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肥大型心筋症の遺伝子検査・MYBPC3について
肥大型心筋症の原因遺伝子の中でも頻度の高いMYBPC3についてまとめています。1971年にウサギの骨格筋から抽出されたタンパク質に似た、心臓特有のファミリーとして研究されてきました。
分子構造などの基礎研究の結果はこちらが詳しいです↓
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/1873-3468.14301
以下の記事の元ネタはこちらです↓
MYBPC3
遺伝子の構造や働きについて
MYBPC3はこの遺伝子は、心筋細胞のサルコメアの太いフィラメントであるミオシンと細いフィラメントであるアクチンの両方に結合する、ミオシン結合タンパク質 C3 をコードしている 。このタンパク質は 1,274 個のアミノ酸を持ち、分子量は ~ 140 kDa である。MYBPC3は心筋ミオシンMYH7と心筋アクチンの両方に結合し、アクトミオシン相互作用を調節している。細胞内シグナルにおいてはPKA、PKC、GSK3β、および複数の部位での他のキナーゼによるリン酸化や、そのほか広範な翻訳後修飾 (PTM) を受け、他のサルコメアタンパク質との相互作用を集合的に調節し、したがって筋収縮を調節している。
遺伝子のバリアントのパターンについて
MYBPC3遺伝子のヘテロ接合変異は、HCM 症例の約 20% に見られ、大規模な HCM 家系ではより多く認められる。MYBPC3遺伝子の変異の注目すべき特徴は、他の十分に確立された原因遺伝子ではミスセンス変異がメインであることとは対照的に、インデル、スプライシング、およびナンセンス変異などの切断型バリアントが高い頻度でみられることである。切断型のバリアントは、通常、ナンセンス媒介性崩壊 (NMD) およびユビキチン-プロテアソーム システム (UPS) を活性化し、MYBPC3 タンパク質のハプロ不全を引き起こす。
疫学について
ヨーロッパ諸国と日本において多くの HCM 症例の創始者変異がみられることがあるものの、そのような例外を除いて、特定のMYBPC3変異の人口頻度としては稀である。MYBPC3ではイントロンのバリアントがげんいんとなることもある。イントロン 32 における一般的な25 bp欠失は、南アジア人集団のHCMと関連することが示された。性差の結果、この25 bpのバリアントは、イントロン13のバリアントと連鎖不平衡にあり、イントロン13の潜在的なスプライス受容部位にバリアントが認められ、結果として転写産物には50のイントロン ヌクレオチドが含まれ、停止コドンの出現によって切断型のバリアントとなっていることが判明した。MYBPC3は比較的ミスセンスおよび LoF バリアントに対して耐性がある (LOUEF: 0.96)。HCM における確立された役割にもかかわらず、MYBPC3の 病的バリアント解析を進め、HCM における因果関係を示す必要がある。
遺伝型と臨床像との関係
MYBPC3変異の臨床像へ及ぼす影響も調べられているが、代表的なMYH7と比較した結果、閉塞型を示すことは頻度が低く、一方左室区出力EFについては軽度低下傾向を認めた。左室区出力はMYH7、MYBPC3ともに徐々に低下傾向であったが、MYBPC3のほうは重篤な左室機能低下の新規発症がみられた。
詳細はこちら↓
https://doi.org/10.1161/CIRCGEN.122.003832