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〇「ディスコミ」で12インチ研究~トム・モウルトン~ディスコ・ミックスの父について(パート2)


〇「ディスコミ」で12インチ研究~トム・モウルトン~ディスコ・ミックスの父について(パート2)

【Studying 12 Inch Singles and Tom Moulton : Father Of Disco Mix】

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(本作・本文は約4000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ8分から4分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと13分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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〇「ディスコミ」で12インチ研究~トム・モウルトン紹介 (パート2)

【Studying 12 Inch Singles & Tom Moulton】

12インチ。

ディスコ・カルチャー・トーク番組『ディスコミ!』、シーズン2、第3回(2021年6月30日配信)では「12インチの歴史」を掘り下げた。

12インチについていろいろと調べ直していると、ディスコ・レコードとしての12インチ以前にちょっとした12インチ盤があるのを知った。ジャズのレコードでアール・ハインズの昔のレコードを1970年に12インチ・シングルとしてリリースしたという。このとき、「世界初の12インチ」と銘打って出したそうだ。これはまったく知らなかった。これは通常の7インチではなく、ちょっと目先を変えて12インチで出してみようということだったらしい。

ジャズのレコードで元はかなり古い音源のようだ。「ディスコミ」ではかけなかったので、こちらでご紹介。

Earl Hines - Glad Rag Doll


https://www.youtube.com/watch?v=0Np_vCOWyS8

ほかに、スワンプ・ドッグの曲も12インチで出た。

そして、ディスコ界に目を移すと、1975年、ディスコ・シンガー、キャロル・ダグラスの曲を4曲入りの12インチ盤にいれてディスコに配った。ただこれはアルバムのサンプラーという位置づけで、まだ12インチ・シングルという意味合いではなかった。

12インチ・シングルの誕生は、以前にも紹介したように、瓢箪から駒(ひょうたんからこま)状態で生まれたもの。それがダン・ダウニングの「ドリーム・ワールド」というもので、このとき、スタジオに7インチのブランク・ラッカー盤がなかったために、仕方なく10インチのラッカー盤を使ったという。それが音がよかったものだから、次から意識的に10インチ、さらに12インチのアセテート盤(ラッカー盤)を使うようになった。

10インチのアセテート盤(ラッカー盤)
don downing, dream world (1974/7) 4:13 / 2:36 (Instrumental)


https://www.youtube.com/watch?v=dlA4Hrmliz8


「ディスコミ」では話しきれなかったが、この頃は、12インチ・シングルを出す以前には、シングル盤(7インチ)のB面にはインストゥルメンタル・ヴァージョンをいれるのが流行りだした。そうすることによって、ディスコDJがシングルを2枚使った、インストとヴォーカルのところをうまくミックスして独自のロング・ヴァージョンを作ることができたためだ。

12インチの誕生はそういう経緯だったが、それらにすべてかかわっていたのが、トム・モウルトンという人物。元々レコード店で販売員をしたり、レコード会社でプロモーションの仕事をしたりしているうちに、一方でそのルックスからモデルの仕事もしていた。一時期、音楽業界に嫌気がさし、足を洗ったが、ディスコが盛り上がり始め、ディスコでの人々の踊りを見て、彼らを踊り続けさせるために、独自の今でいうミックステープ(約45分のもの)を80時間もかけて作ったのがディスコ・ミックスへのきっかけとなった。

彼はモデル仲間に誘われて、ニューヨークのファイアー・アイランド(ゲイの聖地でもある)にあるディスコに行ったが、そこでは黒人のソウル・レコードがたくさんかかり、それにあわせて白人のお客さんが踊っていたことにちょっと感激する。ところがそのときのDJのレコードのかけ方がひどくて、1曲終わると、客の踊りが止まってしまっていた。そこで、曲を上手につなげれば、彼らは続けて踊れるだろうと考え、当時のオープン・リールのテープ・レコーダー(リール・トゥ・リール・テープ・マシン)で、テープを切ったりはったりしながら、80時間ほどかけて、45分のノンストップのテープを作った。

それをかけたところ、最初は反応が悪かったが、次にかけたときにはものすごくいい反応で、人々が踊り続けた。これを機に人々を踊り続けさせるディスコ・ミックスというものを考えるようになった。

また、ディスコDJは当時は7インチ・シングルを中心にかけていたが、そうしたものはみな2分から3分程度のもので、ディスコでDJをするとき、だいたい3~6時間、ぶっ通しで回し続けたので、トイレに行く時間やサンドイッチをつまむ時間さえないとこぼしていたという。そこで、少し長めのミックスものを作れば、彼らが少し休憩できるだろうと考え、アルバム片面をノンストップでつなげるアイデアに発展。それを実現させたのが、グローリア・ゲイナーの『ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ』のアルバム(3曲ノン・ストップ・メドレー)だった。

トムは、グローリア・ゲイナー以前にダン・ダウニング、アル・ダウニングらのディスコ・ヒットのミックスをてがけていたので、その彼ら(トニー・ボンジオビ、ミーコ・モナルド)が新たにてがけたグローリア・ゲイナーのプロジェクトも頼まれた。

その後、トムは次々とディスコ・ミックスをてがけるようになり、「ア・トム・モウルトン・ミックス」(A Tom Moulton Mix)というクレジットを掲げるようになった。

トム・モウルトンは、1940年11月29日ニューヨーク生まれ。現在80歳。1974年頃で33歳だ。

その後、トム自身はレコード・プロデューサーともなり、グレイス・ジョーンズのアルバムのプロデュース、さらに、サルソウル傘下にトム&ジェリーというレーベルを設立するなど一時期は大変な売れっ子となった。

トム・モウルトンはフィラデルフィアのシグマ・スタジオをホームに多くのミックスをてがけたので、フィラデルフィア・ソウルについても一家言ある。そのあたりにもいずれフォーカスしてみたい。

そして、サルソウル傘下に自身のレーベル、「トム&ジェリー」(子供向けのアニメと同じ名前)を設立、ここで多くのレコードを制作する。「ア・トム・モウルトン・ミックス」は500から1000曲近くあるのではないかと言われている。

また、ビルボード誌で「ディスコ」のコラムを毎週書くようになり、レコード・ワールド誌のヴィンス・アレッティーの書いていたコラム「ディスコ・ファイル」とともに、多くのディスコDJたちのバイブル的コラムになった。ここで紹介されると、瞬く間にレコードが売れるようになった。

一度、トム・モウルトンだけで大きな特集をしたいと思っている。

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「ディスコミ!」、シーズン2はいちど今回で終了。シーズン3はまた少し形態を変えて、新たにスタートしますので、しばしお待ちを。

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