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じいちゃんと猫たち
わたしは今まで猫を飼ったことはなかったのだけど、道端で見かける猫たちには必ず声色を使ってにゃーって言って、猫かこっちを向くことを面白がったりしてるくらいの猫好きです。
猫を飼ったら、そんな楽しみが毎日続くのと同時に、いのちを預かる責任がともなうんだなぁと思ったり。
だけど、地域によってはノラ猫が数匹住んでいて、気軽に家の敷地内に遊びに来て、食べものをもらう子たちもいたり、そんな猫たちとの付き合い方をしている人もいるよね。
わたしの長崎のじいちゃんの家は、まわりが竹林になっていて、その竹林の中で猫が数匹住んでいた。
なので、飼うという責任も少しだけ薄れた状態で、猫と遊ぶことができる。
子どもの頃のわたしは、じいちゃん家に遊びに行くことが楽しみで、やっぱり猫たちと遊べることが楽しみだった。
毎年ではないけれど、夏休みなどの学校の長期休暇のときに、じいちゃん家に遊びに行っていた。
竹林に住む猫たちはやはり野良猫なので、わたしもふらっと家に遊びに来た猫たちを追いかけたり頭をなでたり、用意してあったご飯の残りなどをあげていた。
いつもじいちゃんはわたしたちが遊びに来た時に、鯛を1匹買ってきて、庭でさばいてくれる。
そうすると、竹林の中から猫たちが集まってきて、おこぼれを貰おうとウロウロしだす。
じいちゃんの作る鯛の刺身は皮つきなのだが、鯛の皮は鱗をとっても固く食べにくいので、お湯を沸かして湯引きにする。ぷりぷりとした食感がとても美味しかった。
じいちゃん家に遊びに来た1日目はいつもその鯛の刺身で大人たちが宴会になるので、それも楽しみだったし、庭で鯛をさばくじいちゃんと話しながら、いとこたちと猫を追いかけることも好きだった。
それから二十数年がたち、わたしはいとこの結婚式に参加した。
いとこはじいちゃんと一緒に住んでいたので、結婚式もじいちゃん家の近くのホテルで行われた。
いとこもわたしも大人になり、このころは家の周りの猫たちも大分減っていて、遊びに来る子もいなかった。
じいちゃんも子どものころよりも活発ではなく、料理をすることもなくなっていた。
結婚式の披露宴では、二人の馴れ初めやプロフィールを紹介する時間がある。
その時に、いとこの「好きな食べ物は、おじいさんが作った鯛のお刺身です。」と司会者が紹介した時、わたしは子どもの頃のあの猫たちとの風景を思い出したのだった。
いとこも、同じくあの頃のことが思い出になっているんだな。
じいちゃんは亡くなって、猫たちもしばらく見ていないけれど、じいちゃんが住んでいた家の庭では今も親戚の人たちが集まる場所となっています。
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