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〇 SERIES: “LIVE SEARCHIN - I MISS LIVE”~ライヴに行きたい① ダニー・ハサウェイ・ライヴ盤


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〇 SERIES: “LIVE SEARCHIN - I MISS LIVE”~ライヴに行きたい① ダニー・ハサウェイ・ライヴ盤

【Series: “Live Searchin : I Miss Live” Episode One: Donny Hathaway Live】

1971年。

もうずいぶんとライヴに足を運んでいない。ここまでライヴハウスにごぶさたしたのはどれくらいぶりになるのだろう。まあ、1970年代には見たいソウル・アーティストの来日は、一年に数本だったので、月一回もライヴはなかったが、1980年代以降はちょくちょくでてきて、1990年代以降小規模のライヴハウスが積極的にアーティストを招聘するようになり、ほぼなんらかの形で毎週のようにライヴを見るようなったから、この約3か月のライヴなし生活はかなり異様だ。すっかりネットでの配信ライヴなどに頼ってしまう。

ということで、ライヴ中毒者はそろそろヤクが切れて中毒症状が表れているはず。そこで、ライヴに行けないなら、昔のライヴ映像やライヴ盤を聴こう、ということにあいなる。

しかたがないので不定期に、いわゆるライヴ盤で名盤とされるものを改めて聴いたり、自分が見たライヴを振り返ってみようかと思った。

第一回は、2020年5月16日付け毎日新聞夕刊・楽庫のコラムで取り上げるダニー・ハサウェイのライヴ盤。楽庫は毎週、日本国内で行われるライヴを約10人の筆者が手分けして書いているが、さすがに3月以降、ライヴがほぼなくなってしまい、ライヴ評が書けなくなった。そこで、ライヴ盤にスポットをあてて、それを紹介することになった。ここでは新聞コラムで書ききれなかったことなどをちょっとまとめてみたい。

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ダニー・ハサウェイ/『ライヴ』
(限定版) 889円+税
(ジャケ写)

ジャケ写 ダニー・ハサウェイ・ライヴ



このダニー・ハサウェイのアルバムは、1970年のデビュー作『エヴリシング・イズ・エヴリシング』、1971年の『ダニー・ハサウェイ』に続く通算3枚目のアルバムで、1972年2月にリリースされた初のライヴ・アルバムだ。先の2枚のスタジオアルバムのリリースを受け、1971年8月にロスアンジェルス・ハリウッドのライヴハウス「トロバドール」と同年10月ニューヨークのライヴハウス「ザ・ビター・エンド」で収録されたライヴ音源から選曲編纂されたもの。

トロバドールで録音されたものが、アナログLPのA面に、ビター・エンドで録音されたものがLPのB面に収録されている。(現在はCDで1枚) 基本的なミュージシャンは、主人公ダニー・ハサウェイ(ヴォーカルとキーボード)、ドラムスがフレッド・ホワイト(アース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイト、ヴァーディン・ホワイトの弟、当時まだ16歳)、コンガ・ドラムス(パーカッション)がアール・デローエン、ベースがウィリー・ウィークスで、ギターはマイク・ハワードが両方のセッション、ロス・トロバドールがフィル・アップチャーチ、ニューヨーク・ビター・エンドがコーネル・デュプリーだ。

収録曲は各面4曲ずつ。

Side one

1. "What's Goin' On" (Renaldo "Obie" Benson, Al Cleveland, Marvin Gaye) – 5:18
2. "The Ghetto" (Donny Hathaway, Leroy Hutson) – 12:08
3. "Hey Girl" (Earl DeRouen) – 4:03
4. "You've Got a Friend" (Carole King) – 4:34

Side two

1. "Little Ghetto Boy" (Earl Derouen, Edward Howard) – 4:29
2. "We're Still Friends" (Hathaway, Glenn Watts) – 5:12
3. "Jealous Guy" (John Lennon) – 3:08
4. "Voices Inside (Everything Is Everything)" (Richard Evans, Philip Upchurch, Ric Powell) – 13:47

全米ではアルバム・ポップ・チャートでは最高位18位、R&Bアルバム・チャートでは4位を記録した。当時はゴールド・ディスク(50万枚以上のセールス)にはならなかった。ある意味、その後40年以上にわたって時の試練に耐え、どんどんと評価を上げて行った作品だ。

A面1曲目は、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」のカヴァー。マーヴィンのものが出たのが1971年3月で、すぐにヒットするが、ダニーは半年もしないうちにカヴァーし、しかも完全に自分のものにしている。

ほかにジョン・レノンの「ジェラス・ガイ」、そして、キャロル・キングが書き、ジェームス・テイラーでヒットさせていた「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」などのカヴァーが収録されている。特に「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」は、イントロが流れた瞬間客席から歓声があがり、途中からみんながコーラスを一緒に歌い始める。まさにアーティストと客席が自然に一体になっているすばらしい瞬間だ。そしてオリジナル楽曲も、プロデューサーたちが驚くほど観客が曲をよく知っていて歌っていたという。

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■なぜ名盤の誉れ高くなったのか

歓声。

今から考えると、先に行われたトロバドールでの録音はひょっとしたら、ニューヨーク・ビター・エンドの予行演習的な側面もあったのかもしれない。ビター・エンドでは3日間ライヴが行われ、そのうち初日は2セット、2日目3日目がなんと3セットの計8セットも行われた。1セットだいたい70分近くなので、560分約9時間以上分の素材があった。そこから選りすぐりB面分約24分に編集した。(トロバドールがトータル何セットあったかまだ正確にわからないのだが。2日とすると4セットくらいか) ジャケットに映っているレンガの背景のほうがビター・エンドのステージだ。

録音は、ライヴ会場の外に録音機材を積んだトレーラーを駐車し、そこで行う。今なら、パソコンなどですべて室内できただろうが、当時は録音機材は大きく場所も取るので、たいがいそうした録音用トレーラーを使った。

ジェリーやアリフは、これより先、アレサ・フランクリンのライヴ盤をロスの教会で録音しており、そのときのノウハウが大いに役立ったという。


店舗外装写真 ビターエンド

プロデューサーのジェリー・ウェクスラーは会場で、エンジニアでもあるアリフ・マーディンは録音機材の積まれた大型トラック(モバイル・レコーディング用トラック)の中にいて録音を行っていた。

ミュージシャンたちのパフォーマンスはいずれのプレイヤーもきっちりと見事に自分の持ち場で100%以上のパフォーマンスを見せている。

2014年4月にこの『ライヴ・アット・ザ・ビター・エンド・1971』という未発表テイクが収録されたアルバムが世に出た。

アー写 ダニーハサウェイ モノクロ正面

おもしろいことにここに収められているライヴ・ヴァージョンでは、比較的観客の歓声が低めに収められている。たとえば「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」など、すっかりおなじみのイントロのキーボードが流れた瞬間の観客の歓声がここにははいっていない。割と静かに冷静なのだ。

(歓声なしのヴァージョン)

(おなじみの歓声ありヴァージョン)

つまり、世に売り出され、我々が傑作と評価しているおなじみのライヴ盤はアリフ・マーディンらによると、若干歓声をあげ、客席と一体感がでるようにしたということなのだ。このあたりが、ライヴ盤を作る上での「肝」なのだろう。たしかに、キーボードからの歓声がないヴァージョンは拍子抜けする。

ビター・エンドの会場キャパ(収容人数)は約200人程度というから、東京のブルーノートくらいの大きさだ。観客とアーティストとの濃密さ(いまでいえば濃厚接触ぶり)はすばらしいものがあった。

このビター・エンドは、1961年にオープンして以来、現在まで続いているライヴハウスの老舗のひとつだ。

ミュージシャンたちは、ロスのトロバドールで何回かやり、このニューヨークのビター・エンドでも8回やり、すっかり意気投合し、形もできていた。

小さなライヴ会場だからこその濃密さ、そして何回(何セット)にもおよぶライヴセットでミュージシャンたちがすっかり楽曲を自分のものにしていること、そして、観客との一体感を演出するちょっとしたテクニックなどの総合的な要素によってこのアルバムは、名盤となった。

クラシック音楽を学び、気に入り、壮大なオーケストラもアレンジできる稀有な才能をもったダニー・ハサウェイ。

しかし、ダニー本人はこのライヴの出来にそれほど満足はしていなかったという。何より、彼は自分の声が気に入ってなかったのだという。ひじょうに繊細で、さまざまなことを考えるダニー。その繊細さゆえに、音楽業界の重圧に耐えられなくなってしまったのかもしれない。

ちなみに、ライヴ盤のジャケットでダニーが被っている帽子は、その後このギタリスト、フィル・アップチャーチがガラスのケースにいれて自ら保存しているという。それは、あるときロス在住のフィルがニューヨークにいったときに寒くて何ももってなかったので、その帽子を帰るまで貸してくれと頼んだところ、ダニーは気前よくフィルにあげたという。

ライヴの名盤も一朝一夕にできるわけではない。

ENT>LIVE>Hathaway, Donny

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