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〇ヒストリー・オブ・ブラック・レイディオ (パート2)

〇ブラック・レイディオ (パート2)

【History Of Black Radio (Part 2)】


(本作・本文は約3000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ6分から3分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと10分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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ブラック・レイディオ パート2

【History Of Black Radio (Part 2)】

パート2。

ラジオ放送とレコード盤が広がるようになり、ラジオでは音楽をレコードでかけるようになる。当初は、今でいう「ブラック・レイディオ」はなかった。まずブラック(アフリカン・アメリカン)のDJが白人が持つラジオ局にスロット(時間帯、あるいはコーナー)をもらって、しゃべり始める。

またブラック・ミュージックといういい方も1940年代はなく、当時は「レイス・レコーズ」(人種のレコード)と呼ばれた。黒人・アフリカ系アメリカ人を指す「レイス=人種」という言葉も、現在では差別的という理由で使用を控える単語。その後音楽業界誌のビルボードの編集者だったジェリー・ウェクスラーが1949年「レイス」という言葉を「リズム&ブルーズ」と言い換えることにして、ビルボードのチャートも「レイス・レコーズ」から「リズム&ブルーズ」のチャートになった。以後、1969年に「ソウル・ミュージック」と名前を変え、さらに1984年「ブラック・ミュージック」という単語に入れ替わった。しかし、1993年、再度「リズム&ブルーズ(R&B)」という言葉が復活した。

「ブラック・レイディオ」というとき、「黒人のラジオ局」というニュアンスで、すでに1970年代後期あたりから使われるようになっていたが、一般的には1984年以降、アフリカン・アメリカンの音楽を「ブラック・ミュージック」と呼ぶようになってから、それに応じてそれまでの「ソウル・ステーション」という呼称「ブラック・レイディオ」に一気に広がった。

この黒人のラジオ局を束ねた業界誌「ブラック・レイディオ・エクスクルーシヴ」という週刊誌は、1976年に創刊している。これを創刊したシドニー・ミラーは2022年1月20日89歳で死去した。

以前ジェームス・ブラウンは、「かつてはブラック・ミュージックをかけるラジオ局はあらゆるタイプのブラック・ミュージックをかけていた。R&B、ソウル、ブルーズ、ジャズ、ゴスペルなどだ。だがいつの日からか、R&Bやジャズ、ブルーズとジャンルがさらに細かく別れてきた」と語っていた。

ジェームス・ブラウンは、ラジオDJにことのほか敬意を表する。以前、話したこともあるが、ミスター・ブラウンは全米各地のブラック・レイディオのDJたちを事細かに覚えている。そして何年かぶりにその地を訪れ、番組にゲスト出演するようなときに、「子供は大きくなったか」など気軽に声をかけ、そうして声をかけられたDJは完全にミスター・ブラウンのファンになり、次々新曲をかけるようになる。まさに、ミスター・ブラウンのシンパを全米各地に持つのだ。

では、いつからブラック・レイディオが細分化されていったのか。

おそらく、ラジオの放送電波がそれまでのAM(中波)からFM(超短波)に徐々に変化してからのことだ。

AMの電波は、大きなアンテナが必要で、大きな出力を持つとかなり広範に聴かれた。日本でも知られるウルフマン・ジャックはアメリカの電波法にひっかからないように、メキシコ国境からアメリカ全土に向けて放送。夜になると電波が飛びやすいという性質もあり、全米の若者が聴くようになった。

一方、FMは電波の進み方に直進性があるがAMと比べて雑音が入りにくいという特徴があり、それほど広範囲には電波は届かないが、ローカル(一地域)に高音質の音を届けられるという特徴がある。

アメリカでは1966年頃からAMと並行して、民間のFM放送が登場するようになった。FMは音質がいいということもあり、音楽を専門的にかけるラジオ局が全米各地に誕生するようになる。

また以前からあったが、この頃からいわゆる「カレッジ・レイディオ」という大学の放送局が盛んになるようになった。こうした局は、一般のコマーシャルなラジオ局に比べてより実験的な選曲の放送ができた。ただし出力は基本的には10ワットから1000ワット(1キロワット)程度なので、それほど広範囲に聴かれたわけではないが、地元密着で放送されていた。

ワシントンDCのハワード大学内のWHURなどは「カレッジ・レイディオ」の中ではよく知られ、ここの学生DJマーク・リンゼイが1970年代中期に開発した「クワイエット・ストーム」というフォーマットは、1980年代に入って全米のブラック・ラジオ局で一大ブームとなった。

そして、各地のブラック・レイディオには必ず有名DJが存在した。

では、最初のアフリカン・アメリカンのラジオDJ、もしくはアナウンサーは誰か。

1929年にシカゴのWSBC局で始まった『オール・ニグロ・アワー』というレイディオ・ショーを担当したジャック・L(リロイ)・クーパーが初のアフリカン・アメリカンだろうと言われている。同じくブラック・シカゴラジオ局WGESのDJアル・ベンソンとともに重要人物とされる。彼らはブルーズ、ジャズをかけていた。また彼らの同僚とも言えるハーブ・ケントは、公民権運動に関しても積極的にオンエアで語り、WVONで名をなしたという。

さらに1949年、初めて黒人所有のラジオ局となったアトランタのWERDでDJを始めたジャック・ザ・ラッパー・ギブソンも有名になり、のちに「ジャック・ザ・ラッパー」というブラック・レイディオの業界誌を発行するようになる。これはのちの「ブラック・レイディオ・エクスクルーシヴ」の先駆的存在となった。また、彼は同名のコンヴェンション(業界人が集まる会議)も始めた。

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メンフィスのラジオ局WDIAは、DJがすべて黒人という初のラジオ局となった。ここの名物DJは、のちに人気アーティストとなる、ルーファス・トーマスだ。芸達者なルーファスの番組『フート&ホラー』は人気となり、ブルーズとR&Bをかけ、ブラックだけでなく、白人にも人気となった。また、ルーファス・トーマスは、メンフィスのビール・ストリートでアマチュア・タレント・ショーを開催し、ここからB.B.キング、アイク・ターナー、ボビー・ブルー・ブランドなどを発掘した。

ラジオDJが地元でこうしたタレント・コンテストを行うことはまもなく一般的になり、そうした中からスターも誕生していくことになる。

ブラック・レイディオは、こうして地元密着で地元のブラック・コミュニティーとも密接に連携を取りながら、多くのブラック・アーティストたちを育てていった。

(この項つづく)

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