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◇ジョン・バティースト「アルバム・オブ・ジ・イヤー」の衝撃~その理由は言われれば納得

(本作・本文は約4000字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字で読むと、およそ8分から4分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと13分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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◇ジョン・バティースト「アルバム・オブ・ジ・イヤー」の衝撃~その理由は言われれば納得

【Shockwave Of Jon Batiste’s Winning Of “Album Of The Year” 】

5部門。

2022年4月3日発表された第64回グラミー賞でニューオーリンズ出身のジョン・バティーストが5部門を受賞、この日の最多受賞者となった。もともと11部門という最多ノミネートを記録していたが、ショーの一番最後に発表された「アルバム・オブ・ジ・イヤー」で、レニー・クラヴィッツの発表により「『ウイ・アー』、ジョン・バティースト!」と宣言されると、当の本人が「うそだろ」といった感じのリアクションを見せ、ステージに上って行った。それまでに4部門を受賞、十分、「グラミー・ナイトの主人公」になっていたが、「レコード・オブ・ジ・イヤー」の受賞には誰よりも、本人が一番驚いたようだ。

僕自身もジョンは11部門ノミネートで4部門は取るだろうと見ていたが、最後の「アルバム」が来て、5部門になり、大いに驚いた。嬉しい誤算だった。下馬評やいくつかの予想サイトでもなかなかこれを本命にするところはなかった。

グラミー賞、最後に発表された「アルバム・オブ・ジ・イヤー」になったジョン・バティーストの受賞スピーチ(約2分)→

https://bit.ly/3LEfHrS

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◇ベスト・ミュージシャンなんていない。楽曲やアルバムがそれを求める人を探す

受賞スピーチで、ジョンはこういった。

「僕は信じているんだ。ベスト・ミュージシャン、ベスト・アーティスト、ベスト・ダンサー、ベスト・アクターなんていないということを。クリエイティヴな芸術というのは、とても『主観的』なもので、それは人々の人生のある地点で人々がもっとも必要としているときに(その作品が)到達するものだ。一曲の楽曲であれ、アルバムであれ、それはそういう人々を探すレーダーになっているようなものなのだ。彼らがそれをもっとも必要とするときに。(拍手、レディー・ガガも納得しながら拍手) 神に感謝を、いつも神の前で頭を下げ、毎日自分の作品を作っています。子供のころから音楽を愛しています。音楽とは、僕にとってエンタテインメント(娯楽)以上のもので、音楽は『精神的な鍛練』なのです。

このアルバムを作るために多くの人がかかわってきました。僕の祖父、甥、父もあそこにいます。エグゼクティヴ・プロデューサーのライン・リン、上がってきてください、ここに1人だけではいられない。(ライアン登壇し、ハグ) そして、このカテゴリーでノミネートされていたすべてのアーティストたち、あなたたちの音楽からも影響を受けています。あなたたちを称えます。これは、リアル・アーティスト、リアル・ミュージシャンへのものです。やり続けましょう。あなた自身であってください。(be you) それだけです。(that’s it) 知らない人も、みんな愛してるよ! おやすみなさい!」

「アルバム・オブ・ジ・イヤー」というのは、「最優秀アルバム」という意味ではなく、「その年を代表するアルバム」「その年のアルバム」ということを、図らずもジョンは語った。まったく同じ考え方で、僕もいつも「最優秀アルバム」ではなく、「アルバム・オブ・ジ・イヤー」と書いている。

彼がレギュラーを務めるスティーブン・コルバ―ト・ショーでも話題(約10分)→https://bit.ly/3KesWzb 

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◇『アルバム・オブ・ジ・イヤー』を獲得した5つの理由

ビルボード誌(ウエッブ版)が、「ジョン・バティーストが『アルバム・オブ・ジ・イヤー』を獲得した5つの理由」という興味深い記事を載せたのでさっそくツイッターでご紹介した。


bit.ly/3LIO0OF 

https://www.billboard.com/music/awards/jon-batiste-album-of-the-year-2022-grammys-why-it-won-1235054841/

Five Reasons Why Jon Batiste’s ‘We Are’ Won Album of the Year at the 2022 Grammys
The top honors at Sunday night's Grammys did not go to the album most were anticipating. Here are five reasons the surprise victory may be less shocking than you think.
By Andrew Unterberger
04/4/2022

この記事をかいつまむと、

① 11ノミネートの勢い 

ジャンルを超越して、11ノミネートを獲得したことで、注目を集めた 

② ミュージシャンズ・ミュージシャン  

彼があらゆるミュージシャンから好まれている「ミュージシャンズ・ミュージシャン」であること。グラミーの投票者は、ミュージシャンやライター、プロデューサーなど音楽関係者が多いことから。一般のファン投票とは違うという意味。

③ 最近のポップアーティストと重なること 

時流にも乗っている、ということ。

④ 幅広い年齢層からの支持 

『ソウルフル・ワールド』での子どもからの支持、さらに、大人の支持まで年齢層の幅が広い。

⑤ 業界内の有力コネクション。

テレビ業界。映画業界の人たちとの強力なコネがあること。

ということなのだが、これに加え、僕は

⑥ 候補が8から10になったことで投票が分散化され、きわめて僅差で1位になった。その他の候補の支持母体が票割れした。

⑦ もともとのジョンのクラシックから、ポップ、ニューオーリンズR&B、ファンク、ヒップホップ、さらに映画音楽などの各種音楽的多様性の素養が功を奏した

⑧ 「フリーダム」に代表されるような、今の時代に即したメッセージ性があったこと

といったこともあるのだと思う。

確かにこの記事が指摘するように、この「アルバム・オブ・ジ・イヤー」部門は、過去にも2008年ハービー・ハンコックの『リヴァー:ザ・ジョニ・レターズ』、2009年のアリソン・クラウスの『レイシング・サンド』、2002年のアメリカン・ルーツ音楽のコンピレーションでもあるコーエン・ブラザーズの映画のサウンドトラック『オー・ブラザー、ホエア―・アート・ゾー?』などの必ずしもベストセラーになっていない作品が受賞していることから考えると、このジョン・バティーストのアルバムが受賞してもおかしくはない。

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◇ライヴ・パフォーマンスは、あらゆる音楽性を凝縮

これにさきだってジョン・バティーストは、ライヴを繰り広げていた。

Jon Batiste's "We Are" wins Album of the Year at the #Grammys  : Freedom


https://www.youtube.com/watch?v=EBFEUpVNTPM

僕は個人的には、この日のベスト・アクトになった。(正確に言うと、シルク・ソニックと『タイ』で同率1位w)

クラシックから、ニューオーリンズ・ファンク、R&B、そして、ジェームス・ブラウン(JB)なみのダンス、独特のファルセット、すべてがここにある。そして、このセットは映画『ソウルフル・ワールド』を意識したものだ。(そういえば、生中継ではこの絵柄が『ソウルフル・ワールド』から来ているということは誰も指摘していなかったが…) 

映画『ソウルフル・ワールド』のサントラで一足先にアカデミーを取っていたジョン・バティーストだが、ここで共同プロデューサーとなっているトレント・レズナー、アティカス・ロスとのコラボも、彼のヴァリューを上げる上で大きな要素になった。

◇全方位からの支持、人気

テレビで帯のレギュラー(グラミーの生中継局CBSにおける)ナイト・ショー『スティーブン・コルベ―ト・ショー』のハウス・バンドのリーダー、さらに映画界にもコネがあり、ハリウッドの支持も得て、ジュリアード卒というクラシックの素養もあり、ニューオーリンズの名門音楽一家という、まさに音楽業界のエリート中のエリート。それでいて完全にニューオーリンズ由来のストリート感覚も存分にあり、老若男女、子供から老人まで支持を集めた、それが今回の5部門受賞の要因なのだろう。

誰かが彼のことをJBと呼んでいた。ジョン・バティーストだからだが、途中でジェームス・ブラウンのオマージュもいれていた。ヨハン・セバスティアン・バッハ(こちらもJB)、バッハ、ジェームス・ブラウン、そして、今、ジョン・バティースト。3JBの一角を担うことになりそうだ。

21世紀のJB、ジョン・レジェンドに続く、「EGOT」(エミー、グラミー、オスカー、トニー)に一番近い若手だ。GとOをとったので、残るはE と Tだ。

Jon Batiste:We Are


https://amzn.to/3j9UIRq

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