る作品を作れるのがヒップ・ホップ・ソウルでもある。

拡大していく、上書きしていくヒップ・ホップ・ソウル、との解説。

アルバム『マイ・ライフ』(2作目、1994年)からそれまでの操り人形的存在から、自身で曲を書きだす。本人が書いたからこそ感情移入できる歌がでてきた。

しかし、パフは目立ちすぎたためか、上司のアンドレ・ハレルの逆鱗に触れ、アップタウンから1993年に追放されるが、パフ・ダディーはすぐにアリスタのクライヴ・デイヴィスの資金提供のバッド・ボーイ・レーベルを立ち上げ、結局どちらのレーベルも成功。これは本家ビームスに対しての分家ユナイテッドアローズのようにどちらも成功した例と表現。(少し拍手)このあたり松尾さんらしい比喩。

アンドレ・ハレルは、その後、モータウンの社長に引き抜かれるものの、2年間でお役御免となっている。ハレルがアップタウンを出るときに、メアリー・Jはアップタウンではなく、その親会社のMCAに移籍する。そこで19歳のロドニー・ジャーキンスという若手のプロデューサーを大抜擢。さらなる躍進が続く。

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悲しみ。

第二部はなんとサプライズ・ゲストに露崎春女さんが登場。かつてメアリー・Jの「リアル・ラヴ」もカヴァーしたこともあったというが、何といっても「暗い」という印象が強かったという。そして、メアリーがカヴァーしたスティーヴィーの「アズ」を一節、アカペラで披露した。打ち合わせなし、マイク・チェックなしだそうだ。さすがアカペラ・アルバムを2枚も出しているだけのことはある。露崎さんが登場して二人での会話になると、一気に華やかさが増す。

露崎春女 アー写

そして、メロウなトップ15を発表。トップ15発表後の最後の一言締めは、メアリー・J・ブライジとは、「悲しみの女王」である。まさに、という感じ。

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個人的には、メアリーJはやはりファースト・アルバムのインパクトが強かった。ヒップ・ホップと歌物のソウルをうまく融合したアーティストとして大きく注目された。1979年のヒップ・ホップのオーヴァーグラウンドへの登場以来すでに10年余。そのヒップ・ホップとソウル、R&Bの融合は始まりだしていたから、メアリー・Jはそれを実にうまくやりとげたという感じだろうか。

最初のうちはわからないことが多かったが、彼女が苦労人で、今の時代ならよく言われる女性であるがゆえに男性優位のヒップ・ホップ業界、レコード業界でかなり虐げられてきたことがわかった。そこから自己を確立し、自己をきっちり主張し、周囲に認めさせたところがすごい。特に2001年の5枚目『ノー・モア・ドラマ』以降は、完全に独壇場になった感がある。

思えば、1992年デビューなので、デビュー後25年以上が候補資格となる「ロックンロール殿堂」入りの可能性もでてきている。


■セットリスト (BGMも)
松尾潔のメロウな夜間授業~R&Bの愉しみ~第6回メアリー・J・ブライジとヒップ・ホップ・ソウル 

Show started 19:32

01. Work Out – Mary J. Blige
02. Caught Up In The Rapture – Anita Baker
03. Fool’s Paradise – Meli’sa Morgan
04. Can’t Knock The Hustle – Jay-Z
05. I’ll Do 4 U – Father MC [sampled Cheryl Lynn’s Got To Be Real]
06. You Remind Me – Mary J. Blige
07. Real Love – Mary J. Blige
08. Top Billin’ - Audio Two
09. Love No Limit – Mary J. Blige
10. Risin’ To The Top – Keni Burke
11. Ike’s Mood – Isaac Hayes
12. Make The Music With Your Mouth - Biz Markie
13. I Love You – Mary J. Blige
14. I Love You (Part 2) featuring Smif-N-Wessun – Mary J. Blige
Ended 20:51

Second set

Started 21:05
BGM Real Love – Mary J. Blige
BGM All Night Long – Mary Jane Girls
BGM It’s A Wrap (Remix) featuring Mary J. Blige - Mariah Carey
BGM No More Drama - Mary J. Blige
BGM Nadiah’s Theme – Barry De Vorzon

Surprise guest : Tsuyuzaki Harumi
01. [LIVE PERFORMANCE] As (Stevie Wonder, Mary J. Blige) – Tsuyuzaki Harumi

Top 15 MJB Mellow Top 15

#15 No More Drama (P. Diddy / Mario Winans Remix) – Mary J. Blige
BGM Just Out Of Reach – Chic
#14 Willing & Waiting – Mary J. Blige
BGM When Love Calls – Atlantic Starr
#13 Hello It’s Me - Mary J. Blige
#12 Ifuleave – Musiq Soulchild featuring Mary J. Blige
#11 Can’t Knock The Hustle – Jay-Z featuring Mary J. Blige
#10 You Remind Me – Mary J. Blige
BGM Remind Me – Patrice Rushen
#09 Whole Damn Year – Mary J. Blige
#08 Your Child – Mary J. Blige
#07 I Can Love You – Mary J. Blige
BGM Everyday – Angie Stone
#06 Everyday – Mary J. Blige
#05 Set Me Free – Mary J. Blige
#04 Flying Away– Mary J. Blige
BGM God Bless You – Brenda Russell
#03 No Gon’ Cry – Mary J. Blige
#02 Love No Limit – Mary J. Blige
#01 Be Without You – Mary J. Blige
BGM If Only For One Night – Brenda Russell
Show ended 22:28

出演

松尾潔

スペシャル・ゲスト
露崎晴女

(2020年11月9日・松尾潔メロウな夜間授業6~メアリー・J・ブライジ、ビルボード・ライブ東京)

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